職場の受動喫煙対策|事務所は原則屋内禁煙、喫煙専用室の基準(気流0.2m/s)、20歳未満の立入禁止、病院は敷地内禁煙を産業医が解説

職場の受動喫煙対策|事務所は原則屋内禁煙、喫煙専用室の基準(気流0.2m/s)、20歳未満の立入禁止、病院は敷地内禁煙を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
事務所や工場は原則屋内禁煙です。屋内で喫煙できるのは基準を満たした喫煙専用室だけです。

「事務所の一角に喫煙コーナーがあるが、このままでいい?」「喫煙室を作るときの基準は?」「20歳未満のアルバイトに喫煙室の掃除をさせてもいい?」。総務の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、健康増進法と労働安全衛生法にもとづく職場の受動喫煙対策(施設の区分、喫煙専用室の基準、20歳未満の立入禁止、会社が決めておくこと)を解説します。

結論:会社の事務所や工場は原則屋内禁煙。喫煙できるのは基準を満たす喫煙専用室だけ

  • 改正健康増進法により、2020年4月から(学校・病院などの第一種施設は2019年7月から)、多数の人が利用する施設は原則として屋内禁煙になりました。一般の事務所や工場は「第二種施設」にあたります。
  • 第二種施設で屋内で喫煙できるのは、技術的基準を満たした喫煙専用室(加熱式たばこ専用の喫煙室を含む)だけです(健康増進法第29条・第33条)。
  • 喫煙専用室には標識を掲示し、20歳未満の人は従業員であっても立ち入らせてはいけません(同法第33条第5項)。
  • 事業者には、労働者の受動喫煙を防ぐため、実情に応じた適切な措置を講じる努力義務があります(労働安全衛生法第68条の2)。
4コマ漫画「喫煙室の掃除お願いできる?」:アルバイトに喫煙室の掃除を頼もうとする総務課長を、メーくんが止め、20歳未満は掃除のためでも喫煙専用室に立入禁止なので担当を決め直し、標識も確認するよう伝える

施設の区分と喫煙のルール

職場のたばこのルールの図解:①病院・学校など(第一種施設)は敷地内禁煙、②事務所・工場など(第二種施設)は原則屋内禁煙で喫煙専用室を設けられる、③喫煙目的の店は喫煙目的室。喫煙専用室の基準は出入口の気流毎秒0.2m以上、壁と天井で区画、屋外に排気、20歳未満は立入禁止
区分主な施設喫煙のルール
第一種施設学校、病院・診療所、児童福祉施設、行政機関の庁舎など敷地内禁煙。屋外で、受動喫煙を防ぐ措置をとった「特定屋外喫煙場所」を設けることはできる
第二種施設事務所、工場、飲食店、ホテル、商業施設など(第一種施設・喫煙目的施設以外)原則屋内禁煙。基準を満たす喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室を設けることはできる
喫煙目的施設喫煙を主な目的とする施設(喫煙を目的とするバーなど)喫煙目的室を設けることができる
健康増進法による施設の区分と喫煙のルール(第28条・第29条)

病院やクリニックは第一種施設なので、建物の中に喫煙室を設けることはできません。産業医が担当する医療機関の職員の喫煙場所は、特定屋外喫煙場所の要件(区画、標識、通常立ち入らない場所)を満たしているかを確認しましょう。

喫煙専用室の技術的基準

基準内容
気流出入口で、室外から室内に流入する空気の気流が毎秒0.2メートル以上
区画たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁・天井などで区画されている
排気たばこの煙が屋外または外部の場所に排気されている
標識出入口の見やすい場所に、喫煙専用室であることと、20歳未満の立入禁止を記載した標識を掲示する
喫煙専用室の技術的基準と標識

喫煙専用室では飲食などはできません(加熱式たばこ専用喫煙室では飲食も可能です)。設置後も、気流や排気の状態を定期的に確認し、基準に合うように維持しなければなりません(健康増進法第33条第4項)。

20歳未満の従業員の扱い

喫煙専用室には、20歳未満の人を立ち入らせてはいけません。お客さまだけでなく従業員も対象で、喫煙専用室の清掃や設備の点検のために立ち入らせることもできません。20歳未満のアルバイトがいる職場では、清掃の担当を決めておきましょう。

会社が決めておくこと

  • 喫煙場所(喫煙専用室または屋外)と、それ以外は禁煙であることを就業規則や社内ルールで明確にする(就業規則に入れておきたい健康管理の規定)
  • 喫煙専用室を設ける場合は、技術的基準を満たしているか、標識が掲示されているかを確認する
  • 屋外の喫煙場所は、出入口や窓、通路の近くを避け、煙が建物内に入らないようにする
  • 衛生委員会で受動喫煙対策と禁煙支援を審議する(衛生委員会の議題例)
  • 禁煙を希望する社員には、禁煙外来や禁煙補助薬などの情報を提供する

喫煙禁止場所での喫煙や、基準に合わない喫煙室の設置などは、都道府県知事による指導・勧告・命令の対象となり、命令に違反すると過料の対象になります。

産業医が関わること

  • 職場巡視で、喫煙場所の位置、喫煙専用室の標識と扉の開閉状況、煙のにおいの漏れを確認する(産業医の職場巡視)
  • 妊娠中の社員や持病のある社員が受動喫煙を受けないよう、配置や動線について助言する
  • 健康診断の結果や面談の機会に、禁煙を希望する社員を支援する

加熱式たばこ・電子たばこはどう扱う?

改正健康増進法では、加熱式たばこも「たばこ」として規制の対象です。屋内で吸える場所は、喫煙専用室のほか、加熱式たばこ専用喫煙室(経過措置として設けられたもので、室内で飲食をしながら加熱式たばこを吸うことができます)に限られます。どちらの喫煙室にも、20歳未満の人は立ち入らせることができません。

紙巻たばこ加熱式たばこニコチンを含まない電子たばこ
健康増進法の規制対象対象(指定たばこ)対象外
屋内で吸える場所喫煙専用室のみ喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室法令上の定めはない(社内ルールで決める)

ニコチンを含まない電子たばこは法律の対象外ですが、周りの人には区別がつきにくく、蒸気やにおいを不快に感じる人もいます。職場では、加熱式たばこ・電子たばこも紙巻たばこと同じルールで扱うと決めておくと、トラブルを防げます。また、労働安全衛生法第68条の2は、事業者に、職場の受動喫煙を防止するための措置を講じる努力義務を定めています。

喫煙率を下げる会社の取組(禁煙支援)

受動喫煙の対策は「吸う場所の管理」ですが、社員の健康を守るうえでは、たばこをやめたい人を支える取組もあわせて進めると効果的です。会社として、次のようなことから始められます。

  • 現状を知る:健康診断の問診票から喫煙率を集計し、衛生委員会で共有する
  • やめたい人を支える:禁煙外来(一定の条件で健康保険が使えます)や、加入している健康保険組合の禁煙支援プログラムを案内する
  • 職場のルールを整える:就業時間中の禁煙や、喫煙所の段階的な縮小などを、労使で話し合って決める
  • 相談しやすくする:健診後の保健指導や産業医面談の機会に、禁煙について相談できることを伝える

喫煙は本人の選択でもあるため、喫煙者を責めるのではなく、「やめたい人がやめやすい職場」にすることを目標にすると、取組への協力が得やすくなります。

喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室の標識は、種類を選んで印刷できるひな形を用意しています。

うえまつ産業医事務所にご相談ください

うえまつ産業医事務所では、職場巡視での喫煙場所の確認、衛生委員会での受動喫煙対策と禁煙支援の助言、健康診断後の禁煙の働きかけを、毎月定額の範囲で行います。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
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事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

よくある質問

事務所の中に喫煙コーナーを置いてもいいですか?

壁・天井で区画されていない喫煙コーナーは認められません。事務所は第二種施設で原則屋内禁煙のため、屋内で喫煙できるのは技術的基準を満たした喫煙専用室だけです(健康増進法第29条・第33条)。

喫煙専用室の基準は?

出入口で室外から室内への気流が毎秒0.2メートル以上、壁・天井などで区画されていること、煙が屋外に排気されていることが必要です。出入口には喫煙専用室であることと20歳未満の立入禁止を記載した標識を掲示します。

20歳未満の社員に喫煙室の掃除をさせてもいいですか?

できません。20歳未満の人は、従業員であっても喫煙専用室に立ち入らせてはいけません(健康増進法第33条第5項)。

病院やクリニックに喫煙室は作れますか?

病院・診療所は第一種施設で敷地内禁煙のため、建物内に喫煙室は作れません。屋外に、要件を満たす特定屋外喫煙場所を設けることはできます。

加熱式たばこなら、事務所の自席で吸ってもよいですか?

いいえ。改正健康増進法では加熱式たばこも規制の対象で、屋内で吸えるのは喫煙専用室か加熱式たばこ専用喫煙室に限られます。

まとめ

事務所や工場は原則屋内禁煙で、屋内で喫煙できるのは技術的基準を満たした喫煙専用室だけです。標識の掲示と20歳未満の立入禁止を徹底し、喫煙場所のルールを社内で明確にしましょう。病院・診療所は敷地内禁煙です。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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うえまつ産業医事務所 所長
上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
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