長時間労働者の面接指導の流れ|月80時間超の通知・申出・医師の意見・就業上の措置・記録まで9ステップで産業医が解説

「残業が月80時間を超えた社員がいるが、何から始めればよいのか」「面接指導は誰に、いつまでに受けさせるのか」。長時間労働者への医師の面接指導は、会社の規模にかかわらず必要な手続きです。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、労働時間の把握から面接指導、医師の意見、就業上の措置、記録までの流れを、条文にもとづいて9つのステップで解説します。過労死ラインそのものの解説は過労死ラインとは?面接指導と安全配慮をご覧ください。
結論:毎月時間を算定し、80時間超の人に通知、申出があれば医師の面接指導
- 会社は、管理監督者を含む労働者の労働時間の状況を客観的な方法で把握し、記録を3年間保存します(労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3)。
- 毎月1回以上、時間外・休日労働の時間を算定し、月80時間を超えた人には本人に通知し、産業医にも氏名と時間を提供します。
- 80時間を超えて疲労の蓄積が認められる人から申出があれば、遅滞なく医師の面接指導を行います(同規則第52条の2・第52条の3)。
- 面接指導のあと、医師の意見を聴いて就業上の措置を決め、結果の記録を5年間保存します。
面接指導の対象者
| 対象 | 要件 | 義務の種類 |
|---|---|---|
| 一般の労働者(管理監督者を含む) | 時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められ、本人が申し出た | 会社の義務(労働安全衛生法第66条の8) |
| 研究開発業務の労働者 | 時間外・休日労働が月100時間を超えた(申出は不要) | 会社の義務・罰則あり(同法第66条の8の2) |
| 高度プロフェッショナル制度の対象者 | 健康管理時間のうち週40時間を超えた時間が月100時間を超えた(申出は不要) | 会社の義務(同法第66条の8の4) |
| 上記以外で会社の基準に当たる人 | 例:月45時間超で健康不安を訴えた人など、事業場で定めた基準 | 努力義務(同法第66条の9、同規則第52条の8) |
面接指導の流れ(9ステップ)
| ステップ | やること | 期限・ポイント | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 労働時間の状況の把握 | タイムカード、パソコンのログなど客観的な方法で把握する | 管理監督者や裁量労働の人も対象。記録は3年保存 | 労働安全衛生法第66条の8の3、同規則第52条の7の3 |
| 2 時間の算定 | 時間外・休日労働の時間を計算する | 毎月1回以上、一定の期日を決めて行う | 同規則第52条の2第2項 |
| 3 本人への通知 | 80時間を超えた人に、その時間を知らせる | 算定後、速やかに | 同規則第52条の2第3項 |
| 4 産業医への情報提供 | 80時間を超えた人の氏名と時間を産業医に伝える | 算定後、速やかに | 同規則第14条の2 |
| 5 申出の受付 | 本人からの申出を受ける。産業医は申出を勧めることができる | 申出しやすい窓口と方法を決めておく | 同規則第52条の3 |
| 6 面接指導の実施 | 医師が、勤務の状況、疲労の蓄積、心身の状況を確認する | 申出後、遅滞なく(おおむね1か月以内が目安) | 同規則第52条の3・第52条の4 |
| 7 医師の意見聴取 | 就業上の措置が必要か、医師から意見を聴く | 面接指導の後、遅滞なく | 同規則第52条の7 |
| 8 就業上の措置 | 労働時間の短縮、深夜業の回数の削減、業務内容の変更などを行う | 本人の意見も聴いて決める | 労働安全衛生法第66条の8第5項 |
| 9 記録の保存 | 面接指導の結果と医師の意見を記録する | 5年間保存 | 同規則第52条の6 |
面接指導で医師が確認すること
- 勤務の状況:労働時間、休日の取得、業務の内容と量、出張や深夜勤務の有無
- 疲労の蓄積の状況:睡眠時間、疲労の自覚症状(厚生労働省の「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」などを活用)
- 心身の状況:血圧や持病、うつ症状などのメンタルヘルス面、生活習慣
面接の前に、会社から医師へ、直近3か月の時間外・休日労働の推移、業務内容、健康診断の結果を共有しておくと、短い時間でも的確な判断ができます。本人が「大丈夫です」と言っても、睡眠時間や疲労の訴えから判断することが大切です(月80時間残業のリスク)。
医師の意見と就業上の措置の例
| 医師の意見の例 | 会社がとる措置の例 |
|---|---|
| 通常勤務でよい | 経過観察。翌月も時間を確認する |
| 時間外労働の制限が必要 | 月45時間以内などの上限を設定する、業務を分担する |
| 深夜業・出張の制限が必要 | 夜勤の回数を減らす、出張を控える |
| 医療機関の受診が必要 | 受診を勧め、結果を確認する |
| 休業が必要 | 休職を検討する(社員を休職させるべきかの判断と手続き) |
よくある運用のつまずき
- 管理職(管理監督者)の労働時間を把握していない。管理監督者も労働時間の状況の把握と面接指導の対象です
- 80時間を超えた本人への通知をしていない
- 申出の方法が決まっておらず、面接指導につながらない
- 面接指導は行ったが、医師の意見にもとづく措置をとらず、翌月も同じ長時間労働が続いている
- 50人未満で産業医がいないため、面接指導を行っていない。地域産業保健センター(無料)や顧問医を活用できます(従業員50人未満でも医師が必要な場面)
面接指導は、情報通信機器を用いて行うことも一定の条件のもとで認められています。オンラインでできることと実地が必要なことはオンライン産業医でできること・実地が必要なことで解説しています。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
長時間労働者の面接指導、医師の意見書の作成、労働時間の管理方法についての助言まで、契約企業では追加費用なしで対応します。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
長時間労働者の面接指導は何時間から必要ですか?
時間外・休日労働(週40時間を超えて働いた時間)が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合に、医師の面接指導が義務になります(労働安全衛生規則第52条の2・第52条の3)。研究開発業務の労働者は、月100時間を超えると申出がなくても面接指導が必要です。
管理職も面接指導の対象ですか?
対象です。管理監督者も労働時間の状況を把握する対象であり、要件を満たして申し出れば面接指導を行う必要があります。
面接指導はいつまでに行えばよいですか?
申出があった後、遅滞なく行います。目安はおおむね1か月以内です。面接指導の後は、遅滞なく医師の意見を聴き、就業上の措置を決めます。
面接指導の記録は何年保存しますか?
面接指導の結果と医師の意見を記録し、5年間保存します(労働安全衛生規則第52条の6)。労働時間の状況の記録は3年間保存します。
まとめ
長時間労働者の面接指導は、毎月の時間の算定、80時間超の人への通知と産業医への情報提供、申出の受付、医師の面接指導、意見聴取、就業上の措置、記録の保存という流れで進めます。手順を決めておけば、人事担当者の負担を増やさずに、社員の健康と会社の両方を守ることができます。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 労働者健康安全機構「産業保健とは」(産業保健総合支援センター・地域産業保健センター)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
産業医面談の基本:産業医面談とは|対象者と種類・流れ・話す内容・守秘義務
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
あわせて読みたい

