健康情報の取扱規程の作り方|定める9つの事項と記載例・3つの区分・策定の5ステップを産業医が解説

健康情報の取扱規程の作り方|定める9つの事項と記載例・3つの区分・策定の5ステップを産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
健康情報の取扱規程は、9つの事項を労使で話し合って定めます。

健康診断の結果やストレスチェック、面談の記録など、社員の健康に関する情報は、会社が扱う情報の中でも特に慎重な取扱いが求められます。厚生労働省の指針では、すべての事業者が健康情報の取扱規程を定めることとされています。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、取扱規程に定める9つの事項と記載例、作り方の手順を、指針にもとづいて解説します。上司や人事がどこまで健診結果を見てよいかは健康診断の結果は社内の誰が見てよい?で解説しています。

4コマ漫画:部下の健診結果を全部見せてと言う課長に困る総務担当。めーくんが「必要な範囲だけ扱います」「誰が何を見られるか、規程で決めておきます」と説明し、衛生委員会で労使が話し合って規程を決める。めーくんは「決めた規程は社員に周知します」と話す。

結論:9つの事項を、労使で話し合って規程にし、社員に周知する

  • 事業者は、社員の心身の状態に関する情報を、健康確保に必要な範囲で収集・保管・使用し、適正に管理しなければなりません(労働安全衛生法第104条)。
  • 厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(2018年策定、2022年改正)では、事業場ごとに取扱規程を定めることとされています。
  • 規程には、目的、取り扱う人と範囲、同意の取り方、管理の方法など9つの事項を定めます。
  • 50人以上の事業場は衛生委員会で、50人未満の事業場は社員の意見を聴いて策定し、社員に周知します。

取扱規程に定める9つの事項と記載例

定める事項記載例
1取り扱う目的と取扱方法健康診断・面接指導の実施と就業上の措置、健康の保持増進のために取り扱う
2取り扱う人とその権限、取り扱う情報の範囲産業医・保健師は全情報、人事担当者は就業上の措置に必要な情報のみ、上司は就業上の配慮の内容のみ
3目的などの通知方法と、本人の同意の取り方入社時に規程を説明し、法定外の情報は書面で同意を得る
4適正な管理の方法施錠できる保管庫やアクセス制限のあるシステムで保管し、保存期間を過ぎたら廃棄する
5開示・訂正・使用停止などの方法本人から請求があれば人事が受け付け、産業医と相談して対応する
6第三者に提供する方法本人の同意がある場合や法令にもとづく場合に限る
7事業承継や組織変更のときの引継ぎ合併・分割の際は、規程にもとづいて引き継ぐ
8苦情の処理苦情の窓口を人事部に置き、産業医と連携して対応する
9規程を社員に周知する方法就業規則とあわせて社内イントラネットに掲載する
健康情報の取扱規程に定める9つの事項(厚生労働省の指針)

情報の3つの区分ごとに扱いを決める

1コマ漫画:ホワイトボードの「健康情報の3つの区分」(会社が必ず扱う:受診の有無・医師の意見、同意なく集められる:健診結果の法定項目、本人の同意が必要:法定外の検査結果など)を前に、人間ドックの結果も見てよいかと聞く総務担当に、めーくんが「法定外の項目は本人の同意が必要です」と説明。

指針では、心身の状態に関する情報を3つに区分し、それぞれの扱いを規程で定めることとしています。

区分例扱い
1 法令にもとづき会社が必ず取り扱う情報健康診断の受診・未受診、健診後の医師の意見会社が取り扱う。取り扱う人と範囲は規程で定める
2 法令にもとづき本人の同意なく収集できる情報健康診断の結果(法定の項目)、長時間労働者の面接指導の結果取り扱う人と範囲、加工の方法などを規程で定めて運用する
3 法令に定めがなく、本人の同意が必要な情報健康診断の法定外の項目の結果、保健指導や健康相談の結果あらかじめ本人の同意を得て、規程にもとづいて取り扱う
心身の状態に関する情報の3つの区分

上司には病名や検査値ではなく、「残業は月20時間まで」のように就業上の配慮に必要な情報だけを加工して伝えるのが基本です。

取扱規程の作り方(5ステップ)

  1. 社内で扱っている健康情報(健診結果、ストレスチェック、面談記録、診断書など)と、保管場所を洗い出す
  2. 情報ごとに、取り扱う人(産業医・保健師・人事・上司)と範囲を決める
  3. 厚生労働省の手引きやひな形を参考に、9つの事項を書いた規程案を作る
  4. 衛生委員会(50人未満は社員の意見を聴く場)で審議する
  5. 就業規則や社内規程として定め、社員に周知する。入社時の説明にも組み込む

休職・復職や受診命令など、就業規則に入れておきたい健康管理の規定は就業規則に入れておきたい健康管理の規定で解説しています。

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よくある質問

健康情報の取扱規程は義務ですか?

労働安全衛生法第104条にもとづく厚生労働省の指針で、事業者は取扱規程を定めることとされています。従業員の人数にかかわらず、すべての事業場が対象です。

取扱規程には何を書けばよいですか?

取り扱う目的と方法、取り扱う人と範囲、通知と同意の方法、管理の方法、開示・訂正などの方法、第三者提供の方法、事業承継時の引継ぎ、苦情の処理、周知の方法の9つの事項を定めます。

50人未満の会社はどうやって取扱規程を作りますか?

衛生委員会の設置義務がない50人未満の事業場は、社員の意見を聴いたうえで取扱規程を策定し、社員と共有します。

上司に健康診断の結果を伝えてもよいですか?

上司には、病名や検査値ではなく、就業上の配慮に必要な情報だけを伝えるのが基本です。誰がどこまで見るかを取扱規程で決めておきます。

まとめ

健康情報の取扱規程は、目的、取り扱う人と範囲、同意の取り方、管理の方法など9つの事項を、情報の3つの区分に沿って定めます。衛生委員会や社員の意見を聴いて策定し、周知することで、社員が安心して健診や相談を受けられる職場になります。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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うえまつ産業医事務所 所長
上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
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