労働衛生の重点テーマ~法改正のいまを押さえる~
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皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。
10月1日から7日までの「全国労働衛生週間」に際して、今回は前回のコラムに続き、「いま特に押さえておきたい労働衛生のテーマ」を5つ厳選してご紹介します。
法令の改正が相次いでいる近年、職場の健康管理は「努力義務」から「罰則付きの義務」へとフェーズが変わってきています。自社の対策に抜け漏れがないか、ぜひチェックしてみてください。
1. 熱中症対策が「罰則付きの義務」になりました
2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、職場の熱中症対策が罰則付きで義務化されました。企業規模を問わず、すべての事業者が対象となります。
対象となる環境は「WBGT(暑さ指数)28度以上、または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行う作業」です。屋外だけでなく、空調の効きにくい倉庫や厨房、製造現場なども当然含まれます。 事業者には、体調不良者を「見つける・判断する・対処する」ための体制整備、具体的な対応手順の作成、そして関係者への周知が強く求められており、違反した場合は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。
- 【今できること】 緊急連絡網の整備 / WBGT計の設置 / 休憩・水分補給ルールの明文化 / 応急処置手順の掲示
2. 「ストレスチェック」が全事業場へ拡大
2025年の労働安全衛生法改正により、これまで努力義務だった「従業員50人未満の事業場」にも、ストレスチェックの実施が義務化されます。施行は「2028年4月1日」です。
「まだ先の話」と思われるかもしれませんが、実施体制の整備や産業医・外部機関との連携をゼロから構築することを考えると、準備期間は決して長くありません。 背景には、メンタルヘルス不調(特にハラスメント起因)による労災認定の過去最多更新があります。小規模事業場ほど相談先やノウハウが不足しがちですが、早めの体制づくりが、結果として大切な従業員の安心と定着に直結します。
- 【今できること】 厚労省の無料「ストレスチェック実施プログラム」の確認 / 実施者(産業医等)の選定 / 集団分析を活用した職場環境改善の検討
3. 女性の健康課題は「経営課題」へ
2025年6月の女性活躍推進法改正で、女性の健康特性への配慮が法の基本原則に明記されました。 経済産業省の試算では、女性特有の健康課題による社会の経済損失は「年間約3.4兆円」にのぼります。特に見逃されがちなのが、月経や更年期の不調を抱えたまま出勤し、本来のパフォーマンスを発揮できない「プレゼンティーズム」による損失です。
妊娠・不妊治療・更年期など、ライフステージに応じた柔軟な支援は、「女性だけの話」ではなく、生産性の維持と貴重な人材の離職を防ぐための重要な経営戦略です。
- 【今できること】 相談窓口の設置 / 管理職向けの理解促進研修の実施 / 厚労省「働く女性の心とからだの応援サイト」の社内周知
4. 労災の主役は「転倒」と「腰痛」
「うちは危険な機械を使わないから労災とは無縁だ」と思っていませんか? 実は、近年の労働災害(休業4日以上の死傷者)を牽引しているのは「転倒」と「腰痛(動作の反動・無理な動作)」です。2024年の死傷者数は4年連続で増加しており、転倒が約3万6千人で最多となっています。
死傷者の約3割を60歳以上が占めており、高齢化の影響が顕著に現れています。オフィスや福祉施設、小売店舗といった「一般的な職場」でこそ、深刻な転倒や腰痛が多発しているという現実を知り、対策を打つ必要があります。
- 【今できること】 段差・濡れた床・配線の点検 / 腰に負担の少ない作業姿勢の見直し / 始業時の体操導入 / 高年齢労働者に配慮したエイジフレンドリーな職場環境づくり
5. 困ったときは「無料の公的支援」を活用する
これだけ多くの課題に対して、自社単独ですべてを解決するのは困難です。だからこそ、国が用意している無料の公的支援を積極的に活用してください。
- 産業保健総合支援センター(さんぽセンター):訪問指導や研修、専門家への相談が無料。小規模事業場向けの地域窓口(地産保)もあります。
- こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(電話・メール・SNSでの相談窓口)。
- 治療と仕事の両立支援ナビ:がんや難病などの治療と仕事を両立するためのガイドラインや企業事例を掲載。
おわりに
法律の改正が続くと、「やらなければならない手続きが増えた」と負担に感じてしまうかもしれません。 しかし、これらの法改正や対策はすべて、「皆さんの大切な従業員が、心身ともに安全に働き、無事に家に帰るため」に存在しています。
全国労働衛生週間というこの節目を、次の一歩を踏み出すきっかけにしていきましょう。
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