産業医を選任したら会社がやること|社員への周知・情報提供・権限の付与など7つのチェックリストを産業医が解説

産業医と契約し、選任報告も出した。では、そのあと会社は何をすればよいのでしょうか。2019年4月の改正で、産業医を選任した事業者には、産業医の業務内容を社員に周知すること、産業医に必要な情報を提供すること、産業医に権限を与えることなどが義務づけられました。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、選任したあとに会社がやるべきことを、条文にもとづいてチェックリストの形で解説します。50人を超えたときの手続き全体は産業医は何人から必要?社員が50人を超えたらやることをご覧ください。
結論:選任報告のあと、周知・情報提供・権限の付与・委員会と巡視の日程を整える
- 産業医の業務の内容、健康相談の申出の方法、健康情報の取扱いの方法を社員に周知します(労働安全衛生法第101条第2項)。
- 健診や面接指導の後の措置、月80時間を超えた社員の氏名と時間などを産業医に提供します(同法第13条第4項、労働安全衛生規則第14条の2)。
- 産業医に、意見を述べる・社員から情報を集める・緊急時に指示するといった権限を与えます(同規則第14条の4)。
- 衛生委員会の委員に産業医を加え、職場巡視の日程を決めます。

選任したらやることチェックリスト
| やること | 期限・頻度 | 根拠 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 労働基準監督署へ選任報告(電子申請が原則) | 選任後、遅滞なく | 労働安全衛生規則第13条(選任報告の書き方) |
| 2 | 産業医の業務内容などを社員に周知 | 選任後、速やかに | 労働安全衛生法第101条第2項、同規則第98条の2 |
| 3 | 産業医への情報提供の手順を決める | 情報の種類ごとに決まった時期 | 同法第13条第4項、同規則第14条の2 |
| 4 | 産業医に権限を与える(社内規程や契約書に明記) | 選任時 | 同規則第14条の4 |
| 5 | 衛生委員会の委員に産業医を加える | 毎月1回以上の開催 | 同法第18条(議題の決め方) |
| 6 | 職場巡視の日程を決める | 毎月1回(条件を満たせば2か月に1回) | 同規則第15条(巡視のチェック項目) |
| 7 | 健康情報の取扱規程を整える | 選任時に見直す | 同法第104条(閲覧範囲と取扱規程) |
社員に周知する3つの事項と方法

産業医を選任した事業者は、次の3つを社員に周知しなければなりません(労働安全衛生規則第98条の2第2項)。
- 事業場における産業医の業務の具体的な内容(健康診断後の意見、面接指導、職場巡視、健康相談など)
- 産業医に健康相談を申し出る方法(窓口、申込みの方法、相談できる日時)
- 産業医による社員の心身の状態に関する情報の取扱いの方法(誰が見るか、どう保管するか)
周知の方法は、各作業場の見やすい場所への掲示や備え付け、書面の配付、社内イントラネットなど社員がいつでも確認できる電子的な方法のいずれかです。掲示物には、産業医の氏名、訪問日、相談の申込先を入れておくと、社員が相談しやすくなります。
産業医に提供する情報と時期
| 提供する情報 | 提供する時期 |
|---|---|
| 健康診断、長時間労働者の面接指導、高ストレス者の面接指導の後に、会社が講じた(講じようとする)措置の内容。措置を講じない場合はその旨と理由 | 医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく |
| 時間外・休日労働が月80時間を超えた社員の氏名と、超えた時間 | 超えた時間の算定を行った後、速やかに |
| その他、社員の業務に関する情報で、産業医が健康管理のために必要と認めるもの(労働時間、業務内容、作業環境など) | 産業医から求められた後、速やかに |
月80時間を超えた社員への面接指導の進め方は長時間労働者の面接指導の流れで解説しています。
産業医に与える権限と、勧告を受けたとき
事業者は、産業医が職務を行えるよう、次の権限を与えなければなりません(労働安全衛生規則第14条の4)。
- 事業者や総括安全衛生管理者に対して意見を述べること
- 職務に必要な情報を社員から集めること
- 社員の健康を守るため緊急の必要がある場合に、社員に必要な措置を指示すること
産業医は、社員の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に勧告することができ、事業者はこれを尊重しなければなりません(労働安全衛生法第13条第5項)。勧告を受けたら、勧告の内容と講じた措置(講じない場合はその理由)を記録して3年間保存し、遅滞なく衛生委員会に報告します(同規則第14条の3)。意見と勧告の違いは産業医の意見書とはで解説しています。
産業医が辞任・交代したとき
産業医が辞任したとき、または会社が解任したときは、遅滞なくその旨と理由を衛生委員会に報告します(労働安全衛生規則第13条第4項)。後任の産業医は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、選任報告を出します。交代の進め方は産業医を変更・交代したいときの手順をご覧ください。
産業医の業務の内容・健康相談の申出方法・健康情報の取扱いの周知は、記入して印刷できるひな形を職場に掲示・周知が義務のもの一覧に用意しています。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「社員が50人を超えたが、何から始めればよいか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
うえまつ産業医事務所では、ご契約のときに、社員への周知に使える掲示文の案、情報提供の手順、衛生委員会と職場巡視の年間日程をあわせてご提案します。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
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事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
産業医を選任したら社員に知らせる必要がありますか?
はい。産業医の業務の具体的な内容、健康相談の申出の方法、心身の状態に関する情報の取扱いの方法を、掲示・書面の配付・社内イントラネットなどで社員に周知する義務があります(労働安全衛生法第101条第2項、労働安全衛生規則第98条の2)。
産業医にはどんな情報を提供しなければなりませんか?
健康診断や面接指導の後に講じた措置の内容、時間外・休日労働が月80時間を超えた社員の氏名と超えた時間、その他産業医が健康管理のために必要と認める情報です(労働安全衛生規則第14条の2)。
産業医の勧告を受けたら会社は何をしますか?
勧告の内容と講じた措置(講じない場合はその理由)を記録して3年間保存し、遅滞なく衛生委員会に報告します(労働安全衛生規則第14条の3)。
従業員50人未満でも周知は必要ですか?
50人未満の事業場で医師などに健康管理を依頼している場合は、業務の内容などを周知するよう努めることとされています(労働安全衛生法第101条第3項)。
まとめ
産業医は、選任して終わりではありません。業務の内容と相談の方法を社員に周知し、月80時間超の社員の情報などを決まった時期に提供し、産業医に必要な権限を与えることで、初めて産業医が機能します。選任のときに、衛生委員会と職場巡視の年間日程もあわせて決めておきましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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