「座りすぎ」は新しい健康リスク

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

今回は、デスクワークの毎日にひそむ落とし穴、「座りすぎ(長時間の座位)」について取り上げます。

1. 日本人は、世界でもトップクラスに「座っている」

突然ですが、皆さんは毎日、何時間くらい座っていますか? 通勤の電車で座り、オフィスで座り、昼食で座り、帰宅してソファに座る……。

世界20か国の座位時間を比較した研究では、日本人の座位時間は「1日約7時間」と、調査対象国の中で最も長い部類に入ることが報告されています。 デスクワーク中心の方であれば、仕事中だけで8時間以上座りっぱなしということも珍しくないはずです。

2. 「座りすぎ」は運動不足とは別の健康リスク

これまでの健康づくりといえば「運動しましょう」という指導が中心でした。しかし近年の研究の積み重ねにより、「座っている時間が長いこと」そのものが、単なる運動不足とは別の独立した健康リスクになることが分かってきました。

WHO(世界保健機関)の「身体活動・座位行動ガイドライン(2020年)」では、長時間の座位が死亡率や心血管疾患、2型糖尿病、がんなどのリスク上昇と関連するとして、「座りっぱなしの時間を減らすこと」をすべての成人への推奨事項として明記しています。 日本でも、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に初めて「座位行動」に関する項目が盛り込まれました。

「運動」と並んで「座りすぎ対策」が国内外のガイドラインに載る時代になり、それだけ医学的にも確かな根拠が積み上がってきた重要なテーマなのです。

3. こまめに立つだけで意味がある!オフィスでできる工夫

「座りすぎが良くないなら、ずっと立って仕事をしないといけないの?」と思われた方もいるかもしれません。しかし、ポイントは「長く座り続ける時間を、こまめに区切ること」です。

WHOのガイドラインでも、座位時間を減らし、強度を問わず(軽いものでもよいので)身体活動に置き換えることが推奨されています。立ち上がって少し歩く、それだけでも立派な「置き換え」になります。

【オフィスでできる工夫】

  • 30分〜1時間に1回は立ち上がる:お手洗いや飲み物を取りに行く、印刷物を取りに行くだけでも十分です。
  • 音声通話は立って行う:電話やカメラオフのオンライン会議は、立って受ける習慣をつける。
  • 「立ち会議」を導入する:短時間の打ち合わせなら、立ったままの方がスムーズに終わることも多く、意外と快適です。
  • エレベーターを1階分だけ階段にする

コツは「わざわざ運動の時間を作る」と身構えないことです。「座る時間に切れ目を入れる」という発想で、日常の動作に組み込んでみましょう。

4. 週末のジムだけでは不十分?「合わせ技」のすすめ

「週末にジムに行って汗を流しているから大丈夫」と思われた方。運動習慣がある人でも、平日に長時間座り続けていれば、座りすぎの悪影響はゼロにはなりません。

一方で、大規模なデータ解析では、1日に十分な量の中強度の身体活動(早歩きなど)を行っている人であれば、長時間の座りすぎに伴うリスク上昇がかなり打ち消されることも示されています。

つまり、「こまめに立つ(座りすぎを防ぐ)」ことと、「日常でよく動く(運動習慣)」の合わせ技が理想形です。もちろん、どちらか片方からでも始める価値は十分にあります。

おわりに

この記事を読み終えたら、まずは一度、その場で立ち上がって伸びをしてみてください。 そして今日の午後は、「1時間に1回立つこと」を少しだけ意識してみましょう。

その小さな動作の積み重ねだけで、今日のあなたは昨日よりも確実に一歩、健康に近づいています。

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