オンライン産業医とは|Web面談でできること・実地が必要なこと、厚労省通達の要件と導入手順・活用場面・費用を産業医が解説

オンライン産業医は法的に大丈夫?Web面談でできること・実地が必要な職務(職場巡視)と導入手順(うえまつ産業医事務所)
産業医の面談の多くはオンラインで実施できますが、職場巡視は実地が必要です。

オンライン産業医とは、ビデオ通話などの情報通信機器を使って、産業医の職務の一部を事業場の外から行う働き方・サービスのことです。法律に「オンライン産業医」という言葉はありませんが、厚生労働省は、留意事項を守れば産業医が職務の一部を遠隔で行ってよいとしています。面接指導(産業医面談)や健康相談、衛生委員会への出席はオンラインで行えます。一方で、職場巡視は産業医が実地で行う必要があります。

この記事では、京都で嘱託産業医をしながら、全国の企業からWeb面談で相談を受けている筆者が、人事・総務の方に向けて、オンラインでできること・実地が必要なこと、オンラインで面談するときの要件(厚生労働省の通達)、導入の手順と活用のしかた、費用をまとめます。

4コマ漫画:営業所が遠くて産業医面談が難しいと悩む人事担当に、めーくんが「面談はオンラインでも行えます」と説明。営業所の社員はWeb面談で移動しなくてよいと喜び、めーくんは表情や声も確認すると伝える。人事担当がどの営業所の人も相談できると安心し、めーくんは「プライバシーが守られる場所で行います」と話す。

1. オンライン産業医とは:2つの使い方

使い方主な対象ポイント
選任している産業医が、職務の一部をオンラインで行う従業員50人以上の事業場(産業医の選任義務あり)面談・相談・衛生委員会はオンライン可。職場巡視は実地で行う
産業医の選任義務がない会社が、Webで医師に相談する従業員50人未満の事業場、支店・営業所健診後の医師の意見聴取、長時間労働・高ストレス者の面接指導などをWeb面談で受けられる
オンライン産業医の2つの使い方

50人以上の事業場では、産業医を選任し(労働安全衛生法第13条)、選任した産業医が職務を行います。オンラインはそのやり方の一つで、選任そのものを省けるわけではありません。50人未満の事業場は選任義務がないため、必要な場面だけWebで医師に相談する使い方ができます(従業員50人未満でも医師が必要な場面7つ)。

2. オンラインでできること・実地が必要なこと

1コマ漫画:ホワイトボードの「オンラインでできること」(面接指導、健診後の医師の意見、健康相談・復職の面談、衛生委員会への出席、職場巡視は実地で行う)を前に、全部オンラインでよいかと聞く社長に、めーくんが「職場巡視は実地で行います」と説明。

厚生労働省は、産業医の職務を情報通信機器で遠隔から行うときの留意事項を示しています(令和3年3月31日付け基発0331第4号)。職務ごとに整理すると、次のとおりです。

職務(労働安全衛生規則第14条など)オンライン留意点
長時間労働者・高ストレス者などの面接指導○面接指導の通達の要件を守る。医師が必要と認めたときは対面で行う
健康診断の結果にもとづく医師の意見○結果の資料をあらかじめ産業医に共有する
健康相談、休職・復職の面談○プライバシーが守られる場所で行う。必要に応じて対面と組み合わせる
衛生委員会への出席○オンラインで開催する委員会の要件(令和2年8月27日付け基発0827第1号)を満たす
衛生教育(研修・講話)○eラーニング等で行う安全衛生教育の通達にもとづいて実施する
作業環境・作業の管理△定期巡視は実地。作業環境や作業内容が大きく変わるときも実地で確認するのが適当
健康障害の原因調査・再発防止△原則として実地で確認する。報告書などで実地確認が不要と産業医が判断した場合を除く
職場巡視(定期巡視)×少なくとも毎月1回(条件を満たせば2か月に1回)、産業医が実地で行う(規則第15条)
産業医の職務とオンライン実施の可否(厚生労働省の留意事項をもとに整理)

職場巡視は、作業場を実際に見て、においや温度、作業姿勢など、面談だけではわからない情報を得るためのものです。カメラ越しの巡視では代わりになりません。巡視の頻度と、2か月に1回にできる条件は産業医の職場巡視とはで解説しています。

3. オンラインで産業医面談(面接指導)を行うときの要件

長時間労働者や高ストレス者などへの医師の面接指導をオンラインで行うときは、厚生労働省の通達(平成27年9月15日付け基発0915第5号、令和2年11月19日最終改正)の要件を満たす必要があります。

使う機器の要件(すべて満たす)

  • 医師と労働者が、お互いに表情・顔色・声・しぐさを確認でき、映像と音声の送受信が常時安定して円滑であること
  • 情報セキュリティ(外部への情報漏えいの防止、外部からの不正アクセスの防止)が確保されていること
  • 労働者が使う機器の操作が複雑・難解でなく、容易に利用できること

実施方法の要件(いずれも満たす)

  • オンラインで面接指導を行う方法について、衛生委員会等で調査審議したうえで、事前に労働者に周知していること
  • 面接指導の内容が第三者に知られない環境を整えるなど、労働者のプライバシーに配慮していること

このほか、医師が緊急に対応すべき徴候を見つけたときに、近くの医師と連携したり、事業場の産業保健スタッフが対応したりできる緊急時の対応体制を整えておくことも求められています。また、面接指導を行う医師が必要と認めた場合は、直接対面で行う必要があります。

映像と音声の両方でやりとりすることが前提のため、電話(音声だけ)による面接指導はこの要件を満たしません。面接指導そのものの流れは長時間労働者の面接指導の流れと高ストレス者の面接指導の流れで解説しています。

4. 導入前に会社が決めておくこと(4つの共通事項)

産業医の職務の一部をオンラインで行うときは、職務の種類を問わず、次の4つを整えておくことが求められています(基発0331第4号)。

  1. 範囲と留意事項を決めて周知する:どの職務をオンラインで行うかを衛生委員会等で調査審議し、労働者に周知する
  2. 情報を産業医に届ける仕組み:長時間労働者の情報や健診結果など、健康管理に必要な情報が、遠隔の産業医に適時・円滑に提供されるようにする(労働安全衛生法第13条第4項)
  3. 実地で確認できる仕組み:オンラインで行う職務でも、産業医が必要と認めたときは事業場で作業環境等を確認できるようにする
  4. 周辺の医療機関との連携:事業場の近くの医療機関と連携するなど、必要な体制をつくる

あわせて、面談に使うツール(ビデオ会議システム)、面談を受ける部屋、資料の受け渡し方法(パスワード付きのファイル、アクセス権を限ったフォルダなど)を決めておきます。健康情報の扱いは、社内の規程にも書いておくと運用が安定します(健康情報の取扱規程の作り方)。

5. オンライン産業医の活用場面

場面オンラインの活用のしかた
支店・営業所が全国に分散している本社の産業医が、各拠点の社員とWeb面談する。拠点の巡視は、拠点ごとの体制を確認したうえで計画する
テレワークの社員が多い出社日を待たずに面談でき、長時間労働の面接指導を期限内に行いやすい
従業員50人未満の会社健診後の医師の意見聴取や面接指導を、必要なときだけWebで受ける(従業員50人未満でも医師が必要な場面7つ)
夜勤・交替勤務がある勤務の合間に合わせて面談の時間を取りやすい
休職中の社員の面談体調に配慮しつつ、復職前の状態の確認や生活リズムの聞き取りを行う。復職判定の最終面談は対面を組み合わせることもある
今の産業医とは別の意見がほしい休職・復職の判断などで、別の産業医にスポットで相談する(セカンドオピニオン)
オンライン産業医の活用場面

高ストレス者の面接指導は、申出のハードルを下げることが大切です。社内で人目を気にせず受けられるオンライン面談は、申出のしやすさにもつながります。

6. オンラインと対面の比較

オンライン(Web面談)対面
日程調整移動がなく調整しやすい産業医の訪問日に合わせる
拠点が離れた社員同じ産業医が対応しやすい訪問の手間がかかる
把握できる情報表情・声・しぐさ(通達の要件)顔色や動作など、より多くの情報
向いている場面面接指導、健康相談、衛生委員会、研修職場巡視、体調が大きく崩れている人、医師が必要と認めた面談
準備機器・通信・個室の確保、衛生委員会での審議と周知面談室の確保
オンラインと対面の比較

7. 50人以上の事業場は「オンラインだけ」では足りない

50人以上の事業場で選任した産業医は、職場巡視を実地で行う必要があります。そのため「全国どこの医師でもよい」「訪問なしで安く」という選び方は、巡視の義務を果たせなくなるおそれがあります。

  • 面談・相談・衛生委員会はオンライン、巡視は訪問、と組み合わせるのが現実的です
  • 訪問の頻度は原則として毎月1回です。条件を満たせば2か月に1回にでき、費用も抑えられます(産業医の隔月訪問の条件と費用)
  • 拠点が遠い場合は、拠点ごとに産業医の選任が必要か(その拠点が50人以上か)を確認します

8. 費用の目安(当事務所の場合)

契約料金(税別)オンラインでの対応
スポット相談(契約なし)1回 20,000円Web面談で全国対応。意見書の作成も料金に含む
顧問契約(従業員50人未満)月額 20,000円メール・Web面談で継続して相談
嘱託産業医(従業員50人以上)月額 30,000円〜(隔月訪問)巡視・衛生委員会は訪問、面談はWebも併用
うえまつ産業医事務所のオンライン対応と料金

いずれも毎月定額(スポットは1回単位)で、臨時の面談や意見書の作成に追加費用はかかりません。

9. オンライン面談の当日までのチェックリスト

事前準備

  • オンラインで行う範囲と方法を衛生委員会等で審議し、社員に周知した
  • 面談を受ける個室(会話が外に漏れない場所)を確保した。自宅で受ける場合は家族に聞かれない環境を本人に確認した
  • ビデオ会議のURLの送り方と、資料(勤務時間、業務内容、健診結果など)の安全な共有方法を決めた
  • 通信が切れたときの連絡方法(電話番号)と、緊急時に対応する社内の担当者を決めた

当日

  • カメラとマイクの動作を確認し、本人の表情と声が十分にわかる状態で始める
  • 本人確認をし、面談の目的と、会社に伝わる範囲(就業上の措置に必要な範囲)を説明する

面談後

  • 面接指導の後、遅滞なく医師の意見を聴き、必要な就業上の措置を検討する(産業医の意見書とは)
  • 面接指導の結果の記録を作り、5年間保存する(労働安全衛生規則第52条の6、第52条の18)

うえまつ産業医事務所にご相談ください

当事務所は、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場には訪問し、全国の企業・団体とはWeb面談で対応しています。オンラインでの面接指導や健康相談も、通達の要件に沿って行います。詳しくはオンライン産業医(Web面談・全国対応)をご覧ください。紹介会社の中間手数料がかからない直接契約と、ストレスチェックや健康管理のWeb化(DX)によって、料金をできるだけ抑えています。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
  • 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)

事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「支店の社員の面接指導をオンラインでお願いできるか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

よくある質問

産業医の面談はオンラインでも法的に問題ありませんか?

問題ありません。長時間労働者や高ストレス者などへの面接指導は、厚生労働省の通達の要件(表情・顔色・声・しぐさが確認できる機器、情報セキュリティ、衛生委員会等での審議と周知、プライバシーへの配慮など)を満たせば、情報通信機器を用いて行えます。医師が必要と認めた場合は対面で行います。

電話で面接指導をしてもよいですか?

映像と音声で、表情・顔色・声・しぐさを確認できることが要件のため、電話(音声だけ)による面接指導は要件を満たしません。ビデオ通話で行ってください。

職場巡視もオンラインでできますか?

できません。産業医の定期巡視は、少なくとも毎月1回(労働安全衛生規則第15条の条件を満たせば2か月に1回)、産業医が実地で行う必要があります。

衛生委員会に産業医がオンラインで出席してもよいですか?

はい。情報通信機器を用いて開催する委員会の要件(令和2年8月27日付け基発0827第1号)を満たせば、オンラインで出席できます。

遠方に住んでいる医師を産業医に選任できますか?

職務の一部はオンラインで行えますが、職場巡視などは実地で行う必要があるため、実際に訪問できる医師を選ぶ必要があります。

従業員50人未満の会社でも、オンラインで産業医に相談できますか?

はい。選任義務はありませんが、健診後の医師の意見聴取や長時間労働者の面接指導は会社の規模にかかわらず必要です。顧問契約やスポット相談で、Web面談を利用できます。

最終更新:2026年10月31日(厚生労働省の通達・留意事項の内容を確認のうえ全面改稿)

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)

あわせて読みたい

この記事を書いた産業医に、御社の状況を相談しませんか

うえまつ産業医事務所 所長
上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
産業医のプロフィール
うえまつ産業医事務所 所長・産業医 上松弘典
京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国へWeb面談で対応しています。
料金は毎月定額で、臨時の相談や交通費などの追加費用はかかりません。 料金とご契約の流れ

お問い合わせには翌営業日までに返信、Web面談は最短翌営業日。
「今の産業医が来てくれない」「50名を超えた」「復職判断に迷っている」といったご相談を多くいただいています。