労働時間の状況の把握義務とは|管理職も対象、タイムカードなど客観的な方法、3年保存、80時間超の通知と産業医への情報提供を産業医が解説

「管理職の労働時間も記録しないといけない?」「自己申告だけでは足りない?」「記録は何年残す?」。人事・総務の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、労働安全衛生法にもとづく労働時間の状況の把握義務(対象者、客観的な方法、3年保存、80時間を超えた人への通知と産業医への情報提供)を解説します。
結論:管理監督者を含めて、客観的な方法で労働時間の状況を把握し、3年間保存する
- 事業者は、長時間労働者の面接指導を行うため、労働者の労働時間の状況を把握しなければなりません(労働安全衛生法第66条の8の3)。
- 対象には管理監督者や裁量労働制の人も含まれます。高度プロフェッショナル制度の対象者は、別の方法(健康管理時間)で把握します。
- 把握の方法は、タイムカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な方法その他の適切な方法です(労働安全衛生規則第52条の7の3第1項)。
- 把握した記録は3年間保存します(同条第2項)。

なぜ把握が必要か
時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人から申出があれば、医師による面接指導を行わなければなりません。誰が対象かを判断するために、管理監督者を含むすべての労働者の労働時間の状況を把握する必要があります。面接指導の流れは長時間労働者の面接指導の流れで解説しています。
労働基準法の労働時間管理(割増賃金の計算)では管理監督者は対象外でも、健康管理のための把握は必要という点がポイントです。時間外労働の上限規制については時間外労働の上限規制と安全配慮義務をご覧ください。
客観的な把握の方法
| 方法 | ポイント |
|---|---|
| タイムカード・ICカード | 出退勤の時刻を記録する |
| パソコンの使用時間の記録 | ログオン・ログオフの時刻を記録する。在宅勤務でも使える |
| 入退室の記録 | 事業場への入退場の時刻を記録する |
| 自己申告(やむを得ない場合) | 直行直帰などで客観的な方法がとれない場合に限る。申告と実態の差を確認し、正しく申告するよう説明する |
自己申告による場合は、申告した時間と、パソコンの使用時間や入退室の記録との間に大きな差があれば、実態を調査します。副業・兼業をしている人の労働時間の考え方は副業・兼業する社員の健康管理をご覧ください。
80時間を超えた人への通知と産業医への情報提供

| やること | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 毎月の算定 | 毎月1回以上、一定の期日を定めて、週40時間を超えた時間(時間外・休日労働)を算定する | 労働安全衛生規則第52条の2第2項 |
| 本人への通知 | 超えた時間が月80時間を超えた人に、速やかにその時間を通知する | 同条第3項 |
| 産業医への情報提供 | 月80時間を超えた人の氏名と超えた時間を、速やかに産業医に提供する | 同規則第14条の2 |
| 面接指導 | 本人の申出があれば、遅滞なく医師による面接指導を行う | 労働安全衛生法第66条の8 |
研究開発業務に従事する人は、月100時間を超えると申出がなくても面接指導が必要です(同法第66条の8の2)。脳・心臓疾患の労災認定での労働時間の評価は脳・心臓疾患の労災認定基準で解説しています。
産業医が関わること
- 毎月の長時間労働者の情報を受け取り、面接指導の対象者に声をかける
- 面接指導の結果をもとに、就業上の措置について意見を述べる(産業医の意見書)
- 衛生委員会で、部署ごとの労働時間の状況と対策を審議する(衛生委員会の議題例)
管理監督者の長時間労働と健康管理
労働基準法第41条第2号の「管理監督者」には、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。ただし、「管理職」の肩書きがあれば管理監督者になるわけではありません。行政の通達では、経営者と一体的な立場にあるか、出退勤について裁量があるか、その地位にふさわしい待遇かといった実態で判断するとされています。実態が伴わない「名ばかり管理職」には、時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。
| 管理監督者 | 一般の労働者 | |
|---|---|---|
| 労働時間・休日の規定(労基法) | 適用されない(深夜業の割増賃金は必要) | 適用される |
| 労働時間の状況の把握(安衛法第66条の8の3) | 対象 | 対象 |
| 長時間労働者の面接指導(安衛法第66条の8) | 対象(月80時間超で申出があった場合など) | 対象 |
管理監督者は残業時間の上限がないぶん、仕事が集中しやすく、長時間労働になりがちです。中小企業では、プレイングマネージャーとして現場の仕事も抱えていることが少なくありません。会社として、次のことを行いましょう。
- 管理監督者も、タイムカードやパソコンの使用時間など客観的な方法で労働時間の状況を把握する
- 時間外・休日労働に相当する時間が月80時間を超えた人には、その時間を本人に通知し、面接指導の申出を案内する
- 月80時間を超えた人の氏名や時間などの情報を産業医に提供する(労働安全衛生規則第14条の2)
- 部下の仕事の割り振りや人員配置を見直し、管理職1人に負担が集中しないようにする
管理監督者は部下の健康管理(ラインケア)を担う立場でもあります。本人が無理を重ねていると、部下に相談されても対応する余裕がなくなり、職場全体の不調につながりかねません。管理職の働き方を見直すことは、職場全体の健康管理の土台づくりでもあります。
なお、管理監督者に当たるかどうか迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認しておくと安心です。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
うえまつ産業医事務所では、月80時間を超えた社員の情報の受け取りと面接指導、就業上の措置の意見、衛生委員会での労働時間の状況の確認と対策の助言を、毎月定額の範囲で行います。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
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事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
管理職の労働時間も把握しなければなりませんか?
必要です。労働安全衛生法の労働時間の状況の把握は、管理監督者や裁量労働制の人も対象です(同法第66条の8の3)。高度プロフェッショナル制度の対象者は健康管理時間で把握します。
自己申告だけで把握してもいいですか?
原則はタイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な方法です。直行直帰などでやむを得ない場合に自己申告とし、実態との差がないか確認します(労働安全衛生規則第52条の7の3)。
労働時間の記録は何年保存しますか?
把握した労働時間の状況の記録は3年間保存します(労働安全衛生規則第52条の7の3第2項)。
80時間を超えた人がいたら何をしますか?
本人に超えた時間を速やかに通知し、産業医に氏名と超えた時間を提供します。本人から申出があれば、遅滞なく医師による面接指導を行います。
管理職の労働時間も把握しなければいけませんか?
はい。労働安全衛生法第66条の8の3による労働時間の状況の把握は、管理監督者も対象です。長時間労働者への面接指導も、管理監督者に適用されます。
まとめ
労働時間の状況の把握は、長時間労働者の面接指導のための事業者の義務で、管理監督者も対象です。タイムカードやパソコンの記録などの客観的な方法で把握し、3年間保存しましょう。月80時間を超えた人には本人への通知と産業医への情報提供を行い、面接指導につなげます。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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