治療と仕事の両立支援とは?2026年4月から事業主の努力義務に|会社が整える体制・進め方5ステップ・主治医と産業医の役割を産業医が解説

がん、脳卒中、心臓病、糖尿病、メンタルヘルス不調など、病気の治療を続けながら働く社員は珍しくありません。2026年4月からは、治療と仕事の両立支援が事業主の努力義務になりました。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、法改正の内容と、会社が整えておくべき体制、主治医・産業医との連携の進め方を解説します。

結論:相談できる体制を整え、主治医と産業医の意見をもとに働き方を一緒に決める
- 改正労働施策総合推進法により、2026年4月1日から、治療を受ける労働者の相談に応じ、適切に対応するための体制の整備などが事業主の努力義務になりました(同法第27条の3)。
- 厚生労働省は「治療と就業の両立支援指針」(2026年2月公表)を定めており、会社はこれに沿って取り組むことが求められます。
- 進め方の基本は、本人の申出 → 主治医の意見 → 産業医などの意見 → 就業上の措置・両立支援プランです。
- 病名や治療内容は本人の同意の範囲で扱い、職場には必要な配慮だけを伝えます。
法改正のポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 労働施策総合推進法第27条の3(2025年の法改正で新設) |
| 施行日 | 2026年4月1日 |
| 義務の内容 | 治療を受ける労働者について、症状の悪化を防ぎ治療と就業の両立を支援するため、相談に応じ適切に対応する体制の整備その他の措置を講ずる(努力義務) |
| 指針 | 治療と就業の両立支援指針(厚生労働大臣が定め公表)。労働安全衛生法の健康保持増進の指針と調和が保たれたもの |
| 対象となる病気 | がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎、難病、メンタルヘルス不調など、反復・継続して治療が必要な病気やけが |
両立支援の目的は「無理に働かせること」ではない
両立支援は、病気やけがで今まで通りに働けなくなった社員に対して、本人の希望を前提に、通院しやすい仕組みや就業上の配慮を整え、働き続けられる環境をつくる取り組みです。業務を続けさせること自体が目的ではなく、「働き続けることが本人の健康を損なう原因にならないか」という視点が欠かせません。
主治医や産業医の意見をもとに適切な配置や配慮を行うことは、会社の安全配慮義務を果たすことそのものです。また、知識や経験のある人材の離職を防ぐという点で、会社にとっても大きなメリットがあります。これまで厚生労働省が示してきた「ガイドライン」は、法改正により法律にもとづく「指針」に位置づけられました。
会社が整えておく体制
| 取り組み | 具体例 |
|---|---|
| 基本方針の表明 | 「病気になっても働き続けられるよう支援する」ことを社内に示す |
| 相談窓口の明確化 | 人事担当者・産業医・保健師など、誰に相談すればよいかを周知する |
| 休暇・勤務制度 | 時間単位の年次有給休暇、短時間勤務、時差出勤、在宅勤務、通院のための休暇など |
| 研修・意識啓発 | 管理職向けに、病気の社員への接し方や配慮の考え方を伝える |
| 情報の取扱いルール | 健康情報を誰がどこまで扱うかを取扱規程で定める |
健康情報の取扱規程については健康診断の結果は社内の誰が見てよい?で解説しています。
両立支援の進め方(5つのステップ)

- 本人からの申出:本人が人事担当者や産業医に、治療を続けながら働きたいと相談する
- 勤務情報の提供:会社が本人の仕事内容・勤務時間・作業環境などを書面にまとめ、本人を通じて主治医に渡す
- 主治医の意見:主治医から、就業継続の可否、望ましい配慮(通院日、勤務時間、避けるべき作業など)について意見をもらう
- 産業医などの意見:主治医の意見と職場の実情をふまえ、産業医が就業上の措置について意見を述べる
- 両立支援プランの作成:本人と話し合い、治療の予定、勤務上の配慮、見直しの時期をまとめたプランを作り、必要な範囲で上司と共有する
主治医は職場の仕事内容を詳しく知らないため、2の勤務情報の提供が特に大切です。産業医は、主治医の医学的な意見を職場で実行できる配慮に「翻訳」する役割を担います。産業医の意見書については産業医の意見書とはをご覧ください。
よくあるつまずき
- 病名を上司や同僚に広く伝えてしまい、本人が相談しなくなる
- 主治医の「就労可」の診断書だけで、具体的な配慮を決めずに復帰させる
- 配慮が「いつまで」か決めず、周囲の負担が増えて職場の不満につながる
- 50人未満で産業医がいないため、主治医の意見を職場に当てはめる人がいない
産業医がいない事業場では、都道府県の産業保健総合支援センターに両立支援の相談窓口があります。休職を経て復職する場合の判断は主治医の「復職可」だけで復帰させていいのかで解説しています。
社員の方へ:病気になっても一人で抱え込まないための3つのこと
医療の進歩により、以前は長期の入院が必要だった病気でも、通院や服薬を続けながら働けることが多くなりました。「病気になったら仕事を辞めるしかない」と考える前に、次の3つを思い出してください。
- まずは産業医に相談する:上司や人事担当者に言い出しにくいときは、産業医に相談できます。産業医は主治医の意見をもとに、医療と職場の橋渡しをします。
- 柔軟な働き方の制度を使う:時間単位の年次有給休暇、フレックスタイム、テレワーク、一時的な短時間勤務など、会社の制度を治療の予定に合わせて組み合わせます。
- 職場で「お互いさま」の風土をつくる:日頃から業務の進み具合を共有し、急な通院や体調不良のときにカバーし合える職場が、両立のいちばんの支えになります。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
治療中の社員との面談、主治医への情報提供と意見の確認、両立支援プランづくりまで、産業医が継続して支援します。臨時の面談や意見書の作成にも追加費用はかかりません。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
治療と仕事の両立支援は義務ですか?
2026年4月1日から、労働施策総合推進法第27条の3にもとづき、事業主の努力義務になりました。治療を受ける労働者の相談に応じ、適切に対応するための体制の整備などが求められます。
両立支援の対象になるのはどんな病気ですか?
がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎、難病、メンタルヘルス不調など、反復・継続して治療が必要な病気やけがが対象です。
主治医の意見書の費用は誰が負担しますか?
法律上の定めはありません。会社が意見を求める場合は会社負担とするのが一般的です。主治医が勤務情報をもとに意見書を作成した場合、診療報酬上の評価(療養・就労両立支援指導料)の対象になることもあります。
病名を上司に伝えてもよいですか?
本人の同意がない限り、病名を上司に伝える必要はありません。上司には、通院日や勤務時間、避けるべき作業など、必要な配慮の内容だけを伝えます。
まとめ
2026年4月から、治療と仕事の両立支援は事業主の努力義務になりました。相談窓口と休暇・勤務制度を整え、主治医と産業医の意見をもとに、本人と一緒に働き方を決めることが基本です。病気になっても働き続けられる職場は、人材の定着にもつながります。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 治療と仕事の両立支援ナビ(厚生労働省)
- 個人情報保護法(e-Gov法令検索)
- 労働者健康安全機構「産業保健とは」(産業保健総合支援センター・地域産業保健センター)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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