小売業(スーパー・ドラッグストア・量販店)の産業医|店舗ごとにパートを含めて50人以上で選任、転倒・腰痛・カスハラ・深夜勤務の健康管理を産業医が解説

小売業(スーパー・ドラッグストア・量販店)の産業医|店舗ごとにパートを含めて50人以上で選任、転倒・腰痛・カスハラ・深夜勤務の健康管理を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
スーパー・ドラッグストアなど小売業の産業医。店舗ごとに、パートを含めて50人以上で選任が必要です。

「店舗のスタッフはほとんどパートさんなので、産業医はまだ要らないと思っていた」「本部には産業医がいるけれど、大型店にも必要なのか」――スーパーやドラッグストア、ホームセンター、家電量販店などの人事・総務の方から、よくいただく質問です。

京都市の統計で、常用雇用者50人以上の事業所がいちばん多い業種は「卸売業・小売業」で、353事業所あります(総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(e-Stat 表16-1))。小売業は、パート・アルバイトを含めて人数が多い店舗が多く、転倒や腰痛などの「行動災害」が多い業種でもあります。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、小売業で産業医が必要になる場合と、店舗で産業医に頼めることを、公的な統計と法令にもとづいて解説します。

4コマ漫画(小売業の産業医):店長が「パートさんが多いから産業医はまだ要らないですよね?」とたずね、メーくんが「パートも含めて50人以上なら産業医の選任が必要です」と説明。バックヤードの濡れた床と通路の荷物を転倒の原因と指摘し、看板を置いて片付け、次の巡視でも確認する。

1. 小売業で産業医が必要になるのは「店舗ごとに50人以上」

産業医の選任義務(労働安全衛生法第13条)は、会社全体ではなく事業場(店舗・物流センター・本部など)ごとに、常時使用する労働者が50人以上かどうかで判断します。正社員の人数ではなく、パート・アルバイトを含めた人数で数えます(パート・アルバイトが多い職場の産業医)。

事業場の例数え方産業医
大型スーパー(正社員8人、パート・アルバイト55人)店舗ごとに合計63人必要
ドラッグストアの小型店(合計18人)が10店舗各店舗は18人(会社全体の合計では数えない)各店舗は不要(10〜49人の店舗は推進者の選任が必要)
物流センター(パート40人+派遣スタッフ15人)派遣スタッフも派遣先で数えて55人必要
本部(事務・バイヤーなど60人)本部だけで60人必要
小売業での数え方の例

50人以上になった日から14日以内に産業医を選任し、所轄の労働基準監督署へ選任報告を出します(産業医選任報告(選任届)の書き方と提出方法)。同時に、衛生管理者の選任、衛生委員会の毎月の開催、ストレスチェックの実施も必要です(産業医は何人から必要?社員が50人を超えたらやること)。店舗が10〜49人の場合は、業種に応じて安全衛生推進者または衛生推進者を選びます(安全衛生推進者・衛生推進者とは)。

2. 数字で見る小売業の労働災害(京都)

1コマ漫画:ホワイトボードに「小売業のけが(京都府・令和7年)休業4日以上323人、転倒134人(前年より41%増)、転倒+腰痛など約6割」。メーくん「けがの約6割は転倒と腰痛です」、店長「まずは床と通路からですね」。

京都労働局によると、令和7年の京都府内の小売業の休業4日以上の死傷者は323人で、前年より27人(9.1%)増えました。中でも「転倒」が134人と前年より41.2%増えています(京都労働局「行動災害防止支援情報まとめサイト(小売業)」)。

項目全産業(京都府)小売業(京都府)
休業4日以上の死傷者2,694人(前年比+5.2%)323人(前年比+9.1%)
転倒742人134人(前年比+41.2%)
動作の反動・無理な動作(腰痛など)491人58人
転倒と動作の反動・無理な動作の割合45.8%59.4%
令和7年 京都府内の労働災害(京都労働局)

小売業では、けがの約6割が転倒や腰痛などの「行動災害」です。京都府全体では、転倒でけがをした人の78.6%が50歳代以上で(京都労働局「京都府内の『令和7年 労働災害発生状況』について」)、年齢の高いパートの方が多い店舗ほど注意が必要です。全国の食品スーパーの転倒災害を調べた厚生労働省の資料でも、転倒は売場(36%)だけでなく、バックヤード(24%)や駐車場(11%)でも起きています(厚生労働省「第三次産業の労働災害の発生状況」)。

京都では、京都労働局が「京都府小売業プラスセーフ(+SAFE)協議会」を通じて、全従業員向けの教育動画や転倒・腰痛防止の教材を紹介しています。こうした教材を、産業医の職場巡視や衛生委員会と組み合わせると、店舗で取り組みやすくなります。

3. 小売業の店舗で産業医に頼めること

店舗の課題産業医に頼めること
転倒(濡れた床、段差、通路の荷物、駐車場の凍結)職場巡視で危ない場所を見つけ、清掃の手順・靴・照明・表示の改善を提案します(産業医の職場巡視とは)
腰痛(品出し、重い荷物、台車、長時間の立ち仕事)持ち方・台車の使い方・休憩のとり方を、腰痛予防対策指針にもとづいて助言します(職場における腰痛予防対策指針)
夏のバックヤード・駐車場・屋外売場の暑さ熱中症を起こすおそれのある作業の報告体制と対応手順づくりを助言します(職場の熱中症対策の義務化)
お客さまからの暴言や理不尽な要求カスタマーハラスメント対策の方針づくりと、被害を受けた従業員の面談を行います(カスタマーハラスメント対策の義務化)
深夜営業・早朝の品出し深夜業を含む業務に常時従事する人は、6か月以内ごとに健康診断が必要です(特定業務従事者の健康診断(深夜業は6か月ごと))
年齢の高いパートの方の健康管理健康診断の結果から、重い物を扱う作業や長時間の立ち仕事への配慮を意見します
店長・社員の長時間労働、メンタルヘルス不調長時間労働者や高ストレス者の面接指導、休職・復職の面談を行います(高ストレス者の面接指導)
小売業の店舗で産業医に頼めること

高年齢の方が働きやすい職場づくりについては、厚生労働省「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」も参考になります。

4. 衛生委員会の議題例(小売業)

衛生委員会は毎月1回以上開きます。店舗の行事や季節に合わせて議題を決めると、話し合いが具体的になります(衛生委員会の議題例・12か月の年間カレンダー)。

時期議題の例
4〜5月新しく入ったパート・アルバイトの雇入れ時教育、転倒しやすい場所の点検
6〜8月バックヤード・駐車場の熱中症対策、水分・休憩のとり方
9〜10月ストレスチェックの実施と、職場ごとの集団分析の結果の共有
11〜12月年末の繁忙期の長時間労働、腰痛予防(品出し・荷受け)
1〜2月駐車場・入口の凍結による転倒、インフルエンザなど感染症の予防
通年カスタマーハラスメントの発生状況と対応、健康診断の事後措置
小売業の衛生委員会の議題例

シフト制の店舗では、委員がそろう時間をとりにくいこともあります。当事務所では、訪問に加えてWeb会議での出席や、Web面談にも対応しています。

5. 店舗が多い会社の産業医の選び方

  • 50人以上の店舗ごとに選任が必要:本部の産業医がいても、50人以上の店舗や物流センターにはそれぞれ産業医を選任します。同じ産業医が複数の事業場を担当することはできます。
  • 同じ基準で管理できるか:複数の店舗を同じ産業医が担当すると、健康診断の判定や復職の判断の基準をそろえやすくなります。
  • 50人未満の店舗の相談先:選任義務がない店舗でも、健康診断の事後措置や休職・復職の判断で医師の意見が必要になる場面があります(従業員50人未満でも医師が必要な場面7つ)。ストレスチェックは、2028年4月から50人未満の事業場でも義務になります(ストレスチェック50人未満の義務化)。

うえまつ産業医事務所にご相談ください

京都・大阪・滋賀・奈良の事業場を訪問し、パート・アルバイトの多い店舗や物流センターの健康管理にも対応しています。Web面談を組み合わせ、シフトに合わせて面談の時間を調整できます。紹介会社の中間手数料がかからない直接契約と、ストレスチェックや健康管理のWeb化(DX)によって、料金をできるだけ抑えています。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
  • 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)

事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「ハラスメント相談を受けたときの対応」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

よくある質問

スーパーの店舗はパートが多いのですが、産業医は必要ですか?

店舗ごとに、パート・アルバイトを含めて常時50人以上なら必要です。正社員の人数ではなく、常態として使用している人数で判断します。50人以上になった日から14日以内に選任し、労働基準監督署へ報告します。

本部に産業医がいれば、店舗には要りませんか?

50人以上の店舗には、その店舗の産業医の選任が必要です。本部の産業医が複数の店舗を兼ねて担当することはできます。

小売業でいちばん多い労働災害は何ですか?

転倒と、動作の反動・無理な動作(腰痛など)です。令和7年の京都府内の小売業では、休業4日以上の死傷者323人のうち、この2つで59.4%を占めました。

深夜営業の店舗では、健康診断の回数が増えますか?

午後10時から午前5時までの深夜業を含む業務に常時従事する人は、配置替えの際と、6か月以内ごとに1回、定期健康診断が必要です。

カスタマーハラスメントについて産業医に相談できますか?

できます。対策の方針や対応の手順づくりへの助言と、被害を受けた従業員の面談を行います。必要に応じて、休業や配置の配慮について意見を出します。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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うえまつ産業医事務所 所長
上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
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