電離放射線健康診断とは|対象者(管理区域)、6か月ごとの頻度、5つの項目と省略の条件、30年保存と報告、線量限度を産業医が解説

「レントゲン室の技師さんは、普通の健康診断のほかに何が必要?」「電離放射線健康診断は6か月ごと?項目は省略できる?」。病院・クリニックや非破壊検査を行う事業場の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、電離放射線健康診断の対象者、頻度、項目と省略の条件、結果の記録と報告、線量限度と線量の記録を、電離放射線障害防止規則(電離則)にもとづいて解説します。
結論:管理区域に立ち入る放射線業務従事者に、6か月以内ごとに実施
- 対象は、放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る人です(電離則第56条)。
- 雇入れ時・配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回、医師による健康診断を行います。
- 項目は、被ばく歴の調査と評価、白血球数と白血球百分率、赤血球数と血色素量またはヘマトクリット値、白内障に関する眼の検査、皮膚の検査の5つです。
- 結果は電離放射線健康診断個人票で30年間保存し、定期の健康診断を行ったら事業場の規模にかかわらず労働基準監督署に報告します(同規則第57条・第58条)。

対象者:管理区域と放射線業務従事者
管理区域とは、外部放射線と空気中の放射性物質による実効線量の合計が3か月につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域などで、事業者が標識で明示します(電離則第3条)。管理区域内で放射線業務に従事する労働者を、放射線業務従事者といいます。
病院・クリニックの診療放射線技師、X線透視やカテーテル治療に携わる医師・看護師、歯科のX線撮影、工場の非破壊検査やX線装置を使う検査工程などが代表的です。ふだん管理区域に立ち入らない職種は対象外です。
健康診断の時期と項目

| 項目 | 雇入れ・配置替えの際 | 定期(6か月以内ごと) |
|---|---|---|
| ①被ばく歴の有無の調査とその評価 | 必須 | 必須 |
| ②白血球数・白血球百分率の検査 | 必須 | 医師が必要でないと認めるときは省略できる |
| ③赤血球数の検査、血色素量またはヘマトクリット値の検査 | 必須 | 同上 |
| ④白内障に関する眼の検査 | 使用する線源の種類などに応じて省略できる | 同上 |
| ⑤皮膚の検査 | 必須 | 同上 |
さらに、前年1年間に受けた実効線量が5ミリシーベルトを超えず、その年も5ミリシーベルトを超えるおそれのない人は、定期の健康診断の②〜⑤は、医師が必要と認めないときには行わなくてよいとされています(同条第4項)。この場合でも、①の被ばく歴の調査と評価は毎回行います。
健康診断の際には、前回の健康診断のあとに受けた線量を医師に示さなければなりません(同条第5項)。一般の定期健康診断とは別に行うものです。特殊健康診断全体の考え方は特殊健康診断とは(対象業務・頻度・報告)をご覧ください。
結果の記録・報告と事後措置
| やること | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 個人票の作成・保存 | 電離放射線健康診断個人票を作成し、30年間保存する(5年間保存したあと厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すこともできる) | 電離則第57条 |
| 労働基準監督署への報告 | 定期の健康診断を行ったら、遅滞なく電離放射線健康診断結果報告書を提出する(事業場の規模にかかわらず) | 同規則第58条 |
| 事後措置 | 放射線による障害が生じている、その疑いがある、またはおそれがあると認められる人は、就業場所や業務の転換、被ばく時間の短縮、作業方法の変更など必要な措置を講じる | 同規則第59条 |
健康診断の記録の保存期間は種類ごとに異なります(健康診断の記録の保存期間)。
線量限度と線量の記録
| 対象 | 線量限度 |
|---|---|
| 放射線業務従事者の実効線量 | 5年間につき100ミリシーベルト、かつ1年間につき50ミリシーベルト |
| 女性(妊娠する可能性がないと診断された人などを除く)の実効線量 | 3か月につき5ミリシーベルト |
| 妊娠と診断された女性(妊娠中) | 内部被ばくによる実効線量1ミリシーベルト、腹部表面の等価線量2ミリシーベルト |
| 眼の水晶体の等価線量 | 5年間につき100ミリシーベルト、かつ1年間につき50ミリシーベルト |
| 皮膚の等価線量 | 1年間につき500ミリシーベルト |
眼の水晶体の線量限度は、2021年4月の改正で引き下げられました。カテーテル治療などで線源の近くに立つ医師・看護師は、水晶体の被ばくが多くなりやすいため、防護眼鏡の使用や線量の測定方法を見直しましょう。
事業者は、測定した線量を3か月ごと・1年ごと・5年ごとなどに合計して記録し、30年間保存し、本人に遅滞なく知らせなければなりません(同規則第9条)。妊娠中の女性の就業上の配慮全体については妊産婦の就業制限で解説しています。
産業医が関わること
- 健康診断の結果と、線量の記録(特に水晶体の線量)をあわせて確認し、就業上の措置について意見を述べる(健康診断後の医師の意見聴取(就業判定))
- 項目の省略が適切か(前年の線量、医師の判断)を確認する
- 職場巡視で、管理区域の標識、防護具の保管・使用状況、線量計の着用を確認する(産業医の職場巡視)
- 妊娠を報告した放射線業務従事者の線量管理と配置について助言する
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うえまつ産業医事務所では、病院・クリニックの産業医として、電離放射線健康診断の結果と線量記録の確認、就業上の措置の意見、管理区域の巡視、妊娠した職員の配置の助言を、毎月定額の範囲で行います。
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よくある質問
電離放射線健康診断は何か月ごとですか?
雇入れ時・配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回です(電離放射線障害防止規則第56条)。
電離放射線健康診断の項目は省略できますか?
定期の健康診断では、医師が必要でないと認めるときは血液・眼・皮膚の検査の全部または一部を省略できます。前年1年間の実効線量が5ミリシーベルト以下で、その年も超えるおそれのない人は、医師が必要と認めない限り血液・眼・皮膚の検査を行わなくてよいとされています。被ばく歴の調査と評価は毎回必要です。
電離放射線健康診断の結果は何年保存しますか?
電離放射線健康診断個人票を30年間保存します。5年間保存したあと、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すこともできます(電離放射線障害防止規則第57条)。
従業員50人未満のクリニックでも報告は必要ですか?
必要です。定期の電離放射線健康診断を行ったら、事業場の規模にかかわらず、遅滞なく結果報告書を労働基準監督署に提出します(電離放射線障害防止規則第58条)。
まとめ
電離放射線健康診断は、管理区域に立ち入る放射線業務従事者に、6か月以内ごとに行う特殊健康診断です。被ばく歴の調査と評価は毎回行い、項目の省略は線量と医師の判断で決めます。個人票と線量の記録は30年間保存し、結果は規模にかかわらず報告しましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 電離放射線障害防止規則(e-Gov法令検索)
- 男女雇用機会均等法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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