高気圧業務健康診断とは|潜水士・圧気工法の作業者は6か月ごと、健診の項目、5年保存と報告、病者の就業禁止、再圧室を産業医が解説

「潜水士を雇っているが、どんな健康診断が必要?」「圧気工法の現場で働く人の健診は?」。潜水業務やケーソン工事を行う建設・港湾・水産関係の会社の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、高気圧作業安全衛生規則にもとづく高気圧業務健康診断について、対象、頻度、項目、記録と報告、病者の就業禁止、再圧室を解説します。

結論:潜水業務・高圧室内業務の人は、6か月以内ごとに高気圧業務健診を受ける
- 高圧室内業務(潜函工法などの圧気工法の作業室での業務)や潜水業務に常時従事する労働者には、雇入れの際、配置替えの際、その後6か月以内ごとに1回、高気圧業務健康診断を行います(高気圧作業安全衛生規則第38条)。
- 項目は、既往歴と高気圧業務歴、関節・腰・下肢の痛みや耳鳴りなどの症状、四肢の運動機能、鼓膜と聴力、血圧と尿検査、肺活量です。医師が必要と認めた人には、心電図や関節部のエックス線検査などを追加します。
- 個人票は5年間保存し、定期の健診を行ったら規模にかかわらず労働基準監督署に報告します(同規則第39条・第40条)。
- 減圧症や呼吸器・循環器・耳の疾病などにかかっている人は、医師が必要と認める期間、高気圧業務への就業を禁止します(同規則第41条)。
対象となる業務
| 業務 | 内容 | 主な資格 |
|---|---|---|
| 高圧室内業務 | 潜函工法その他の圧気工法により、大気圧を超える気圧下の作業室やシャフトの内部で行う業務 | 高圧室内作業主任者(免許)の選任 |
| 潜水業務 | 潜水器を用い、かつ、空気圧縮機や手押しポンプによる送気またはボンベからの給気を受けて、水中で行う業務 | 潜水士免許 |
潜水業務には潜水士免許が必要です(高気圧作業安全衛生規則第12条)。高圧室内作業では、作業主任者の選任も必要です(作業主任者とは)。
健診の項目
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 必ず行う項目 | 既往歴及び高気圧業務歴の調査/関節、腰若しくは下肢の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査/四肢の運動機能の検査/鼓膜及び聴力の検査/血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査/肺活量の測定 |
| 医師が必要と認めた人に追加する項目 | 作業条件調査/肺換気機能検査/心電図検査/関節部のエックス線直接撮影による検査 |
関節の痛みや耳鳴りは、減圧症や中耳の圧外傷のサインになることがあります。肺活量や心電図は、高気圧の環境で安全に作業できるかを確認するための検査です。
結果の記録・報告と就業禁止

- 高気圧業務健康診断個人票を作成し、5年間保存する(高気圧作業安全衛生規則第39条)
- 健診から3か月以内に医師の意見を聴き、個人票に記載する(同規則第39条の2)
- 定期の健診を行ったら、遅滞なく高気圧業務健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署長に提出する(同規則第40条)
次の疾病にかかっている人は、医師が必要と認める期間、高気圧業務への就業を禁止します(同規則第41条)。
- 減圧症その他高気圧による障害またはその後遺症
- 肺結核や急性上気道感染、じん肺、肺気腫などの呼吸器の疾病
- 貧血症、心臓弁膜症、冠状動脈硬化症、高血圧症などの血液・循環器の疾病
- 精神神経症、アルコール中毒、神経痛などの精神神経系の疾病
- メニエル氏病、中耳炎などの耳管狭さくを伴う耳の疾病
- 関節炎、リウマチスなどの運動器の疾病
- ぜんそく、肥満症、バセドー氏病などのアレルギー性・内分泌系・代謝・栄養の疾病
かぜで鼻やのどの調子が悪いだけでも、耳抜きがうまくできず中耳の障害につながることがあります。作業前に体調を確認する仕組みをつくりましょう。
再圧室と作業の記録
高気圧業務(潜水業務は水深10m以上の場所のもの)を行うときは、減圧症などの救急処置のための再圧室を設置するか、利用できる措置を講じます(高気圧作業安全衛生規則第42条)。高圧室内業務では、作業のたびに作業計画や減圧の日時などを記録し、5年間保存します(同規則第20条の2)。
産業医が関わること
- 高気圧業務健康診断の結果を確認し、就業禁止や就業上の措置について意見を述べる(健康診断後の医師の意見聴取(就業判定))
- 減圧症の既往や耳・呼吸器の症状がある人の、業務への復帰の可否を判断する
- 特殊健康診断の結果報告や記録の保存が漏れていないかを確認する(特殊健康診断とは(対象業務・頻度・報告))
うえまつ産業医事務所にご相談ください
うえまつ産業医事務所では、潜水業務や圧気工法のある事業場の特殊健康診断の結果確認と就業上の意見、就業禁止や復帰の判断の助言、記録や報告の確認を、毎月定額の範囲で行います。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
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よくある質問
潜水士の健康診断は何か月ごとですか?
潜水業務に常時従事する労働者には、雇入れの際、配置替えの際、その後6か月以内ごとに1回、高気圧業務健康診断を行います(高気圧作業安全衛生規則第38条)。
高気圧業務健康診断の項目は?
既往歴と高気圧業務歴の調査、関節・腰・下肢の痛みや耳鳴りなどの症状の検査、四肢の運動機能、鼓膜と聴力、血圧と尿中の糖・蛋白、肺活量です。医師が必要と認めた人には心電図などを追加します。
結果は労働基準監督署に報告が必要ですか?
定期の健診を行ったら、事業場の規模にかかわらず、遅滞なく高気圧業務健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署長に提出します(高気圧作業安全衛生規則第40条)。
どんな病気だと高気圧業務に就けませんか?
減圧症やその後遺症、呼吸器・循環器の疾病、中耳炎などの耳の疾病、ぜんそくや肥満症などにかかっている人は、医師が必要と認める期間、就業を禁止します(高気圧作業安全衛生規則第41条)。
まとめ
潜水業務や高圧室内業務に常時従事する人には、6か月以内ごとに高気圧業務健康診断を行い、個人票の5年保存と労働基準監督署への報告を行います。減圧症や耳・呼吸器の疾病がある人の就業禁止と、再圧室の確保もあわせて確認しましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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