産業医の職場巡視とは|頻度(毎月・2か月に1回の条件)とチェック項目、事務所の照度・温度・CO2の基準

産業医が月に一度、職場を見て回る「職場巡視」。何を見ているのか、どのくらいの頻度で必要なのか、会社は何を準備すればよいのか――人事・総務の方から意外とよく聞かれます。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、職場巡視の法的なルールと、実際に確認しているポイントを、事務所衛生基準規則の数値とあわせて解説します。
職場巡視とは:産業医が法律で義務づけられている仕事
労働安全衛生規則第15条は、産業医に対し、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法や衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じることを求めています。
| 頻度 | 根拠 | |
|---|---|---|
| 産業医 | 少なくとも毎月1回(条件を満たせば2か月に1回) | 安衛則第15条 |
| 衛生管理者 | 少なくとも毎週1回 | 安衛則第11条 |
2か月に1回にできる条件
産業医の巡視を2か月に1回にできるのは、事業者から毎月1回以上、次の情報の提供を受けていて、かつ事業者の同意を得ている場合に限られます(安衛則第15条)。
- 衛生管理者が行う巡視の結果
- そのほか労働者の健康障害の防止・健康の保持に必要な情報で、衛生委員会での調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
「料金が上がるから巡視しないでほしい」という運用は認められません。費用を抑えたい場合は、条件を整えて隔月訪問にするのが正しい方法です(産業医の隔月訪問の条件と費用)。なお、巡視はオンラインでは代替できず、実地で行う必要があります。
産業医は職場巡視で何を見ているか
筆者が巡視で確認しているのは、大きく「作業環境」「作業の方法」「安全・衛生の設備」「働く人の様子」の4つです。
| 見る場所・項目 | 確認していること |
|---|---|
| 照明・まぶしさ | 机上の明るさ、画面への映り込み、照明の点灯不良 |
| 温度・湿度・換気 | 暑すぎ・寒すぎ、乾燥、空気のよどみ、CO2のこもり |
| パソコン作業 | 画面の高さと距離、椅子の調整、長時間の連続作業 |
| 通路・床 | 段差、濡れ、荷物の置きっぱなし(転倒の原因) |
| 重量物・作業姿勢 | 持ち上げ方、中腰作業、台車の有無(腰痛の原因) |
| 有害物・保護具 | 有機溶剤・化学物質の保管と表示、局所排気装置、保護具の着用 |
| 休憩室・トイレ・救急用具 | 清潔さ、救急箱やAEDの場所と中身 |
| 働く人の様子 | 疲れた表情、極端な残業の気配、職場の雰囲気 |
事務所の環境基準(事務所衛生基準規則)
オフィスの環境は、事務所衛生基準規則に数値で基準が決まっています。巡視では、次の基準を目安に確認します。
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 照度 | 一般的な事務作業 300ルクス以上/付随的な事務作業 150ルクス以上 | 事務所則第10条 |
| 照明設備の点検 | 6か月以内ごとに1回 | 事務所則第10条 |
| 室温(空気調和設備がある場合) | 18度以上28度以下になるよう努める | 事務所則第5条 |
| 相対湿度(同上) | 40%以上70%以下になるよう努める | 事務所則第5条 |
| 二酸化炭素 | 1,000ppm以下(空気調和設備・機械換気設備から供給される空気) | 事務所則第5条 |
| 一酸化炭素 | 10ppm以下 | 事務所則第5条 |
| 気流 | 0.5メートル毎秒以下 | 事務所則第5条 |
| 気積 | 労働者1人あたり10立方メートル以上 | 事務所則第2条 |
会議室や窓のない部屋はCO2がこもりやすく、眠気や頭痛の原因になります。CO2モニターを置き、1,000ppmを超えたら換気する運用は、費用をかけずにできる効果的な対策です。
巡視のあと:指摘事項を衛生委員会で改善につなげる
- 産業医が巡視の結果と指摘事項を記録する(写真があるとわかりやすい)
- 衛生委員会で報告し、改善の担当者と期限を決める
- 次回の巡視で改善を確認する
巡視は「見て終わり」では意味がありません。指摘事項を衛生委員会の議題にし、改善までを追いかける仕組みが大切です。衛生委員会の運営は衛生委員会とはで解説しています。
会社が準備しておくとよいこと
- 巡視のルート(事務所・倉庫・作業場・休憩室など)と、案内する担当者を決めておく
- 前回の指摘事項と改善状況をまとめておく
- 衛生管理者の毎週の巡視結果を産業医に共有する(隔月訪問の条件にもなります)
- 新しい設備・化学物質・作業の変更があれば事前に伝える
うえまつ産業医事務所にご相談ください
うえまつ産業医事務所の嘱託産業医契約には、毎月(または条件を満たした場合は2か月に1回)の職場巡視と衛生委員会への出席が含まれます。訪問時間が延びても追加費用はかかりません。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
産業医の職場巡視はどのくらいの頻度で必要ですか?
少なくとも毎月1回です。衛生管理者の巡視結果などの情報が毎月産業医に提供され、事業者が同意している場合は、少なくとも2か月に1回にできます(労働安全衛生規則第15条)。
職場巡視をオンラインで行うことはできますか?
できません。産業医の職務の一部はオンラインで実施できますが、職場巡視は実地で行う必要があるとされています。
オフィスの照明は何ルクス必要ですか?
事務所衛生基準規則第10条で、一般的な事務作業は300ルクス以上、付随的な事務作業は150ルクス以上とされています。照明設備は6か月以内ごとに1回点検します。
オフィスの室温・湿度・CO2の基準は?
空気調和設備がある場合、室温18度以上28度以下、相対湿度40%以上70%以下になるよう努め、供給される空気のCO2は1,000ppm以下とされています(事務所衛生基準規則第5条)。
まとめ
産業医の職場巡視は、少なくとも毎月1回(条件を満たせば2か月に1回)、実地で行う法定の職務です。照度・温度・湿度・CO2などの基準や、転倒・腰痛・有害物のリスクを確認し、指摘事項を衛生委員会で改善につなげることで、はじめて意味のあるものになります。
職場巡視でよく見かける「何も書かれていない小分け容器」の表示のルールは、小分け容器のラベル表示(無料のラベル作成ツール付き)で解説しています。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
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この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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