特殊健康診断とは?対象業務・頻度(6か月ごと・1年に緩和できる条件)・規模を問わない結果報告と保存期間を産業医が解説

有機溶剤や特定化学物質などを扱う職場では、一般の健康診断とは別に「特殊健康診断」が必要です。従業員が少ない工場でも対象になり、結果の報告は事業場の規模にかかわらず必要です。この記事では、製造業の特殊健康診断にも携わっている京都の嘱託産業医が、特殊健康診断の対象業務、頻度、報告と保存のルールを解説します。

結論:有害業務に常時従事する人に、雇入れ・配置替えの際と6か月ごとに実施
- 有機溶剤、特定化学物質、鉛、四アルキル鉛、電離放射線、高気圧業務、石綿などの有害業務に常時従事する人が対象です(労働安全衛生法第66条第2項、同法施行令第22条)。
- 原則として、雇入れの際、配置替えの際、その後6か月以内ごとに1回行います。
- 結果は、事業場の規模にかかわらず、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告します。
- 保存期間は原則5年ですが、特別管理物質・電離放射線は30年、石綿は40年など、長く保存が必要なものがあります。
一般健康診断との違い
| 一般健康診断(定期) | 特殊健康診断 | |
|---|---|---|
| 対象 | 常時使用するすべての労働者 | 有害業務に常時従事する労働者 |
| 頻度 | 1年以内ごとに1回(特定業務従事者は6か月) | 原則6か月以内ごとに1回(雇入れ・配置替えの際も) |
| 監督署への報告 | 常時50人以上の事業場のみ | 規模にかかわらず必要 |
| 保存期間 | 5年 | 原則5年(物質により30年・40年など) |
| 受診時間 | 賃金は労使協議(支払いが望ましい) | 労働時間として賃金の支払いが必要 |
特殊健康診断の種類と対象業務
| 種類 | 主な対象業務 | 頻度 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 有機溶剤健康診断 | 屋内作業場などで有機溶剤(トルエン、キシレンなど)を製造・取り扱う業務 | 6か月以内ごと | 有機溶剤中毒予防規則第29条 |
| 特定化学物質健康診断 | ベンゼン、クロム酸、塩化ビニルなどの特定化学物質を製造・取り扱う業務 | 6か月以内ごと(一部の物質は過去に従事した人も対象) | 特定化学物質障害予防規則第39条 |
| 鉛健康診断 | 鉛の製錬、はんだ付けなどの鉛業務 | 6か月以内ごと(一部の業務は1年) | 鉛中毒予防規則 |
| 四アルキル鉛健康診断 | 四アルキル鉛等業務 | 3か月以内ごと | 四アルキル鉛中毒予防規則 |
| 電離放射線健康診断 | エックス線装置の使用など放射線業務 | 6か月以内ごと | 電離放射線障害防止規則 |
| 高気圧業務健康診断 | 高圧室内作業、潜水業務 | 6か月以内ごと | 高気圧作業安全衛生規則 |
| 石綿健康診断 | 石綿の取扱い、石綿を含む建材の解体など | 6か月以内ごと(過去に従事した人も対象) | 石綿障害予防規則 |
| じん肺健康診断 | 粉じん作業 | 管理区分に応じて1年または3年ごと | じん肺法 |
| 歯科医師による健康診断 | 塩酸、硝酸、硫酸、弗化水素などを扱う業務 | 6か月以内ごと | 労働安全衛生規則第48条 |
このほか、リスクアセスメント対象物を扱う業務では、リスクアセスメントの結果にもとづき、医師が必要と認める項目の健康診断が必要になる場合があります(労働安全衛生規則第577条の2)。
実施頻度を1年に1回にできる場合

2023年4月から、有機溶剤、特定化学物質(特別管理物質などを除く)、鉛、四アルキル鉛の健康診断は、次の条件をすべて満たす場合、1年以内ごとに1回に緩和できるようになりました(有機溶剤中毒予防規則第29条第6項など)。
- 作業環境測定の結果が、直近を含めて連続3回、第1管理区分であること
- 直近の健康診断の実施後に、作業方法を変更していないこと(軽微な変更を除く)
- 直近の連続3回の健康診断で、その労働者に新たな異常の所見がないこと
条件の判断は労働者ごとに行います。作業環境測定の結果や健診結果の経過を、産業医とあわせて確認しておきましょう。
結果の報告・保存・事後措置
| やること | ルール |
|---|---|
| 結果の通知 | 本人に遅滞なく通知 |
| 監督署への報告 | 定期の特殊健康診断を行ったら、事業場の規模にかかわらず遅滞なく報告(有機溶剤等健康診断結果報告書など) |
| 個人票の保存 | 原則5年。特別管理物質は30年、電離放射線は30年、石綿は従事しなくなった日から40年、じん肺は7年 |
| 医師の意見聴取 | 異常の所見がある人について、医師の意見を聴き、作業の転換や作業時間の短縮などの措置を検討 |
| 作業環境の改善 | 健診結果と作業環境測定の結果をあわせて、ばく露の低減策を検討 |
50人未満の事業場では一般の定期健康診断の報告は不要ですが、特殊健康診断の報告は必要です。報告漏れが多いポイントなので注意しましょう。50人未満で医師が必要になる場面は従業員50人未満でも医師が必要な場面にまとめています。
筆者は製造業の事業場で、有機溶剤・特定化学物質などの特殊健康診断の結果判定と、作業環境・作業方法の確認を行っています。健診結果の「異常なし」が続いていても、作業の実態と合っているかを現場で確認することが大切です。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「この業務に特殊健康診断が必要かどうか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
特殊健康診断の結果判定、就業上の措置、作業環境測定の結果を踏まえた職場改善まで、産業医が支援します。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
特殊健康診断は誰が対象ですか?
有機溶剤、特定化学物質、鉛、四アルキル鉛、電離放射線、高気圧業務、石綿などの有害業務に常時従事する労働者が対象です(労働安全衛生法第66条第2項、同法施行令第22条)。粉じん作業はじん肺法にもとづくじん肺健康診断、酸などを扱う業務は歯科医師による健康診断の対象です。
特殊健康診断の頻度はどのくらいですか?
原則として、雇入れの際、配置替えの際、その後6か月以内ごとに1回です。有機溶剤・特定化学物質(特別管理物質などを除く)・鉛・四アルキル鉛は、作業環境測定が連続3回第1管理区分であるなどの条件を満たすと、1年以内ごとに1回に緩和できます。
50人未満の事業場でも特殊健康診断の結果報告は必要ですか?
必要です。一般の定期健康診断の結果報告は常時50人以上の事業場だけですが、特殊健康診断の結果報告は事業場の規模にかかわらず必要です。
特殊健康診断の受診時間は労働時間ですか?
労働時間です。特殊健康診断は業務の遂行に関して当然に実施すべきものなので、受診に要した時間は労働時間として賃金の支払いが必要とされています(厚生労働省)。
まとめ
特殊健康診断は、有害業務に常時従事する人に、雇入れ・配置替えの際と原則6か月ごとに行う健康診断です。規模にかかわらず結果の報告が必要で、物質によっては30年・40年の保存が求められます。作業環境測定の結果とあわせて、健康障害の予防につなげましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 有機溶剤中毒予防規則(e-Gov法令検索)
- 特定化学物質障害予防規則(e-Gov法令検索)
- じん肺法(e-Gov法令検索)
- 石綿障害予防規則(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
あわせて読みたい

