安全衛生懇談会とは|50人未満の事業場の「関係労働者の意見を聴く機会」(安衛則第23条の2)の進め方と12か月の議題例

安全衛生懇談会とは、衛生委員会や安全委員会を設置する義務がない事業場(主に従業員50人未満)で、安全や衛生について従業員の意見を聴くために開く話し合いの場のことです。労働安全衛生規則第23条の2は、委員会を設けていない事業者に、関係労働者の意見を聴くための機会を設けることを求めています。
「50人未満だから何もしなくてよい」と思われがちですが、実は法令上の求めがあります。この記事では、京都で小規模事業場の顧問産業医もしている筆者が、法令の位置づけと、無理なく続けられる進め方・議題例を紹介します。

1. 法令の位置づけ:労働安全衛生規則第23条の2
労働安全衛生規則第23条の2は、「委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない」と定めています。
行政の通達(昭和47年9月18日 基発第601号の1)では、この「意見を聴くための機会を設ける」とは、安全衛生の委員会、労働者の常会、職場懇談会等、労働者の意見を聴くための措置を講ずることをいうとされています。「安全衛生懇談会」は、この職場懇談会の一つの形です。
| 衛生委員会(50人以上) | 安全衛生懇談会など(委員会のない事業場) | |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働安全衛生法第18条 | 労働安全衛生規則第23条の2 |
| 開催頻度 | 毎月1回以上 | 法令上の頻度の定めはない |
| メンバー | 議長・衛生管理者・産業医・労働者(半数は推薦) | 定めはない。関係する労働者の意見を聴ける形で |
| 議事の周知・記録 | 周知と3年保存が義務 | 法令上の定めはない(記録を残すのがおすすめ) |
2. 既存の会議を活用してよい
厚生労働省が令和7年10月にまとめた資料では、労働局や労働基準監督署へのヒアリングで得られた活用例として、次のような形が紹介されています(厚生労働省「安衛則第23条の2に基づく関係労働者の意見を聴く機会の活用について」(令和7年10月))。
- 業務ミーティングの活用:定例のミーティングで、同業種の労働災害の事例を共有し、従業員から意見を聴く
- 朝礼の活用:朝礼で、危険予知(KY)やヒヤリハット活動の結果を伝える
- ほかの委員会との併催:環境・消防・交通安全などの委員会とあわせて開き、安全衛生や作業環境の改善を話し合う
- 運送業の安全会議:月1回の運行管理の安全会議で、災害事例の共有、腰痛予防、新入社員への健康面の指導を話し合う

新しく会議を増やさなくても、すでにある朝礼や月例会議の中に「安全衛生の時間」を5〜10分つくるだけでも始められます。
3. 進め方のコツ
- 頻度を決める:法令上の定めはありませんが、月1回か、少なくとも季節ごと(年4回)に開くと続けやすくなります
- 参加者を決める:経営者・管理者だけでなく、現場の従業員に入ってもらいます。10人以上50人未満の事業場では、衛生推進者・安全衛生推進者が進行役になると自然です(安全衛生推進者・衛生推進者とは)
- 議題を固定と季節に分ける:毎回の固定議題(ヒヤリハット、長時間労働、体調不良者)+季節のテーマ1つ
- 出た意見と対応を記録する:法令上の保存義務はありませんが、「いつ・誰から・どんな意見が出て・どう対応したか」を残すと、労働基準監督署の調査や、従業員への説明に役立ちます
- 結果を従業員に伝える:掲示や社内チャットで共有すると、意見が出やすくなります
4. 議題の例(12か月)
| 月 | 議題の例 |
|---|---|
| 4月 | 新入社員の安全衛生教育、健康診断の予定 |
| 5月 | 熱中症対策の準備(WBGTの確認、水分・休憩のルール) |
| 6月 | 健康診断の結果と再検査の受診状況 |
| 7月 | 熱中症対策の点検、夏季の長時間労働 |
| 8月 | 夏季休暇前後の体調管理、腰痛予防 |
| 9月 | 防災・救急の備え(AED、救急箱の点検) |
| 10月 | メンタルヘルス(相談窓口の周知、ストレスチェックの準備) |
| 11月 | インフルエンザなど感染症の出勤ルール |
| 12月 | 年末の繁忙期の労働時間、交通安全 |
| 1月 | 寒さ・乾燥対策、転倒防止 |
| 2月 | 花粉症、職場の受動喫煙防止 |
| 3月 | 1年間のふり返りと来年度の計画 |
50人以上の事業場の衛生委員会の議題例は、衛生委員会の議題例・12か月の年間カレンダーにまとめています。
5. 50人未満でも産業医や無料の窓口を使える
- 50人未満の事業場は、地域産業保健センターで、医師による健康相談や、健康診断の結果についての意見聴取などを無料で利用できます(京都なら京都地域産業保健センター(京都産業保健総合支援センター))。
- ストレスチェックは、2028年(令和10年)4月1日から50人未満の事業場でも実施が義務になります。実施方法を決めるときにも、こうした意見を聴く機会を活用できます(ストレスチェック50人未満の義務化)。
- 従業員50人未満でも医師の意見が必要になる場面は従業員50人未満でも医師が必要な場面7つで紹介しています。
衛生推進者の氏名など、50人未満でも掲示が必要なものは職場に掲示・周知が義務のもの一覧で確認できます。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
従業員50人未満の事業場には、月額20,000円(税別)の顧問契約で、安全衛生懇談会の議題の提案や、健康診断後の意見、休職・復職の相談に対応しています。紹介会社の中間手数料がかからない直接契約と、ストレスチェックや健康管理のWeb化(DX)によって、料金をできるだけ抑えています。
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当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「社員が50人を超えたが、何から始めればよいか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
衛生委員会・安全衛生体制のコラム
よくある質問
安全衛生懇談会は法律で義務づけられていますか?
「安全衛生懇談会」という名前の会議が義務づけられているわけではありませんが、衛生委員会などを設けていない事業者は、安全や衛生について関係労働者の意見を聴くための機会を設けなければなりません(労働安全衛生規則第23条の2)。通達では、安全衛生の委員会、労働者の常会、職場懇談会などがこれにあたるとされています。
安全衛生懇談会はどのくらいの頻度で開けばよいですか?
法令上の頻度の定めはありません。月1回、または少なくとも季節ごとに開くと続けやすく、熱中症や感染症など季節のテーマも扱いやすくなります。
朝礼や業務ミーティングで代わりにしてもよいですか?
厚生労働省の資料でも、業務ミーティングや朝礼、ほかの委員会との併催で意見を聴いている例が紹介されています。安全衛生について従業員の意見を聴き、対応する場になっていれば、既存の会議を活用できます。
議事録は必要ですか?
衛生委員会のような周知や3年間保存の義務はありませんが、出た意見と会社の対応を記録しておくと、従業員への説明や労働基準監督署の調査のときに役立ちます。
参考:公的機関の資料
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)(第23条の2)
- 厚生労働省「安衛則第23条の2に基づく関係労働者の意見を聴く機会の活用について」(令和7年10月)
- 京都地域産業保健センター(京都産業保健総合支援センター)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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