雇入れ時教育とは?2024年4月から全業種で8項目が必要に|パート・アルバイトも対象、教育内容と記録の残し方を産業医が解説

新しく社員やパート・アルバイトを雇ったときには、安全衛生教育(雇入れ時教育)を行う義務があります。2024年4月からは、これまで一部の業種で認められていた教育項目の省略ができなくなり、事務所や小売店なども含めて、すべての事業場で8項目の教育が必要になりました。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、雇入れ時教育の対象、8つの教育項目、進め方と記録のポイントを解説します。
結論:パート・アルバイトを含め、雇い入れたら全員に8項目の教育を行う
- 労働者を雇い入れたとき、または作業内容を変更したときは、遅滞なく安全衛生教育を行わなければなりません(労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条)。
- 正社員だけでなく、パート・アルバイト・有期契約の人も対象です。
- 2024年4月1日から、一部の業種に認められていた教育項目の省略規定が廃止され、すべての事業場で8項目を省略なく行う必要があります。
- 違反すると50万円以下の罰金の対象になります(労働安全衛生法第120条)。
教育が必要なとき
| 場面 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 雇入れ時 | 新たに労働者を雇い入れたとき(雇用形態を問わない) | 労働安全衛生法第59条第1項 |
| 作業内容の変更時 | 配置転換や新しい機械・化学物質を扱う作業への変更など | 同条第2項 |
| 特別教育 | フォークリフト(1トン未満)の運転、アーク溶接、研削といしの取替えなど、危険・有害な業務に就かせるとき | 同条第3項、労働安全衛生規則第36条 |
雇入れ時教育の8項目
| 教育項目(労働安全衛生規則第35条第1項) | 事務所・店舗での例 | |
|---|---|---|
| 1 | 機械等、原材料等の危険性・有害性とその取扱い方法 | カッター・脚立・台車、洗剤や消毒薬の扱い方 |
| 2 | 安全装置、有害物抑制装置、保護具の性能とその取扱い方法 | 手袋・マスク・安全靴の使い方 |
| 3 | 作業手順 | 荷物の運び方、レジや厨房での作業の手順 |
| 4 | 作業開始時の点検 | 機器や通路の始業前点検 |
| 5 | その業務で起こりうる疾病の原因と予防 | 腰痛、VDT作業による目や肩の疲れ、熱中症、感染症 |
| 6 | 整理、整頓、清潔の保持 | 通路に物を置かない、床の水ぬれをふく |
| 7 | 事故時などの応急措置と退避 | 救急箱・AEDの場所、避難経路、緊急連絡先 |
| 8 | その他、業務に関する安全・衛生のために必要な事項 | ハラスメントやメンタルヘルスの相談窓口、労災の届け方 |
以前は、事務所や金融業などの業種では1〜4号の教育を省略できましたが、2024年4月1日に省略規定が廃止されました。オフィスでも、転倒や腰痛、化学物質(消毒薬など)による労働災害は起きています。業種にかかわらず、8項目すべてについて、その人の仕事に合った内容で教育しましょう。
なお、十分な知識と技能があると認められる人(同じ仕事の経験者など)については、その項目の教育を省略できます(同条第2項)。
教育の進め方
- 業務ごとに、8項目にそった教育の資料とチェックリストを作る(職場の写真や実際の手順を入れると伝わりやすい)
- 入社日またはできるだけ早い時期に、勤務時間内に実施する
- 現場では、先輩社員が実際の作業を見せながら説明する
- 終わったら、本人に確認のサインをもらう
- 配置転換などで作業内容が変わったときにも、同じ手順で教育する
法律上、教育時間の決まりはありませんが、内容を理解できるだけの時間をとることが大切です。安全衛生教育は事業者の義務として行うものなので、労働時間として扱い、勤務時間内に行うのが原則です。
記録は残すべきか
特別教育には記録を3年間保存する義務がありますが(労働安全衛生規則第38条)、雇入れ時教育には記録の保存義務の規定はありません。それでも、記録は必ず残しておきましょう。労働災害が起きたときや労働基準監督署の調査で、教育を行ったことを示す根拠になります。日付、実施者、受講者、実施した項目、使った資料、本人の確認サインを残しておくと安心です。
教育の資料づくりで迷う項目の多くは、5号の「疾病の原因と予防」です。腰痛、熱中症、VDT作業、感染症、メンタルヘルスなどの内容は、産業医が職場に合わせて監修できます。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
雇入れ時教育や管理職向けの研修の内容、職場に合わせた健康障害の予防についても、産業医の立場からご相談に応じます。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
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- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
パートやアルバイトにも雇入れ時教育は必要ですか?
必要です。雇入れ時教育は、雇用形態を問わず、すべての労働者が対象です(労働安全衛生法第59条第1項)。短時間・短期間の雇用でも、従事する業務に合わせて教育を行います。
事務職だけの会社でも8項目すべて教育しなければいけませんか?
2024年4月1日に、一部の業種で認められていた1〜4号の省略規定が廃止されたため、事務所を含むすべての事業場で8項目を省略なく行う必要があります。ただし、十分な知識と技能がある人については、その項目を省略できます。
雇入れ時教育に時間の決まりはありますか?
法律上の時間の定めはありません。従事する業務に応じて、8項目を理解できるだけの時間をとります。教育は勤務時間内に行うのが原則です。
雇入れ時教育の記録は保存が必要ですか?
特別教育と違い、雇入れ時教育には記録の保存義務の規定はありません。ただし、実施した証拠として、日付・受講者・項目・資料などの記録を残しておくことをおすすめします。
まとめ
雇入れ時教育は、パート・アルバイトを含む全員が対象で、2024年4月からはすべての事業場で8項目を省略なく行う必要があります。業務に合った資料とチェックリストを用意し、勤務時間内に実施して、記録を残しておきましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 職場における熱中症予防情報(厚生労働省)
- 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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