産業医の意見書とは|必要になる4つの場面・書かれる内容(就業区分と措置)・会社の対応を産業医が解説

「産業医の意見書をもらってください」「意見書にはどう書いてもらえばよいのか」。健康診断のあと、長時間労働者やストレスチェックの面談のあと、休職・復職のときなど、人事・総務の方が産業医の「意見書」を扱う場面は少なくありません。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、意見書が必要になる場面、書かれる内容、会社が受け取ったあとにすべきことを、条文にもとづいて解説します。

結論:意見書は「医師の意見を聴いた記録」であり、会社の措置の根拠になる
- 健康診断・長時間労働者の面接指導・ストレスチェックの面接指導のあとは、医師の意見を聴くことが会社の法的義務です。意見書はその記録になります。
- 意見書には主に、就業区分(通常勤務・就業制限・要休業)と、具体的な就業上の措置が書かれます。
- 会社は医師の意見を勘案して措置を決め、記録を保存します(面接指導の記録は5年間)。
- 意見書は病名を伝える書類ではありません。会社が必要とするのは「どう働けるか」の情報です。
意見書が必要になる4つの場面
| 場面 | 法令上のルール | いつまでに |
|---|---|---|
| 健康診断で異常の所見があったとき | 医師の意見を聴き、健康診断個人票に記載する(安衛法第66条の4、安衛則第51条の2) | 健診日から3か月以内 |
| 長時間労働者の面接指導のあと | 面接指導の結果にもとづき医師の意見を聴き、意見を記録に記載して5年間保存(安衛法第66条の8、安衛則第52条の6・第52条の7) | 面接指導の後、遅滞なく |
| ストレスチェックの高ストレス者の面接指導のあと | 面接指導の結果にもとづき医師の意見を聴き、意見を記録に記載して5年間保存(安衛法第66条の10、安衛則第52条の18・第52条の19) | 面接指導の後、遅滞なく |
| 休職・復職のとき | 法律上の様式はないが、主治医の診断書とは別に、産業医が就業の可否と配慮事項について意見を述べる(厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」) | 復職判定の前 |
健診後の意見聴取は健康診断後の医師の意見聴取(就業判定)で、復職判定は主治医の「復職可」だけで復帰させていいのかで詳しく解説しています。
意見書に書かれる内容

意見書の形式は自由ですが、筆者が作成する意見書には、次の項目を必ず入れています。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 対象者・実施日・医師名 | 氏名、面談日、産業医の氏名 |
| 就業区分 | 通常勤務/就業制限/要休業 |
| 就業上の措置 | 時間外労働は月20時間まで、深夜業・出張は当面不可、運転業務を控える、業務量を通常の7割程度に など |
| 措置の期間と見直し時期 | 「1か月間」「次回面談(○月)で再評価」など |
| 受診・治療についての意見 | 主治医への受診を勧める、治療の継続を確認する など |
| 職場への配慮事項 | 上司との定期的な面談、相談窓口の案内、座席・業務の調整 |
病名や検査値の詳細は、原則として書きません。会社が知る必要があるのは「どの仕事を、どの程度できるか」であり、詳しい健康情報は本人の同意がない限り産業医の手元にとどめます。これは、健康情報の取扱いを必要な範囲に限るという厚生労働省の指針の考え方にもとづくものです。
「意見」と「勧告」の違い
産業医が述べる「意見」とは別に、産業医には勧告の権限があります。労働者の健康を確保するため必要と認めるときは、事業者に勧告でき、事業者はその勧告を尊重しなければなりません(労働安全衛生法第13条第5項)。勧告をしたときは、その内容と講じた措置を衛生委員会に報告します(同条第6項)。
| 意見(意見書) | 勧告 | |
|---|---|---|
| 対象 | 個々の労働者の就業上の措置 | 職場全体・会社の体制に関わる重要な事項が中心 |
| 会社の対応 | 意見を勘案して措置を決める | 勧告を尊重する。内容と措置を衛生委員会に報告し、記録を3年保存 |
| 頻度 | 日常的 | まれ(意見で改善しない場合など) |
意見書を受け取った会社がすること
- 本人・上司と面談し、意見書の措置を実際の業務にどう落とし込むかを決める
- 本人の実情を考慮し、措置の内容(就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など)を決定する
- 措置の内容を記録し、面接指導の記録とともに5年間保存する(健診は健康診断個人票に記載)
- 措置の期間が終わる前に産業医と再評価し、継続・緩和・解除を判断する
医師の意見と異なる措置をとる場合は、その理由を説明できるようにしておきましょう。社員が倒れた場合、「医師の意見を受けて会社が何をしたか」が安全配慮義務の判断で問われます。
意見書の費用
紹介会社経由の契約では、意見書の作成が1通ごとの別料金になっていることがあります。別料金だと会社が依頼を控え、根拠が不十分なまま復職させてしまうなど、かえってリスクが高まります。うえまつ産業医事務所では、意見書や主治医への診療情報提供依頼書の作成は月額料金に含まれ、追加費用はかかりません。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
健診後の就業判定、長時間労働者・高ストレス者の面接指導、休職・復職の意見書まで、同じ医師が一貫して担当します。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
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事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
産業医の意見書は法律で必要ですか?
健康診断で異常の所見があった労働者、長時間労働者の面接指導、ストレスチェックの高ストレス者の面接指導については、会社が医師の意見を聴くことが労働安全衛生法で義務づけられています。意見書はその記録になり、面接指導の記録は5年間保存します。
産業医の意見書には何が書かれますか?
就業区分(通常勤務・就業制限・要休業)、時間外労働や深夜業の制限などの具体的な就業上の措置、措置の期間と見直し時期、受診についての意見、職場への配慮事項などです。病名や検査値の詳細は原則として書きません。
産業医の意見と勧告は何が違いますか?
意見は個々の労働者の就業上の措置について述べるもので、勧告は労働者の健康確保のため必要と認めるときに事業者に対して行うものです。事業者は勧告を尊重し、その内容と講じた措置を衛生委員会に報告します(労働安全衛生法第13条)。
意見書の作成に費用はかかりますか?
契約によります。紹介会社経由では1通ごとの別料金のこともあります。うえまつ産業医事務所では、意見書や診療情報提供依頼書の作成は月額料金に含まれ、追加費用はかかりません。
まとめ
産業医の意見書は、健康診断・面接指導・休職復職などの場面で会社が医師の意見を聴いた記録であり、就業上の措置を決める根拠です。意見を受けたら本人・上司と措置を具体化し、記録を残し、期限を決めて見直しましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 個人情報保護法(e-Gov法令検索)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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