小分け容器のラベル表示|労働安全衛生規則第33条の2の義務、書く内容・対象外・掲示や一覧表でもよい場合と、無料のラベル作成ツール

小分け容器のラベル表示|労働安全衛生規則第33条の2の義務、書く内容・対象外・掲示や一覧表でもよい場合と、無料のラベル作成ツール(うえまつ産業医事務所)
保管のために小分けした容器には、「名称」と「人体に及ぼす作用」を明示します。

職場巡視をしていると、スプレーボトルや洗浄びん、一斗缶から移した缶などの小分け容器に、何も書かれていない場面をよく見かけます。「中身は担当者が分かっているから大丈夫」と言われることも多いのですが、担当者が休んだ日や、別の部署の人が使うときに、中身を取り違える原因になります。

2023年(令和5年)4月から、ラベル表示の対象となる化学物質を別の容器に移して保管するときは、「名称」と「人体に及ぼす作用」を明示することが義務になっています(労働安全衛生規則第33条の2)。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、小分け容器の表示のルールを整理し、記事の中ですぐに使える無料のラベル作成ツールをご用意しました。

この記事のポイント
・保管のために別の容器へ移したら、「名称」と「人体に及ぼす作用」を明示する(2023年4月から義務)
・方法はラベルのほか、使用場所への掲示や一覧表の備え付けでもよい
・作業中に一時的に小分けした容器や、作業場所へ運ぶための容器は対象外。ただし取り違え防止のため名称だけでも書くのがおすすめ
・ラベル作成ツールで、SDSを見ながら入力すればA4にまとめて印刷できる

1. 小分け容器の表示は2023年4月から義務

労働安全衛生規則第33条の2では、ラベル表示の対象となる化学物質を容器に入れたり包装したりして保管するときは、その物の名称と人体に及ぼす作用を、容器への表示や文書の交付などの方法で、取り扱う人に明示しなければならないとされています。メーカーのラベルが貼られた元の容器のまま保管する場合は、改めて表示する必要はありません。

図解:小分け容器に表示が必要かを3つの質問でチェック。質問1 ラベル表示の対象物か(SDSの15項を確認)、いいえなら義務の対象外。質問2 元のラベル付き容器のまま保管か、はいなら改めての表示は不要。質問3 保管のために移し替えたか、いいえ(作業中の一時的な小分け・運搬用)なら義務の対象外。はいなら名称と人体に及ぼす作用を明示する。方法はラベル、使用場所への掲示、一覧表の備え付け。
項目内容
根拠労働安全衛生規則第33条の2(2023年4月1日施行)
対象になる場面ラベル表示の対象物を、別の容器に移し替えて保管するとき/自社で製造した対象物を容器に入れて保管するとき
明示すること名称と、人体に及ぼす作用
明示の方法容器へのラベル表示、文書の交付、使用場所への掲示、一覧表の備え付けなど(次の節で説明)
対象外元のラベルが付いた容器のまま保管するとき/作業中に一時的に小分けした容器/作業場所へ運ぶために移し替えた容器
小分け容器の表示のルール(労働安全衛生規則第33条の2と施行通達をもとに作成)

この規定は、保管した人と、あとでそれを使う人が違う場合に、危険性や有害性の情報をきちんと伝えることが主な目的です(施行通達(令和4年5月31日 基発0531第9号))。

対象の化学物質は大きく増えている

ラベル表示の対象物質は、2024年4月から段階的に大きく増えています。以前は対象外だった洗浄剤や塗料、接着剤の成分が、今は対象になっていることがあります。「うちの薬品は対象ではない」と思い込まず、SDS(安全データシート)の「15. 適用法令」の欄や、職場のあんぜんサイト(厚生労働省)で確認しましょう。化学物質の管理の全体像は化学物質の自律的管理で解説しています。

4コマ漫画:工場の薬品棚で、メーくんが何も書かれていないスプレーボトルを手に「この中身は何ですか?」と聞くと、班長は「たぶん洗浄剤かな」と答える。メーくんは「保管するなら名称と人体への作用の表示が必要です」と説明し、容器が多くて貼りきれないと困る班長に「一覧表の掲示でも大丈夫です」と伝える。最後に班長はツールで印刷したラベルを容器に貼り、メーくんは「SDSを見て書き写しましょう」とすすめる。

2. 書く内容は「名称」と「人体に及ぼす作用」

書く内容どこを見て書くかポイント
名称元の容器のラベル、SDSの「1. 化学品及び会社情報」の製品名元の容器と同じ名前にすると、SDSとすぐに照らし合わせられる
人体に及ぼす作用SDSの「2. 危険有害性の要約」の「危険有害性情報」「強い眼刺激」「眠気又はめまいのおそれ」などの文言をそのまま書き写す
(あるとよい)絵表示・注意喚起語SDSの「2. 危険有害性の要約」義務ではないが、ひと目で危険が伝わる
(あるとよい)小分けした日・人―古いものの見分けや、問い合わせ先が分かる
小分け容器のラベルに書く内容

法令で求められているのは「名称」と「人体に及ぼす作用」の2つです。メーカーのラベルのように、注意喚起語や絵表示、会社の連絡先まですべてそろえる必要はありません。ただし、絵表示があると、文字を読まなくても危険が伝わるので、付けておくことをおすすめします。

3. ラベル以外の方法でもよい

施行通達では、容器への表示や文書の交付のほかに、次の方法でも明示できるとされています。

  • 使用場所への掲示
  • 必要な事項を書いた一覧表の備え付け
  • 記録媒体に記録して、内容をいつでも確認できる機器を置く
  • 作業手順書や作業指示書で伝える

小さな容器がたくさんあってラベルを貼りにくい場合は、容器には名称だけを書き、「名称と人体に及ぼす作用」の一覧表を棚の近くに掲示する、という組み合わせが現実的です。下のツールでは、ラベルと掲示用の一覧表の両方を作れます。

4. 対象外になる場合と、それでも書いておきたい理由

施行通達では、この規定は、作業中に一時的に小分けした容器や、作業場所へ運ぶために移し替えた容器にまで適用されるものではない、とされています。その場で自分が使い切る容器まで、すべてにラベルを貼ることが義務になっているわけではありません。

それでも、筆者は職場巡視のときに「名称だけでも書いておきましょう」とお伝えしています。一時的のつもりで置いた容器が、そのまま棚に残り、別の人が使うことがよくあるからです。特に、飲料用のペットボトルへの小分けは避けてください。厚生労働省も、殺虫剤を茶のペットボトルに小分けして配り、誤って飲む事故が起きた事例を受けて、注意を呼びかけています(2011年)。

5. 職場巡視でよく見かける小分け容器

  • 消毒用アルコールや洗浄剤を移したスプレーボトルに、何も書かれていない
  • マジックで名前だけ書かれているが、溶剤で消えかけて読めない
  • 一斗缶から小さな缶に移した塗料・シンナーに、元の製品名が分からない
  • 元の容器を捨ててしまい、SDSも見つからない
  • 飲料用のペットボトルやコップに薬品が入っている

職場巡視では、こうした容器を見つけたら、その場で中身を確認し、表示の方法を一緒に考えます。産業医の職場巡視で何を見ているかは産業医の職場巡視とはで紹介しています。

6. 無料の小分け容器ラベル作成ツール

SDSを手元に用意して、上から順に入力してください。入力した内容はお使いの端末の中だけで使われ、どこにも送信されません。

  1. 名称を入力する(元の容器やSDSの製品名と同じ書き方に)
  2. 人体に及ぼす作用を一覧から選ぶ。一覧にない文言は、SDSの「危険有害性情報」から書き写す
  3. 必要に応じて絵表示・注意喚起語・取扱い上の注意・小分けした日を入れる
  4. 印刷サイズ(大・中・小)を選んで「印刷する」。画像(PNG)で保存して、ラベルプリンターで使うこともできる

小分け容器ラベル作成ツール(無料・登録不要)

SDSを見ながら入力すると、プレビュー欄(スマートフォンでは入力欄の下)にラベルができます。「印刷する」でA4の用紙に並べて印刷できます。入力した内容はこの端末の中だけで使い、送信されません。

1. 名称(必須)

元の容器のラベルやSDSの「製品名」と同じ書き方にすると、取り違えを防げます。

2. 人体に及ぼす作用(必須)

SDSの「2. 危険有害性の要約」にある「危険有害性情報」の文言を選ぶか、下の欄にそのまま書き写してください。

3. 絵表示と注意喚起語(あれば)
4. そのほか(任意)
プレビュー

印刷画面で「余白:標準」「倍率:100%」を選ぶと、きれいに並びます。ラベル用紙やテープで容器に貼ってください。

掲示用の一覧表(ラベルを貼りにくい容器が多いとき)

いま入力している内容を一覧に追加できます。一覧表を使用場所に掲示する方法でも、名称と人体に及ぼす作用を伝えられます。

※このツールは、SDSに書かれた内容を見やすく書き写すためのものです。入力する内容は、必ず最新のSDSで確かめてください。

7. ラベルを長持ちさせ、管理を続けるコツ

  • 溶剤や水がかかる容器には、印刷したラベルの上から透明テープを貼るか、ラミネートしてから貼る
  • 容器の大きさに合わせてサイズを選ぶ。小さすぎて読めない場合は、名称だけを容器に書き、一覧表を掲示する
  • SDSのファイルを置いている場所と、ラベルの名称をそろえておく
  • 小分けした日を書いておき、古いものは定期的に処分する
  • 化学物質管理者(2024年4月から選任が義務)が、ラベル表示やSDSの管理の担当として、定期的に確認する

化学物質を扱う業務では、物質によっては特殊健康診断が必要になることもあります(特定化学物質健康診断/有機溶剤健康診断)。作業場の空気中の濃度を測る作業環境測定とはもあわせて確認しておきましょう。

小分け容器の表示のほかにも、職場で掲示・周知が義務のものは一覧(記入式のひな形付き)にまとめています。

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化学物質を扱う工場・作業場の職場巡視で、小分け容器の表示やSDSの管理、保護具の使い方まで具体的に助言しています。紹介会社の中間手数料がかからない直接契約と、ストレスチェックや健康管理のWeb化(DX)によって、料金をできるだけ抑えています。

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よくある質問

小分け容器にラベルを貼る義務はありますか?

ラベル表示の対象となる化学物質を、保管のために別の容器へ移し替えた場合は、その容器の中身の「名称」と「人体に及ぼす作用」を明示することが、2023年4月から義務になっています(労働安全衛生規則第33条の2)。方法はラベルに限らず、掲示や一覧表の備え付けでもかまいません。

その場で使い切る小分け容器にもラベルが必要ですか?

施行通達では、作業中に一時的に小分けした容器や、作業場所へ運ぶために移し替えた容器にまでは適用されないとされています。ただし、置いたままになって別の人が使うこともあるため、名称だけでも書いておくことをおすすめします。

小分け容器のラベルには何を書けばよいですか?

法令で求められているのは「名称」と「人体に及ぼす作用」です。人体に及ぼす作用は、SDSの「2. 危険有害性の要約」にある危険有害性情報の文言を書き写します。絵表示や小分けした日も書いておくと、より伝わりやすくなります。

ラベルを貼る代わりに一覧表を掲示してもよいですか?

はい。施行通達では、使用場所への掲示、必要事項を記載した一覧表の備え付け、作業手順書や作業指示書で伝える方法なども認められています。容器が小さくラベルを貼りにくい場合は、容器に名称を書き、一覧表を掲示する組み合わせが現実的です。

使っている薬品がラベル表示の対象か、どう調べればよいですか?

SDSの「15. 適用法令」の欄で、労働安全衛生法の表示対象(名称等を表示すべき危険物及び有害物)に当たるかを確認できます。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」でも調べられます。対象物質は2024年4月から段階的に増えているので、以前は対象外だった製品も確認し直しましょう。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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