ビルメンテナンス・清掃・警備業の産業医|現場が分散する会社の50人の数え方、熱中症・夜勤・高年齢者の転倒対策を産業医が解説

「社員はお客さまのビルや工事現場に散らばっていて、本社には数人しかいない。産業医は誰がどこで選任すればいいのか」――ビルメンテナンス・清掃・警備などの会社の総務の方から、よくいただく質問です。
京都市で常用雇用者50人以上の事業所が多い業種の4番目は「サービス業(他に分類されないもの)」で、222事業所あります(総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(e-Stat 表16-1))。この分類には、ビルメンテナンス・清掃、警備、人材派遣などが含まれます。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、現場が分散する会社の産業医の考え方と、高年齢の従業員が多い職場の健康管理のポイントを解説します。

1. 現場が分散する会社は、どこで50人を数えるか
産業医の選任義務は事業場ごとに判断します。行政の通達では、場所が分かれていても、規模が小さく、一つの事業場といえるほどの独立性がない現場は、それを管理する営業所などと一括して一つの事業場として扱うとされています(昭和47年9月18日 発基第91号)。
| 働き方の例 | 数え方の目安 |
|---|---|
| お客さまのビルに少人数ずつ常駐する清掃スタッフ | 現場を管理する本社・営業所の人数に含めて数える |
| 交通誘導や施設警備で、日ごとに現場が変わる警備員 | 所属する営業所の人数に含めて数える |
| 大きな施設に50人以上が常駐し、現場に管理者がいる | 現場の独立性によっては、その現場を一つの事業場として扱うことがある |
| 派遣スタッフ | 派遣元と派遣先の両方で数える(派遣社員の健康管理は派遣元と派遣先のどちら?) |
パート・アルバイトも含めて数えます(パート・アルバイトが多い職場の産業医)。営業所の人数が50人以上になったら、14日以内に産業医を選任します(産業医選任報告(選任届)の書き方と提出方法)。
2. 数字で見る、警備・清掃の職場のリスク

令和7年の全国の職場の熱中症による死傷者は1,803人で、統計のある2005年以降で最も多くなりました。業種別では、警備業が199人、清掃・と畜業が121人で、屋外や空調のない場所での作業が多い業種で多く発生しています(厚生労働省「令和7年 職場における熱中症の発生状況(確定値)等について」)。
| 業種 | 熱中症の死傷者(令和7年・全国) | うち死亡 |
|---|---|---|
| 製造業 | 365人 | 2人 |
| 建設業 | 292人 | 5人 |
| 商業 | 237人 | 2人 |
| 運送業 | 220人 | 1人 |
| 警備業 | 199人 | 3人 |
| 清掃・と畜業 | 121人 | 1人 |
| 全業種 | 1,803人 | 19人 |
ビルメンテナンス業では、清掃作業中の転倒(滑り・つまずき)や、階段・脚立・踏み台からの墜落・転落が多いとされています。長野労働局の資料(長野県内の平成21〜25年の集計)では、事故の型は転倒が44.2%、墜落・転落が18.4%でした(長野労働局「健康安全壁新聞 ビルメンテナンス業編」)。
3. ビルメンテナンス・清掃・警備の会社で産業医に頼めること
| 職場の課題 | 産業医に頼めること |
|---|---|
| 夏の交通誘導・屋外清掃の熱中症 | 報告体制と対応手順づくり、持病のある人の配置の配慮を助言します(職場の熱中症対策の義務化) |
| 夜勤・宿直・長い拘束時間 | 深夜業を含む業務に常時従事する人の6か月ごとの健康診断と、長時間労働者の面接指導を行います(特定業務従事者の健康診断(深夜業は6か月ごと)) |
| 高年齢の従業員の転倒・墜落 | 健康診断の結果と体力に応じて、脚立の使用や高所の作業、単独作業への配慮を意見します |
| 洗剤・剥離剤などの化学物質 | SDS(安全データシート)の確認、保護具、リスクアセスメントの進め方を助言します(化学物質の自律的管理) |
| 腰痛(重い清掃用具、ごみの運搬) | 用具の運び方や作業の分担を、腰痛予防対策指針にもとづいて助言します(職場における腰痛予防対策指針) |
| 現場で一人になる時間が長い | 体調の急変に備えた連絡の方法、ストレスチェックと高ストレス者の面接指導を行います |
高年齢の従業員が働きやすい職場づくりについては、厚生労働省「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」も参考になります。
4. 現場に散らばる従業員の面談をどうするか
- 健康診断の事後措置や面接指導は、営業所への訪問日にまとめて行う
- 遠い現場の従業員は、スマートフォンやタブレットを使ったWeb面談で対応する
- 衛生委員会は、現場責任者がWeb会議で参加できるようにする
- 現場の巡視は、季節(夏の熱中症、冬の凍結)に合わせて重点の現場を選んで行う(産業医の職場巡視とは)
当事務所では、訪問とWeb面談を組み合わせて、現場が分散する会社の健康管理にも対応しています。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
京都・大阪・滋賀・奈良の事業場を訪問し、現場が分散する会社では、営業所への訪問とWeb面談を組み合わせて対応しています。紹介会社の中間手数料がかからない直接契約と、ストレスチェックや健康管理のWeb化(DX)によって、料金をできるだけ抑えています。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「熱中症対策の義務化への対応」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
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- 不動産業・物品賃貸業(仲介・管理・リース)の産業医
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よくある質問
お客さまのビルに常駐している清掃スタッフは、どこの人数に数えますか?
少人数の現場で、一つの事業場といえるほどの独立性がない場合は、その現場を管理する本社・営業所などと一括して数えます。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
警備員の健康診断で注意することは何ですか?
夜勤など午後10時から午前5時までの深夜業を含む業務に常時従事する人は、6か月以内ごとに1回の定期健康診断が必要です。年齢の高い警備員が多い場合は、健康診断の結果に応じた配置の配慮も大切です。
熱中症が多いのはどの業種ですか?
令和7年の全国の統計では、製造業、建設業、商業、運送業、警備業の順に多く、警備業は199人、清掃・と畜業は121人でした。屋外での交通誘導や、空調のない場所での清掃では特に注意が必要です。
清掃で使う洗剤も化学物質の管理が必要ですか?
洗剤や剥離剤にも、リスクアセスメントの対象となる化学物質が含まれていることがあります。SDS(安全データシート)で成分を確認し、保護具や換気などの対策を決めます。
現場が遠くて産業医が訪問できない従業員の面談はどうしますか?
Web面談で対応できます。当事務所では、営業所への訪問とWeb面談を組み合わせ、現場の従業員の勤務時間に合わせて面談を行っています。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 労働安全衛生法(第13条 産業医等)(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(第45条 特定業務従事者の健康診断)(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「令和7年 職場における熱中症の発生状況(確定値)等について」
- 長野労働局「健康安全壁新聞 ビルメンテナンス業編」
- 厚生労働省「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」
- 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(e-Stat 表16-1)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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