健診で血糖を指摘されたら
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皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。
健康診断の結果が手元に届いたとき、「血糖値」や「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の項目に色がついていて、ドキッとした経験はありませんか。 高血糖は、初期には自覚症状が全くないまま進行するため、健診の数字こそがご自身の体を守るための最も重要なサインになります。今回は、血糖値の正しい見方と、職場ぐるみで知っておきたい病気への理解についてお話しします。
1. 血糖値と「HbA1c」の正しい見方
私たちが食事から摂った糖は、血液中に取り込まれ、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって全身のエネルギーになります。このインスリンの効きが悪くなったり、分泌量が減ったりして、血液中に糖が溢れかえったままになる状態が「糖尿病」です。
健診で必ずチェックしていただきたいのが、以下の2つの項目です。
- 空腹時血糖値: 血液を採った「その瞬間」の血糖の濃度です。
- HbA1c(ヘモグロビンA1c): 過去1〜2ヶ月間の「血糖の平均的な状態」を示します。
よく「明日は健診だから、今日は甘いものを我慢しよう」と直前だけ節制する方がいらっしゃいますが、空腹時血糖値は下がっても、過去の平均値である「HbA1c」をごまかすことはできません。
人間ドック学会の基準では、空腹時血糖値100〜125mg/dL、またはHbA1cが5.6〜6.4%の場合、「要注意(境界型)」と判定されます。 ここで見落としてはならないのが、この「要注意」は『まだ病気じゃないから大丈夫』という意味ではなく、『今すぐ生活改善と再検査をしなければ、病気に進行してしまう分かれ道』だということです。
2. 自覚症状がないまま進行する「3大合併症」
「少し数値が高いけれど、どこも痛くないし元気だから」と高血糖を放置するのは非常に危険です。 糖でドロドロになった血液は、全身の血管や神経を静かに、しかし確実に傷つけていきます。これが糖尿病の最も恐ろしいところです。
放置すると、三大合併症と呼ばれる深刻な事態を招きます。
- 網膜症(目の血管が傷つく): 失明の原因になります。
- 腎症(腎臓の血管が傷つく): 進行すると人工透析が必要になります。
- 神経障害(末梢神経が傷つく): 足先の感覚が麻痺し、最悪の場合は足の切断(壊疽)に至ります。
さらに、太い血管の動脈硬化も進むため、心筋梗塞や脳卒中のリスクも跳ね上がります。気づいたときにはすでに手遅れ、という事態を防ぐための唯一の防波堤が「健康診断」なのです。
3. 数値を下げるための「4つのアクション」
血糖値をコントロールするためには、日々の生活習慣の小さな積み重ねが不可欠です。
- ① バランスの良い食事:1日3食を欠かさず摂り(欠食は血糖値の急上昇を招きます)、野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維から先に、よく噛んでゆっくり食べましょう。
- ② 適正体重の維持:肥満はインスリンの効きを極端に悪くします。BMI22前後を目安に体重をコントロールしましょう。
- ③ 適度な運動:有酸素運動(週150分以上)や筋力トレーニング(週2〜3日)が推奨されます。「座りっぱなし」を避け、1時間に1回立ち上がるだけでも効果があります。
- ④ 禁煙:たばこ(ニコチン)もインスリンの効きを低下させるため、禁煙は必須です。
(※すでに治療中の方は、自己判断せず、運動や食事の内容を必ず主治医に確認してください。)
4. 「だらしない病気」という偏見と「ダイアベティス」
最後に、職場のマネジメント視点で非常に大切なことをお伝えします。
糖尿病に対して、「甘いものばかり食べているからだ」「だらしない生活の結果だ」という誤った偏見(スティグマ)を持っていないでしょうか。 実際には、遺伝的な体質や加齢、ストレスなど、個人の努力だけでは防ぎきれない多様な要因が絡み合って発症します。職場の偏見を恐れて当事者が病気を隠してしまい、通院のための休みが取れず、結果として重症化して離職に至ってしまうケースが後を絶ちません。
こうした背景から、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は2023年、偏見をなくすために「糖尿病」という病名を、英語名を用いた「ダイアベティス」という呼称へ変更する提案を行いました。
おわりに
ダイアベティス(糖尿病)は、きちんと通院し、適切に数値をコントロールできれば、今まで通り働き続けることができる病気です。
ご自身の健診結果に色がついていたら、絶対に放置せず、まずは医療機関を受診してください。 そして企業や周囲の同僚は、病気に対する正しい知識を持ち、通院と仕事が両立できる「心理的安全性の高い職場づくり」を進めていきましょう。
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