従業員50人未満でも医師が必要な場面7つ|健診後の意見聴取・長時間労働の面接指導・ストレスチェック義務化と医師の探し方を産業医が解説

「うちは従業員50人未満だから、産業医はいらない」――確かに、産業医の選任義務は常時50人以上の事業場にしかありません。しかし、50人未満の会社でも、法律上医師の意見や面接指導が必要になる場面はいくつもあります。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、50人未満の会社で医師が必要になる場面と、医師の探し方を解説します。
結論:産業医の選任義務はなくても、医師が必要な義務はある
- 健康診断の有所見者についての医師の意見聴取と、長時間労働者への医師の面接指導は、会社の規模にかかわらず義務です。
- ストレスチェックは、2028年4月から50人未満でも義務になり、高ストレス者の面接指導も医師が行います。
- 50人未満の事業場は、医師などに労働者の健康管理を行わせるよう努めなければなりません(労働安全衛生法第13条の2)。
- 医師は、地域産業保健センター(無料)、顧問契約の産業医、スポット相談などで確保できます。

50人未満でも医師が必要な場面

| 場面 | 医師の役割 | 根拠 |
|---|---|---|
| 健康診断の結果に異常の所見があったとき | 就業上の措置(通常勤務・就業制限・要休業)についての意見 | 労働安全衛生法第66条の4 |
| 時間外・休日労働が月80時間を超え、本人が申し出たとき | 面接指導と、就業上の措置についての意見 | 同法第66条の8、労働安全衛生規則第52条の2・第52条の3 |
| 研究開発業務で時間外・休日労働が月100時間を超えたとき | 本人の申出がなくても面接指導 | 同法第66条の8の2 |
| ストレスチェック(2028年4月から50人未満も義務) | 実施者、高ストレス者の面接指導 | 同法第66条の10 |
| 有機溶剤・特定化学物質などを扱う業務 | 特殊健康診断の実施と、結果にもとづく意見 | 有機溶剤中毒予防規則など |
| リスクアセスメント対象物を扱う業務 | 医師が必要と認める項目の健康診断 | 労働安全衛生規則第577条の2 |
| 病気の社員の就業を禁止するとき | 事前に産業医その他専門の医師の意見を聴く | 労働安全衛生規則第61条 |
このほか、法律上の義務ではありませんが、メンタル不調による休職・復職の判断や、持病のある社員の配慮(両立支援)、職場の感染症対策なども、医師の意見があると判断の根拠がはっきりします。主治医の「復職可」の診断書だけで判断してよいかは主治医の「復職可」だけで復帰させていいのかで解説しています。
特に多い相談:健診後の意見聴取と長時間労働
50人未満の会社で最も見落とされやすいのが、健康診断後の医師の意見聴取です。健康診断を受けさせただけで終わっている会社が少なくありませんが、異常の所見があった社員については、健診から3か月以内に医師の意見を聴き、記録しておく必要があります。手順は健康診断後の医師の意見聴取(就業判定)で解説しています。
長時間労働者の面接指導も規模を問いません。会社は労働時間の状況を把握し(同法第66条の8の3)、月80時間を超えた社員にはその情報を通知します。過労死ラインとの関係は過労死ラインとは?面接指導と安全配慮をご覧ください。
医師の探し方
| 方法 | 費用 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 地域産業保健センター(地さんぽ) | 無料 | 健診後の意見聴取や長時間労働者の面接指導を、まず無料で相談したい会社。利用回数や日程には限りがある |
| 顧問契約(嘱託産業医に準じた契約) | 月額制 | 同じ医師に継続して相談したい会社。休職・復職、メンタルヘルス、ストレスチェックの面接指導まで任せたい会社 |
| スポット相談 | 1回ごと | 休職者の対応など、特定の案件だけ相談したい会社 |
| 健診機関の医師 | 健診機関による | 健診後の意見聴取だけを依頼したい会社 |
京都府内の地域産業保健センターの担当区域は、京都の地域産業保健センターの担当区域(早見表)にまとめています。社員が50人に近づいてきたら、選任義務が生じる前から同じ医師に相談しておくと、50人を超えたときにスムーズに産業医として選任できます。
うえまつ産業医事務所の顧問契約(月額20,000円・税別)は、従業員50人未満の会社向けです。健康診断後の措置、ストレスチェック、面接指導など法令上の業務を含み、臨時の相談・面談や交通費に追加費用はかかりません。1回だけのスポット相談(20,000円・税別)もご利用いただけます。
少人数の会社ほど「見えない危険」が残りやすい理由
従業員50人未満の事業場は、産業医や衛生委員会の義務がないぶん、安全や健康について話し合う場や担当者がないまま、日々の業務が進みがちです。その結果、次のような危険が見過ごされやすくなります。
- 健診結果の放置:要再検査・要治療の社員がそのまま働き続け、脳・心臓の病気などを発症する
- 長時間労働の常態化:人手が少なく、特定の人に仕事が集中する
- 慣れによる不安全な作業:脚立・フォークリフト・刃物などを、教育や手順書がないまま使っている
- 1人の休業の影響が大きい:1人が長く休むと業務が回らず、ほかの社員の負担が増える
お金をかけずにできる対策
少人数の会社でも、次のような取組は大きな費用をかけずに始められます。
- 担当者を決める:10人以上50人未満の事業場は、衛生推進者(業種によっては安全衛生推進者)の選任が必要です(安全衛生推進者・衛生推進者とは)
- 意見を聴く機会をつくる:朝礼や月例会議の数分を使って、ヒヤリハットや体調のことを話し合う(安全衛生懇談会とは)
- 健診後のフォローを仕組みにする:有所見者の一覧を作り、医師の意見を聴き、再検査の受診を確認する
- 無料の窓口を使う:地域産業保健センターでは、50人未満の事業場向けに、健康相談や健診結果についての医師の意見聴取などを無料で利用できます
- 整理・整頓と危険の見える化:通路の物を片付け、危ない場所に表示をする
また、規模にかかわらず、休業4日以上の労働災害が起きたときは遅滞なく労働者死傷病報告を提出する必要があり、健康診断の結果に異常の所見があった人については医師の意見を聴く必要があります。「うちは小さいから関係ない」と考えず、最低限の義務と、無理のない対策から始めることが大切です。
産業医を選任する義務がなくても、スポット契約や月額の顧問契約で医師に相談できる体制をつくっておくと、健診後の判断や休職・復職の場面で迷わずに済みます。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
50人未満の会社の健康管理を、産業医が継続して支援します。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
従業員50人未満でも産業医は必要ですか?
産業医の選任義務はありませんが、医師などに労働者の健康管理を行わせるよう努めることが求められています(労働安全衛生法第13条の2)。また、健康診断後の医師の意見聴取や、長時間労働者の医師による面接指導は、規模にかかわらず義務です。
50人未満の会社が無料で医師に相談する方法はありますか?
地域産業保健センター(地さんぽ)を利用すると、健康診断後の意見聴取や長時間労働者の面接指導などを無料で受けられます。利用できる回数や日程には限りがあります。
50人未満の会社で、健康診断後に医師の意見を聴く必要はありますか?
必要です。異常の所見があった労働者について、健康診断から3か月以内に医師の意見を聴き、健康診断個人票に記録します(労働安全衛生法第66条の4)。規模による例外はありません。
50人未満の会社もストレスチェックが義務になりますか?
2028年4月から、50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務になります。実施者となる医師などと、高ストレス者の面接指導を行う医師を確保しておく必要があります。
50人未満の会社が無料で医師に相談できるところはありますか?
各地の地域産業保健センター(産業保健総合支援センターの地域窓口)で、50人未満の事業場を対象に、医師による健康相談や、健康診断の結果についての意見聴取などを無料で利用できます。
まとめ
50人未満の会社でも、健康診断後の意見聴取や長時間労働者の面接指導など、医師が必要な義務があります。2028年4月にはストレスチェックも義務になります。地域産業保健センター、顧問契約、スポット相談などを組み合わせて、必要なときに相談できる医師を確保しておきましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 有機溶剤中毒予防規則(e-Gov法令検索)
- 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
産業医面談の基本:産業医面談とは|対象者と種類・流れ・話す内容・守秘義務/オンライン産業医とは|Web面談でできること・実地が必要なこと
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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