宿泊業・飲食店(ホテル・旅館・飲食チェーン)の産業医|施設・店舗ごとに50人以上で選任、深夜勤務の健診・受動喫煙・外国人スタッフ・厨房のけが対策を産業医が解説

「ホテルのスタッフが50人を超えたが、シフトがばらばらで衛生委員会を開けない」「厨房でのやけどや転倒が続いている」「外国人スタッフの健康診断の説明をどうすればいいか」――ホテル・旅館や飲食チェーンの人事・総務の方から、こうしたご相談をいただきます。
観光の街・京都では、宿泊業・飲食サービス業で常用雇用者50人以上の事業所が169あり、30〜49人の事業所も312あります(総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(e-Stat 表16-1))。30〜49人の層は、卸売業・小売業に次いで多く、これから50人を超えて初めて産業医を選ぶ事業所が多い業種です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、宿泊業・飲食店で産業医が必要になる場合と、業種ならではの健康管理のポイントを解説します。

1. 産業医が必要になるのは「施設・店舗ごとに50人以上」
産業医の選任義務は、会社全体ではなくホテル・旅館の1施設ごと、飲食店の1店舗ごとに、常時使用する労働者が50人以上かどうかで判断します。パート・アルバイトや、継続して働く派遣スタッフも含めて数えます(パート・アルバイトが多い職場の産業医/派遣社員の健康管理は派遣元と派遣先のどちら?)。
- フロント・客室清掃・調理・宴会スタッフを合わせて50人以上のホテル・旅館
- パート・アルバイトを含めて50人以上の大型店・宴会場
- 複数の店舗に料理を送るセントラルキッチン(工場として50人以上になることがあります)
- 本部(事務・営業など)が50人以上の場合
50人以上になったら、14日以内に産業医を選任し、衛生管理者の選任、衛生委員会の開催、ストレスチェックも始めます(産業医は何人から必要?社員が50人を超えたらやること)。
2. 飲食店で多い労働災害

厚生労働省の外食業向けの教材によると、飲食店の労働災害で多いのは、次の4つです(平成30年)(厚生労働省『まんがでわかる外食業の安全衛生』)。
| 順位 | 事故の型 | 人数 | 職場での例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 転倒 | 1,467人 | 油や水で濡れた厨房の床、段差、急いでいるとき |
| 2 | 切れ・こすれ | 1,154人 | 包丁、スライサー、割れた食器 |
| 3 | 高温・低温の物との接触 | 762人 | 揚げ油、鍋、オーブン、冷凍庫 |
| 4 | 動作の反動・無理な動作 | 402人 | 重い食材や食器の運搬、無理な姿勢 |
この教材は、外国人スタッフにも伝わるよう、イラストを中心にまとめられています。産業医の職場巡視では、こうした教材も使いながら、厨房の床・通路・器具の置き場所を確認します(産業医の職場巡視とは)。
3. 宿泊業・飲食店で産業医に頼める5つのこと
(1) シフト・深夜勤務の健康管理
午後10時から午前5時までの深夜業を含む業務に常時従事する人は、配置替えの際と、6か月以内ごとに1回、定期健康診断が必要です(特定業務従事者の健康診断(深夜業は6か月ごと))。また、深夜業に従事する人が自分で受けた健康診断の結果を会社に提出できる「自発的健康診断」の制度もあります(労働安全衛生法第66条の2)。夜勤のあるフロントや宴会・調理のスタッフは、睡眠や生活リズムについても産業医が面談で助言します。
(2) 厨房のけが・やけど・熱中症
厨房は火や揚げ油を使うため、夏でなくても暑くなりがちです。熱中症を起こすおそれのある作業では、報告の体制と対応の手順を決めておく必要があります(職場の熱中症対策の義務化)。産業医は、転倒・切り傷・やけどの起きやすい場所を巡視で確認し、休憩や水分補給のとり方を提案します。
(3) 受動喫煙の防止
健康増進法により、飲食店などは原則屋内禁煙です。喫煙専用室などを設ける場合も、20歳未満の従業員を喫煙専用室などに立ち入らせたり、その中で業務をさせたりしてはいけません(厚生労働省「受動喫煙防止対策について」)。労働安全衛生法でも、事業者には屋内での受動喫煙を防ぐ努力義務があります(第68条の2)。
(4) 外国人スタッフの安全衛生教育と健康診断
雇入れ時の安全衛生教育は、外国人スタッフにも必要で、本人が理解できる方法で行うことが大切です。健康診断の結果や受診のすすめも、やさしい日本語や図を使って説明すると伝わりやすくなります。
(5) 客室清掃の腰痛と、接客のストレス
ベッドメイクや重いリネンの運搬では、腰痛が起きやすくなります(職場における腰痛予防対策指針)。また、お客さまからの理不尽な要求や暴言は、スタッフのメンタルヘルス不調につながることがあります。カスタマーハラスメントへの対応方針づくりや、高ストレス者・長時間労働者の面接指導も産業医の役割です(カスタマーハラスメント対策の義務化)。
4. 繁忙期があっても衛生委員会を続けるコツ
- 観光シーズンや宴会の多い時期を避けて、委員会の日程を年間で先に決めておく
- 朝の仕込み前や、昼と夜の営業の間など、委員が集まりやすい時間に開く
- Web会議を使い、離れた店舗や施設の委員も参加できるようにする
- 議題は「厨房の転倒」「夏の暑さ」「深夜勤務の健診」など、現場の困りごとから選ぶ(衛生委員会の議題例・12か月の年間カレンダー)
当事務所には、観光・宿泊・飲食など、シフト勤務の職場からのご相談が多く寄せられます。訪問の時間を営業時間に合わせるほか、Web面談でシフトの合間に面談することもできます。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
京都・大阪・滋賀・奈良のホテル・旅館・飲食店を訪問し、シフト勤務や深夜勤務のある職場の健康管理にも対応しています。紹介会社の中間手数料がかからない直接契約と、ストレスチェックや健康管理のWeb化(DX)によって、料金をできるだけ抑えています。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
当事務所によくあるご相談
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- 産業医の費用相場・報酬相場
よくある質問
ホテルや旅館では、どの単位で50人を数えますか?
ホテル・旅館の1施設ごとに、パート・アルバイトや継続して働く派遣スタッフも含めて数えます。会社全体の人数ではなく、施設ごとに常時50人以上なら産業医の選任が必要です。
飲食チェーンの店舗はそれぞれ産業医が必要ですか?
店舗ごとに常時50人以上なら必要です。50人未満の店舗には選任義務はありませんが、セントラルキッチンや本部が50人以上なら、そこで選任が必要です。
夜勤のあるスタッフの健康診断は年1回でよいですか?
午後10時から午前5時までの深夜業を含む業務に常時従事する人は、6か月以内ごとに1回の定期健康診断が必要です。配置替えのときにも健康診断を行います。
飲食店で多い労働災害は何ですか?
厚生労働省の資料では、転倒、切れ・こすれ、高温・低温の物との接触(やけどなど)、動作の反動・無理な動作の順に多くなっています。
喫煙専用室がある店で、未成年のアルバイトを働かせてもよいですか?
20歳未満の従業員を喫煙専用室などに立ち入らせたり、その中で業務をさせたりしてはいけません。喫煙できる場所に20歳未満の人が入らないようにする措置も必要です。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 労働安全衛生法(第13条 産業医等、第66条の2 自発的健康診断、第68条の2 受動喫煙の防止)(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(第45条 特定業務従事者の健康診断)(e-Gov法令検索)
- 健康増進法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省『まんがでわかる外食業の安全衛生』
- 厚生労働省「受動喫煙防止対策について」
- 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(e-Stat 表16-1)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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