製造業・建設業の産業医|規模ごとの体制と職場巡視、特殊健診・化学物質・粉じん・騒音・熱中症で押さえるポイント

製造業・建設業は、化学物質・粉じん・騒音・暑さなど、健康に影響する要因が多い業種です。そのため、ほかの業種よりも安全衛生の体制が厚く求められ、産業医の職場巡視や特殊健康診断の判断が重要になります。
この記事では、製造業・建設業の事業者が押さえておきたい体制と、産業医に相談できることを、複数の製造業の事業所で産業医を務め、労働衛生コンサルタントでもある筆者が整理します。
1. 規模ごとに必要な安全衛生の体制

| 常時使用する労働者 | 主に必要なこと |
|---|---|
| 10人以上50人未満 | 安全衛生推進者の選任 |
| 50人以上 | 産業医・衛生管理者(第一種)・安全管理者の選任、衛生委員会の設置。安全委員会は業種により50人以上または100人以上で設置(安全衛生委員会としてまとめることも可) |
| 100人以上(建設業)/300人以上(製造業) | 総括安全衛生管理者の選任 |
| 1,000人以上、または有害業務に500人以上 | 専属の産業医 |
製造業・建設業は、衛生管理者に第一種衛生管理者免許(または衛生工学衛生管理者免許、医師など)が必要な業種で、第二種だけでは選任できません(衛生管理者と産業医の違い/安全管理者・総括安全衛生管理者とは/安全委員会とは)。
建設業では、建設現場ごとに自社の労働者が常時50人以上になることは多くありませんが、本社や支店(店社)で常時50人以上であれば、その事業場に産業医の選任が必要です。人数は会社全体ではなく、事業場ごとに数えます。

2. 特殊健康診断:業務ごとに対象と頻度が決まっている
有害な業務に常時従事する労働者には、一般の健康診断に加えて特殊健康診断が必要です。多くは雇入れ・配置換えのときと6か月以内ごとに1回行い、結果は労働基準監督署へ報告します。
| 業務の例 | 主な健康診断 |
|---|---|
| 塗装・洗浄・接着などで有機溶剤を使う | 有機溶剤健康診断 |
| めっき・樹脂・溶接などで特定化学物質を扱う | 特定化学物質健康診断 |
| 研磨・はつり・溶接などの粉じん作業 | じん肺健康診断(粉じん障害防止規則) |
| 建物の解体・改修で石綿を扱う | 石綿(アスベスト)健康診断 |
| 非破壊検査などで放射線を扱う | 電離放射線健康診断 |
| 夜勤・交替勤務、暑熱・重量物などの業務 | 特定業務従事者の健康診断 |
どの健診が必要かは、扱っている物質と作業の内容で決まります。「同じ工場でも、どの部署の誰が対象か」を産業医と一緒に整理しておくと、健診の漏れや、必要のない健診を防げます。
3. 化学物質の自律的管理と作業環境測定
2024年4月から、リスクアセスメントの対象となる化学物質を製造・取り扱う事業場では、規模にかかわらず化学物質管理者の選任が必要になるなど、事業者が自ら化学物質のリスクを見積もって対策を決める仕組みに変わりました(化学物質の自律的管理)。有機溶剤や特定化学物質を扱う屋内作業場では、作業環境測定とその結果にもとづく改善も必要です(作業環境測定とは)。
4. 職場巡視で産業医が見るポイント
産業医は少なくとも毎月1回(条件を満たせば2か月に1回)職場を巡視し、健康に影響するおそれがあれば、事業者に改善を助言します(産業医の職場巡視とは)。製造業・建設業では、たとえば次のような点を確認します。
- 局所排気装置が動いているか、保護具(防毒マスク・防じんマスク・耳栓)が合っているか
- 騒音の大きい作業場の管理(騒音障害防止のためのガイドライン)
- 夏の暑さ指数(WBGT)の測定と熱中症の対策・報告体制(職場の熱中症対策の義務化)
- 重量物の取り扱いや無理な姿勢による腰痛のリスク(職場における腰痛予防対策指針)
- 休憩室・トイレ・更衣室など、休憩と清潔を保つ設備
5. 安全衛生教育は「誰に・いつ」を整理する
製造業・建設業では、雇入れ時の教育に加えて、危険・有害な業務に就く人への特別教育、新たに職長になる人への職長教育、作業主任者の選任などが必要です(特別教育とは/職長教育とは/作業主任者とは)。対象者と時期を一覧にして、衛生委員会・安全委員会で進み具合を確認しましょう。
6. 製造業・建設業が産業医に相談できること
- どの業務にどの特殊健康診断が必要か、の整理
- 特殊健診・一般健診の結果にもとづく就業判定と配置の配慮
- 化学物質のリスクアセスメントの結果と、健康管理への反映
- 熱中症・腰痛・騒音などの職場改善の助言
- 長時間労働者・高ストレス者の面接指導、休職・復職の判断
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当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「自社の業務に特殊健診が必要かどうか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
業種別の産業医のコラム
よくある質問
製造業の衛生管理者は第二種でもよいですか?
製造業・建設業は、第一種衛生管理者免許(または衛生工学衛生管理者免許、医師など)が必要な業種です。第二種衛生管理者免許だけの人は選任できません。
建設業の産業医は、現場ごとに選任するのですか?
産業医の選任は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに判断します。建設現場で自社の労働者が常時50人以上になることは多くありませんが、本社や支店などで常時50人以上であれば、その事業場に産業医を選任します。
特殊健康診断はどのくらいの頻度で行いますか?
多くの特殊健康診断は、雇入れ・配置換えのときと、その後6か月以内ごとに1回行います。じん肺健康診断のように、粉じん作業の年数や管理区分で頻度が決まるものもあります。
化学物質管理者は何人以上の事業場で必要ですか?
リスクアセスメントの対象となる化学物質を製造・取り扱う事業場では、規模にかかわらず化学物質管理者の選任が必要です(2024年4月から)。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 職場における熱中症予防情報(厚生労働省)
- 有機溶剤中毒予防規則(e-Gov法令検索)
- 特定化学物質障害予防規則(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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