化学物質の自律的管理とは|化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任、ばく露の最小化、リスクアセスメント対象物健康診断を産業医が解説

化学物質の自律的管理とは|化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任、ばく露の最小化、リスクアセスメント対象物健康診断を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
リスクアセスメント対象物を扱う事業場は、規模や業種にかかわらず対応が必要です。

化学物質の規制は2024年4月に本格的に切り替わり、決められた物質だけを個別の規則で管理する方式から、会社がリスクを評価して自ら対策を決める自律的管理に移りました。この記事では、京都で製造業の特殊健康診断も担当している嘱託産業医の筆者が、化学物質を扱う会社がやるべきことを、労働安全衛生規則の条文にもとづいて整理します。

結論:リスクアセスメント対象物を扱うなら、規模や業種にかかわらず対応が必要

  • リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う事業場は、規模や業種にかかわらず化学物質管理者を選任します(労働安全衛生規則第12条の5)。
  • リスクアセスメントの結果にもとづき、労働者がばく露される程度を最小限度にします。濃度基準値が定められた物質は、屋内作業場で濃度基準値以下にします(同規則第577条の2)。
  • 保護具を使用させるときは保護具着用管理責任者を選任し、皮膚等障害化学物質を扱う業務では不浸透性の保護具などを使用させます。
  • リスクアセスメントの結果にもとづき、必要があればリスクアセスメント対象物健康診断を行います。

会社がやること一覧

やること内容根拠
化学物質管理者の選任リスクアセスメントの実施、ラベル・SDSの確認、記録の作成・保存などを管理させる。製造する事業場は専門的講習の修了者から選ぶ労働安全衛生規則第12条の5
保護具着用管理責任者の選任保護具を使用させるときに、選択・使用・保守管理を管理させる(選任すべき事由が生じてから14日以内)同規則第12条の6
リスクアセスメントと記録対象物を新たに使うときなどにリスクアセスメントを行い、結果を記録して保存し、社員に周知する同規則第34条の2の7・第34条の2の8
ばく露の最小化・濃度基準値代替物、密閉、換気、作業方法の改善、呼吸用保護具などでばく露を最小限にする。濃度基準値の物質は基準値以下に同規則第577条の2第1項・第2項
皮膚等障害化学物質への対策皮膚や眼に障害を与える物などを扱う業務で、保護眼鏡、不浸透性の保護衣・保護手袋などを使用させる同規則第594条の2
リスクアセスメント対象物健康診断リスクアセスメントの結果、必要と認めるとき、または濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときに行う同規則第577条の2第3項・第4項
同種のがんの多発の把握1年以内に2人以上が同種のがんにかかったことを把握したら、業務起因性について医師の意見を聴き、疑われる場合は労働局に報告する同規則第97条の2
化学物質の自律的管理で会社がやること

リスクアセスメント対象物健康診断のポイント

  • 実施の判断:リスクアセスメントの結果にもとづき、関係する社員の意見を聴いて、必要があると認めるときに行います。濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに行います。
  • 項目:医師または歯科医師が必要と認める項目です。
  • 記録:個人票を作成し5年間保存します。がん原性物質の場合は30年間です。
  • 事後措置:異常の所見がある人について、3か月以内に医師の意見を聴き、必要な措置を講じます。

有機溶剤や特定化学物質など、従来の特別則にもとづく特殊健康診断は引き続き必要です(特殊健康診断とは(対象業務・頻度・報告))。

産業医と衛生委員会の役割

  • 職場巡視で、化学物質の保管・表示、換気、保護具の使用状況を確認する(産業医の職場巡視とチェック項目)
  • リスクアセスメント対象物健康診断の要否と項目について意見を述べる
  • 衛生委員会で、リスクアセスメントの結果やばく露を減らす対策を審議する(衛生委員会の議題例)
  • 雇入れ時教育で、取り扱う化学物質の危険性と保護具の使い方を教える(雇入れ時教育)

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うえまつ産業医事務所では、製造業の職場巡視と特殊健康診断の就業判定、リスクアセスメント対象物健康診断の要否についての意見、衛生委員会での化学物質管理の審議を、毎月定額の範囲でお手伝いします。

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よくある質問

化学物質管理者はどんな会社が選任しますか?

リスクアセスメント対象物を製造し、または取り扱う事業場は、規模や業種にかかわらず化学物質管理者を選任します(労働安全衛生規則第12条の5)。製造する事業場では、専門的な講習を修了した人などから選任します。

リスクアセスメント対象物健康診断は必ず行うものですか?

必ずではありません。リスクアセスメントの結果にもとづき、関係する社員の意見を聴いて必要があると認めるときに行います。濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに行います。

リスクアセスメント対象物健康診断の記録は何年保存しますか?

個人票を5年間保存します。がん原性物質の場合は30年間です(労働安全衛生規則第577条の2第5項)。

従来の特殊健康診断は不要になりましたか?

いいえ。有機溶剤中毒予防規則や特定化学物質障害予防規則などにもとづく特殊健康診断は、引き続き必要です。

まとめ

化学物質の自律的管理では、リスクアセスメント対象物を扱う事業場が、化学物質管理者を選任し、リスクアセスメントにもとづいてばく露を最小限にし、必要に応じて健康診断を行います。産業医の職場巡視や衛生委員会も活用して、記録を残しながら進めましょう。

事業場の中で化学物質を別の容器に移して保管するときの表示(労働安全衛生規則第33条の2)は、小分け容器のラベル表示(無料のラベル作成ツール付き)で解説しています。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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