定期健康診断の項目と省略基準|11項目・年齢で省略できる検査・パートの対象条件と健診後の義務を産業医が解説

「定期健康診断はどの項目が必須で、何歳なら省略できるのか」「健診の費用や受診時間の賃金は会社が負担するのか」。毎年の健康診断で人事・総務の方からよくいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、定期健康診断の11項目と省略できる基準、対象者、健診後に会社がやるべきことを、条文にもとづいて解説します。

結論:常時使用する労働者に年1回、11項目。省略は医師の判断と年齢などの基準による
- 常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に11項目の健康診断を行います(労働安全衛生規則第44条)。
- 身長、腹囲、胸部エックス線、血液検査、心電図などは、厚生労働大臣が定める基準にもとづき、医師が必要でないと認めたときに省略できます(同条第2項)。年齢だけで会社が自動的に省略できるわけではありません。
- 深夜業などの特定業務に常時従事する人は、配置替えの際と6か月以内ごとに1回です(同規則第45条)。
- 健診後は、結果の通知、個人票の5年保存、異常の所見がある人についての3か月以内の医師の意見聴取、常時50人以上なら監督署への報告が必要です。
定期健康診断の11項目と省略基準

| 項目 | 医師が必要でないと認めるときに省略できる人(基準) | |
|---|---|---|
| 1 | 既往歴・業務歴の調査 | 省略不可 |
| 2 | 自覚症状・他覚症状の有無の検査 | 省略不可 |
| 3 | 身長・体重・腹囲・視力・聴力 | 身長:20歳以上/腹囲:40歳未満(35歳を除く)、妊娠中の女性など、BMI20未満、BMI22未満で自分で腹囲を測って申告した人/聴力:45歳未満(35歳・40歳を除く)は医師が適当と認める方法で代替可 |
| 4 | 胸部エックス線検査・喀痰検査 | 胸部エックス線:40歳未満(20・25・30・35歳を除く)で、学校・病院・社会福祉施設などで働く人やじん肺法の対象者でない人/喀痰:胸部エックス線で病変がなく結核のおそれがない人、胸部エックス線を省略した人など |
| 5 | 血圧の測定 | 省略不可 |
| 6 | 貧血検査(血色素量・赤血球数) | 40歳未満(35歳を除く) |
| 7 | 肝機能検査(AST・ALT・γ-GTP) | 40歳未満(35歳を除く) |
| 8 | 血中脂質検査(LDL・HDLコレステロール、中性脂肪) | 40歳未満(35歳を除く) |
| 9 | 血糖検査 | 40歳未満(35歳を除く) |
| 10 | 尿検査(尿糖・尿蛋白) | 省略不可 |
| 11 | 心電図検査 | 40歳未満(35歳を除く) |
省略はあくまで「医師が必要でないと認めるとき」に限られます。持病がある人や前回異常があった人は、年齢の基準に当てはまっても省略しないのが一般的です。また、雇入れ時の健康診断には、医師の判断で省略できる項目はありません(雇入れ時健康診断とは)。
対象者と実施のルール
- 対象者:常時使用する労働者。パート・アルバイトも、①期間の定めがない、または1年以上使用される予定(更新により1年以上使用されている場合を含む)で、②週の所定労働時間が同じ業務の正社員の4分の3以上であれば対象です。4分の3未満でも、おおむね2分の1以上であれば実施することが望ましいとされています(深夜業などの特定業務従事者は、①が6か月以上)。
- 特定業務従事者:深夜業を含む業務、著しく暑熱・寒冷な場所での業務、重量物の取扱いなどに常時従事する人は、配置替えの際と6か月以内ごとに1回(胸部エックス線は1年以内ごとに1回で足りる)。
- 他の健診を受けた人:雇入れ時の健康診断などを受けた人は、その日から1年間に限り、受けた項目に相当する項目を省略できます(同規則第44条第3項)。
- 有害業務に従事する人:一般の健康診断とは別に、特殊健康診断が必要です(特殊健康診断とは(対象業務・頻度・報告))。
費用と受診時間の賃金
| 取扱い | |
|---|---|
| 健診の費用 | 法律で会社に実施が義務づけられているため、会社が負担するものとされています |
| 受診時間の賃金(一般健康診断) | 業務と直接関連するものではないため労使で協議して決めるが、円滑な受診のためには会社が支払うことが望ましい(厚生労働省) |
| 受診時間の賃金(特殊健康診断) | 労働時間であり、賃金の支払いが必要(厚生労働省) |
再検査・二次健康診断・面接指導・ストレスチェックの費用と時間の扱いは健康診断の費用と受診時間の賃金で一覧にしています。
健診後に会社がやること
| やること | 期限など | 根拠 |
|---|---|---|
| 結果を本人に通知する | 遅滞なく | 労働安全衛生規則第51条の4 |
| 健康診断個人票を作成・保存する | 5年間保存 | 同規則第51条 |
| 異常の所見がある人について医師の意見を聴く | 健診から3か月以内。意見は個人票に記載 | 労働安全衛生法第66条の4、同規則第51条の2 |
| 必要な就業上の措置をとる | 医師の意見を踏まえて | 同法第66条の5 |
| 保健指導を行う | 特に必要な人に(努力義務) | 同法第66条の7 |
| 定期健康診断結果報告 | 常時50人以上の事業場。遅滞なく電子申請で | 同規則第52条 |
医師の意見聴取の進め方は健康診断後の医師の意見聴取(就業判定)、結果を社内の誰が見てよいかは健康診断の結果は社内の誰が見てよい?、要再検査の人が受診しないときは「要再検査」に社員が行かないときの対応で解説しています。
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よくある質問
定期健康診断の項目は年齢で省略できますか?
身長、腹囲、胸部エックス線、貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図などは、厚生労働大臣が定める基準(主に年齢など)に当てはまり、かつ医師が必要でないと認めるときに省略できます。会社の判断だけで省略することはできません。
35歳の社員は血液検査や心電図を省略できますか?
省略できません。貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図の省略基準は「40歳未満(35歳を除く)」なので、35歳の人はこれらの検査を受ける必要があります(胸部エックス線や聴力も35歳は省略の対象外です)。
パートやアルバイトも定期健康診断の対象ですか?
期間の定めがない、または1年以上使用される予定で、週の所定労働時間が同じ業務の正社員の4分の3以上であれば対象です。4分の3未満でも、おおむね2分の1以上であれば実施が望ましいとされています。
定期健康診断の結果は監督署に報告が必要ですか?
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断結果報告を遅滞なく所轄の労働基準監督署に電子申請で報告します(労働安全衛生規則第52条)。50人未満の事業場は報告不要ですが、医師の意見聴取などは必要です。
まとめ
定期健康診断は、常時使用する労働者に年1回、11項目を行います。省略は年齢などの基準と医師の判断の両方が必要です。健診はやって終わりではなく、結果の通知、個人票の保存、3か月以内の医師の意見聴取と就業上の措置までが会社の義務です。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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