妊産婦の就業制限とは|重量物・有害物など24の業務、産前6週・産後8週の休業、軽易業務への転換、時間外・深夜業の制限を産業医が解説

妊産婦の就業制限とは|重量物・有害物など24の業務、産前6週・産後8週の休業、軽易業務への転換、時間外・深夜業の制限を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
妊娠の報告を受けたら、法律で禁止される業務と、本人の請求で制限する働き方の両方を確認します。

「妊娠した社員から、夜勤を外してほしいと言われた」「重い物を持つ仕事は何キロまでなら大丈夫?」「産後すぐに復帰したいと言われたら?」。製造業や医療・介護の職場の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、労働基準法と女性労働基準規則にもとづく妊産婦の就業制限(危険有害業務、産前産後休業、軽易業務への転換、時間外・深夜業の制限、育児時間)を、条文にもとづいて解説します。

結論:法律で禁止される業務と、本人の請求で制限する業務がある

  • 妊産婦とは、妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性です(労働基準法第64条の3)。
  • 重量物を取り扱う業務や、鉛・水銀などの有害物を発散する場所での業務など、妊娠中の女性に就かせてはならない業務が24種類定められています(女性労働基準規則第2条)。
  • 産前6週間(多胎妊娠は14週間)は本人が請求すれば休業させ、産後8週間は原則として就業させてはいけません(同法第65条)。
  • 本人が請求すれば、軽易な業務への転換、時間外労働・休日労働・深夜業の制限をしなければなりません(同法第65条第3項・第66条)。
4コマ漫画「夜勤を外してもらえますか?」:妊娠中の社員の申し出に悩むライン長に、メーくんが、請求があれば深夜業はさせられないこと、重い物の作業も避けることを伝え、軽い作業への配慮と母健連絡カードの確認をすすめる

妊産婦に就かせてはならない危険有害業務

女性労働基準規則第2条は、妊娠中の女性を就かせてはならない業務として24種類を定めています。主なものは次のとおりです。

  • 重量物を取り扱う業務(下の表の重量以上)
  • ボイラーの取扱い・溶接、つり上げ荷重5トン以上のクレーンなどの運転、クレーンなどの玉掛け
  • 運転中の原動機や動力伝導装置の掃除・給油・検査・修理、動力で駆動される土木建築用機械の運転
  • プレス機械・シャーなどを用いて行う厚さ8ミリ以上の鋼板加工、岩石や鉱物の破砕機への材料の送給
  • 深さ5メートル以上の地穴での業務、高さ5メートル以上で墜落のおそれのある場所での業務、足場の組立て・解体
  • 鉛・水銀・カドミウム・トリクロロエチレン・スチレンなど、一定の有害物を発散する場所での業務(呼吸用保護具が必要な作業や、作業環境測定で第3管理区分となった場所など)
  • 多量の高熱物体・低温物体の取扱い、著しく暑熱・寒冷な場所での業務、異常気圧下の業務
  • さく岩機・びょう打機など身体に著しい振動を与える機械器具を用いる業務
年齢断続作業の場合継続作業の場合
満16歳未満12kg8kg
満16歳以上満18歳未満25kg15kg
満18歳以上30kg20kg
女性が取り扱ってはならない重量物の重量(この重量以上は就業禁止。女性労働基準規則第2条第1項第1号)

産後1年を経過しない女性と、妊産婦以外の女性

対象就かせてはならない業務
妊娠中の女性24種類のすべて
産後1年を経過しない女性重量物の取扱い、有害物を発散する場所での業務、著しい振動を与える機械器具の業務は就業禁止。そのほかの業務の多くは、本人が従事しない旨を申し出た場合に就かせてはならない(深い地穴・高所の業務は産後の制限の対象外)
妊産婦以外のすべての女性重量物の取扱い(上の表の重量以上)と、有害物を発散する場所での業務
産後と、妊産婦以外の女性の就業制限(女性労働基準規則第2条第2項・第3条)

有害物を扱う職場では、作業環境測定の結果と、化学物質の自律的管理のリスクアセスメントの結果もあわせて確認しましょう。

産前・産後休業

期間内容
産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性が請求した場合は、就業させてはならない
産後8週間就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない
産前・産後休業(労働基準法第65条第1項・第2項)

本人の請求で会社がしなければならないこと

妊娠・出産で会社がすることの図解:①妊娠中は重い物・有害物の仕事はNG、請求で軽い仕事へ、②産前6週(多胎は14週)は請求すれば休業、③産後8週は原則働けない(6週後は医師OKなら可)、④妊娠中〜産後1年は請求で残業・休日・深夜なし、育児時間1日2回30分(子が1歳まで)
請求の内容会社の義務根拠
軽易な業務への転換妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させる労働基準法第65条第3項
変形労働時間制での長時間の制限妊産婦が請求した場合、変形労働時間制をとっていても1日8時間・1週40時間を超えて働かせない同法第66条第1項
時間外労働・休日労働の制限妊産婦が請求した場合、時間外労働・休日労働をさせない同法第66条第2項
深夜業の制限妊産婦が請求した場合、深夜業(午後10時から午前5時)をさせない同法第66条第3項
育児時間生後満1年に達しない子を育てる女性は、休憩時間のほか1日2回各30分以上の育児時間を請求できる同法第67条
妊産婦の請求にもとづく措置(労働基準法第65条〜第67条)

なお、行政の解釈では、管理監督者には時間外労働・休日労働の制限は適用されませんが、深夜業の制限は適用されます。

男女雇用機会均等法にもとづく母性健康管理

  • 妊娠中・出産後の女性が、母子保健法の保健指導や健康診査を受けるための時間を確保できるようにする
  • 医師などの指導事項を守れるよう、通勤緩和、休憩、勤務時間の短縮、作業の制限、休業などの措置を講じる。指導事項は母健連絡カードで伝えられることが多い
  • 妊娠・出産、産前産後休業の請求・取得などを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止。妊娠中と産後1年以内の解雇は、会社が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効

母性健康管理の措置は、現行の男女雇用機会均等法では第17条・第18条に定められています(法改正で条文番号が変わっており、以前の資料では第12条・第13条と書かれています)。不利益取扱いの禁止は同法第9条です。女性社員の健康支援全体については働く女性の健康課題と企業の支援もご覧ください。

放射線業務に従事する女性の線量限度

病院のX線室など、放射線業務に従事する女性(妊娠する可能性がないと診断された人を除く)の実効線量は3か月につき5ミリシーベルト、妊娠と診断された女性は、妊娠中に内部被ばく1ミリシーベルト、腹部表面の等価線量2ミリシーベルトを超えないようにします(電離放射線障害防止規則第4条・第6条)。詳しくは電離放射線健康診断とはで解説しています。

産業医が関わること

  • 妊娠を報告した社員の業務内容(重量物、有害物、夜勤、立ち作業)を確認し、配置や作業の見直しを助言する
  • 母健連絡カードや主治医の指導事項をもとに、具体的な配慮の内容を一緒に考える
  • 職場巡視で、有害物を発散する場所や重量物を扱う作業を把握しておく(産業医の職場巡視)
  • 妊娠中・産後の社員への対応ルールを、衛生委員会や就業規則で整える(就業規則に入れておきたい健康管理の規定)

うえまつ産業医事務所にご相談ください

うえまつ産業医事務所では、妊娠を報告した社員の業務の確認と配置の助言、母健連絡カードにもとづく配慮の検討、有害物や重量物を扱う職場の巡視を、毎月定額の範囲で行います。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
  • 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)

事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

よくある質問

妊娠中の社員は何キロまで重い物を持てますか?

満18歳以上の場合、断続作業で30kg以上、継続作業で20kg以上の重量物を取り扱う業務には就かせてはいけません(女性労働基準規則第2条)。この制限は妊産婦以外の女性にも適用されます。実際には主治医の指導事項も確認して、より軽い作業に配慮しましょう。

妊娠中の社員から夜勤を外してほしいと言われたら?

妊産婦が請求した場合、深夜業をさせてはいけません(労働基準法第66条第3項)。時間外労働・休日労働も、請求があればさせてはいけません。

産後6週間で復帰したいと言われたら?

産後8週間は原則として就業させてはいけませんが、産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障がないと認めた業務であれば就かせることができます(労働基準法第65条第2項)。

産前休業は会社が命じるものですか?

産前6週間(多胎妊娠は14週間)の休業は、本人が請求した場合に与えるものです。産後8週間は、本人の請求の有無にかかわらず原則として就業させてはいけません。

まとめ

妊産婦の就業制限には、重量物や有害物などの法律で禁止される業務と、軽易業務への転換や時間外・深夜業の制限のように本人の請求で必要になる措置があります。妊娠の報告を受けたら、業務内容の確認、母健連絡カードの指導事項の確認、本人との話し合いを早めに行いましょう。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
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