衛生委員会とは|50人以上で設置義務、メンバー構成・付議事項12項目・毎月の開催と議事録3年保存・罰則を産業医が解説
衛生委員会とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設置が義務づけられている、働く人の健康障害の防止や健康の保持増進について労使で調査審議し、事業者に意見を述べるための会議です(労働安全衛生法第18条)。業種を問わず、毎月1回以上開催し、議事の概要を従業員に周知し、記録を3年間保存する必要があります。
この記事では、京都で嘱託産業医として毎月多くの衛生委員会に出席している筆者が、人事・総務の方に向けて、設置義務・メンバー・付議事項・開催と議事録のルールを、条文にもとづいて整理します。

1. 衛生委員会のポイント(早見表)
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設置が必要な事業場 | 常時50人以上の労働者を使用する事業場(業種を問わない) | 労働安全衛生法第18条、施行令第9条 |
| 数える単位 | 会社全体ではなく事業場(工場・支店・店舗など)ごと。パート・アルバイトも常態として使用していれば含む | ― |
| 目的 | 健康障害の防止・健康の保持増進の対策などを調査審議し、事業者に意見を述べる | 法第18条第1項 |
| 開催頻度 | 毎月1回以上 | 労働安全衛生規則第23条第1項 |
| 議事の周知 | 開催のたびに遅滞なく、掲示・書面・電子ファイルのいずれかで | 規則第23条第3項 |
| 記録の保存 | 委員会の意見と講じた措置、重要な議事を記録し3年間保存 | 規則第23条第4項 |
| 設置しなかった場合 | 50万円以下の罰金 | 法第120条 |
2. 設置義務:常時50人以上の事業場ごとに必要
衛生委員会は、業種にかかわらず、常時50人以上の労働者を使用する事業場で設置が必要です(労働安全衛生法施行令第9条)。安全委員会と違い、オフィスや店舗、医療・福祉など、すべての業種が対象です。
- 人数は会社全体ではなく、事業場(同じ場所にある拠点)ごとに数えます。
- パート・アルバイトや派遣労働者も、常態として使用していれば人数に含めます(パート・アルバイトの人数の数え方)。
- 50人以上になった事業場は、産業医と衛生管理者の選任(14日以内)とあわせて、衛生委員会を立ち上げます(産業医は何人から必要?社員が50人を超えたらやること)。
- 設置しなかった場合は、50万円以下の罰金の対象です(法第120条)。労働基準監督署の調査では、委員会の未設置・未開催や議事録がないことを指摘されることがあります(労基署の調査で産業医の未選任を指摘されたら)。
3. 委員会のメンバー(委員の構成)
| 委員 | 選び方 |
|---|---|
| 議長(1名) | 総括安全衛生管理者、または事業の実施を統括管理する者(工場長・支店長など)やこれに準ずる者から、事業者が指名 |
| 衛生管理者 | 衛生管理者の中から事業者が指名 |
| 産業医 | 産業医の中から事業者が指名 |
| 衛生に関し経験を有する労働者 | その事業場の労働者の中から事業者が指名 |
| (任意)作業環境測定士 | その事業場の労働者である作業環境測定士を指名できる |
議長以外の委員の半数は、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)の推薦にもとづいて指名しなければなりません(法第18条第4項で第17条第4項を準用)。「会社側だけで委員を決めている」ケースは、見直しが必要です。委員の人数に法律上の定めはなく、事業場の規模に合わせて決めます。
4. 何を話し合うか:法律で決まっている付議事項
衛生委員会で調査審議する事項は、法第18条第1項で4つ、そのうち「重要事項」の中身が労働安全衛生規則第22条で12項目示されています。
| 主な内容 | |
|---|---|
| 法第18条第1項 | ①健康障害を防止するための基本となる対策 ②健康の保持増進を図るための基本となる対策 ③労働災害の原因と再発防止対策(衛生に係るもの) ④そのほか健康障害の防止・健康の保持増進の重要事項 |
| 規則第22条(重要事項) | 1 衛生に関する規程の作成/2 リスクアセスメントとその結果にもとづく措置(衛生に係るもの)/3 安全衛生計画(衛生部分)の作成・実施・評価・改善/4 衛生教育の実施計画/5 有害性の調査とその対策/6 作業環境測定の結果と対策/7 健康診断・医師の診断などの結果と対策/8 健康の保持増進の実施計画/9 長時間労働による健康障害の防止対策/10 メンタルヘルス対策/11 化学物質(皮膚等障害化学物質など)に関する措置と医師の健康診断/12 行政機関から文書で受けた命令・指示・勧告・指導のうち健康障害の防止に関すること |
実務では、毎月の固定議題(前月の時間外労働の状況、休業者の状況、健康診断・ストレスチェックの進み具合、職場巡視の結果)に、季節のテーマを1つ加えると続けやすくなります。12か月分の議題の例は衛生委員会の議題例・12か月の年間カレンダーにまとめています。また、産業医は、労働者の健康を確保する観点から、衛生委員会に対して必要な調査審議を求めることができます(規則第23条第5項)。
5. 開催のルール:毎月1回以上、オンラインでも可
- 毎月1回以上開催します(規則第23条第1項)。2か月に1回などに減らすことはできません。
- 委員会の運営に必要な事項(定足数、議事の進め方など)は、委員会が定めます(規則第23条第2項)。産業医の出席を開催の条件にするかどうかも、委員会で決める事項とされています(昭和47年9月18日 基発第602号)。
- 委員会の開催にかかる時間は労働時間と解され、所定時間外に開いた場合は割増賃金の支払いが必要です(同通達)。
- テレビ会議などの情報通信機器を用いた開催も、留意事項を守れば認められています(令和2年8月27日 基発0827第1号、京都労働局「情報通信機器を用いた安全衛生委員会等の開催について」)。
嘱託産業医が毎月の委員会に出席できない月は、事前に資料を共有して意見をもらう、職場巡視の日に合わせて開催する、オンラインで参加してもらう、などの工夫ができます。産業医が委員会に出るときの役割は衛生管理者と産業医の違いもあわせてご覧ください。
6. 議事録と周知:3つの方法と3年保存
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 周知(毎回・遅滞なく) | ①作業場の見やすい場所への掲示・備え付け ②書面の交付 ③電子ファイルに記録し、労働者がいつでも確認できる機器を各作業場に置く、のいずれか |
| 記録(毎回) | ①委員会の意見と、それを踏まえて講じた措置の内容 ②そのほか議事で重要なもの |
| 保存 | 3年間 |
社内ポータルに議事概要を載せる方法も、従業員がいつでも見られる状態であれば③にあたります。議事録には、健康情報など個人が特定される内容を書かないよう注意しましょう。
7. 安全委員会・安全衛生委員会との違い
| 衛生委員会 | 安全委員会 | |
|---|---|---|
| 対象 | すべての業種で常時50人以上 | 一定の業種(製造業・建設業・運送業など)で、業種により常時50人以上または100人以上 |
| 主なテーマ | 健康障害の防止、健康の保持増進 | 労働災害(けがなど)の防止 |
| 両方が必要な場合 | まとめて「安全衛生委員会」として1つで開催できる(法第19条) |
安全委員会が必要な業種と人数、安全衛生委員会にまとめるときの委員の構成は、安全委員会とはで解説しています。
8. 50人未満の事業場は「意見を聴く機会」を設ける
衛生委員会の設置義務がない事業場でも、安全や衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けなければなりません(規則第23条の2)。安全衛生委員会、労働者の常会、職場懇談会などがこれにあたるとされています。進め方は安全衛生懇談会とは(50人未満の意見を聴く機会)で紹介しています。
9. 立ち上げ・見直しのチェックリスト
- 事業場ごとの人数を確認し、50人以上の事業場を洗い出した
- 議長・衛生管理者・産業医・労働者側の委員を指名した(労働者側の半数は過半数組合・過半数代表者の推薦)
- 委員会の規程(運営ルール)を作り、開催日を年間で決めた
- 毎月の固定議題と、年間の議題計画を作った
- 議事概要の周知方法(掲示・書面・社内ポータル)を決めた
- 記録を3年間保存する場所を決めた
- 産業医が出席できない月の対応(事前の意見・オンライン参加)を決めた
議事の概要を掲示するときは、記入して印刷できる「衛生委員会 議事の概要」のひな形を使えます。
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当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「衛生委員会で何を議題にすればよいか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
衛生委員会・安全衛生体制のコラム
よくある質問
衛生委員会は何人以上で設置義務がありますか?
業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設置が必要です(労働安全衛生法第18条、施行令第9条)。パート・アルバイトも常態として使用していれば人数に含めます。
衛生委員会はどのくらいの頻度で開催しますか?
毎月1回以上です(労働安全衛生規則第23条第1項)。開催のたびに議事の概要を従業員に周知し、記録を3年間保存します。
衛生委員会のメンバーはどう決めますか?
議長(事業を統括管理する者など)、衛生管理者、産業医、衛生に関し経験を有する労働者を、事業者が指名します。議長以外の委員の半数は、過半数労働組合または過半数代表者の推薦にもとづいて指名します。
衛生委員会をオンラインで開いてもよいですか?
はい。令和2年8月27日の通達(基発0827第1号)で、留意事項を守れば情報通信機器を用いた開催が認められています。
衛生委員会の時間に残業代は必要ですか?
委員会の開催に要する時間は労働時間と解されており、所定時間外に開催した場合は割増賃金の支払いが必要です(昭和47年9月18日 基発第602号)。
衛生委員会を設置しないと罰則はありますか?
設置義務に違反した場合は50万円以下の罰金の対象です(労働安全衛生法第120条)。
参考:公的機関の資料
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)(第17条〜第19条、第120条)
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索)(第9条)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)(第22条〜第23条の2)
- 厚生労働省「安全委員会、衛生委員会について教えてください」
- 職場のあんぜんサイト「衛生委員会」
- 京都労働局「情報通信機器を用いた安全衛生委員会等の開催について」
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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