パート・アルバイトが多い職場の産業医|正社員が数人でもパートを含めて50人以上なら選任義務、人数の数え方と健診・ストレスチェックの対象者

「うちは正社員が5人だけで、あとはパートさんなので、産業医はまだ要らないですよね?」――スーパーや飲食店、物流倉庫、コールセンター、食品工場などの人事・総務の方から、よくいただく質問です。
結論からお伝えすると、産業医が必要かどうかは、正社員の人数ではなく、パート・アルバイトを含めて「常時使用する労働者」が50人以上かどうかで決まります。正社員が数人でも、パート・アルバイトを合わせて50人以上の事業場は、産業医を選任しなければなりません。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、人数の数え方と、パートが多い職場で間違えやすい点を、厚生労働省の通達とQ&Aにもとづいて整理します。
1. パート・アルバイトも含めて50人以上なら産業医が必要
産業医の選任義務(労働安全衛生法第13条)は「常時50人以上の労働者を使用する事業場」にかかります。この「常時使用する労働者」について、行政の通達(昭和47年9月18日 基発第602号)は、日雇労働者やパートタイマーなどの臨時的な労働者も含めて、常態として使用している労働者の数で判断するとしています。
厚生労働省のストレスチェック制度のQ&Aでも、50人以上かどうかは契約期間や労働時間の長さではなく、常態として使用しているかどうかで判断し、週1回しか出勤しないアルバイトやパートでも、継続して雇用し常態として使用していれば人数に含める、と説明されています。
| 事業場の例 | 正社員 | パート・アルバイト | 合計 | 産業医 |
|---|---|---|---|---|
| スーパーの店舗 | 6人 | 48人 | 54人 | 必要 |
| 飲食店(大型店) | 3人 | 50人 | 53人 | 必要 |
| 物流倉庫 | 8人 | 40人+派遣10人 | 58人 | 必要 |
| コールセンター | 4人 | 43人 | 47人 | 不要(50人に近づいたら準備を) |
人数が50人以上になったら、その日から14日以内に産業医を選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ選任報告を出します(産業医選任報告(選任届)の書き方と提出方法)。50人を超えたときに全体として何をすればよいかは、産業医は何人から必要?社員が50人を超えたらやることで紹介しています。

2. 人数の数え方で間違えやすい5つのポイント
(1) 正社員かどうか、社会保険に入っているかは関係ない
「正社員だけ」「社会保険に加入している人だけ」を数えるのは誤りです。週の勤務日数が少ない人や、学生アルバイトでも、継続して雇用し常態として使用していれば人数に入ります。
(2) 会社全体ではなく「事業場(店舗・拠点)ごと」に数える
人数は、会社全体ではなく事業場ごとに数えます。同じ場所にある店舗や事務所は原則として1つの事業場、離れた場所にある店舗や倉庫はそれぞれ別の事業場です。会社全体で数百人いても、どの店舗も50人未満なら、産業医の選任義務がかかる事業場はないことになります。反対に、会社全体の正社員が少なくても、パートの多い大型店や物流センターが1か所あれば、その事業場で産業医が必要です。
(3) 派遣労働者は、派遣先でも人数に含める
派遣労働者は、派遣元の事業場だけでなく、派遣先の事業場でも人数に含めて数えます(昭和61年6月6日 基発第333号ほか)。倉庫や工場で派遣スタッフが多い場合は、自社のパート・アルバイトと派遣スタッフを合わせて50人以上にならないか確認しましょう。派遣スタッフの健康診断やストレスチェックを派遣元・派遣先のどちらが行うかは、派遣労働者の健康管理で解説しています。
(4) 「常時」は、ふだんの人数で考える
判断の基準は、ある1日の出勤人数ではなく、在籍して常態として使用している人数です。シフト制で1日に出勤するのが20人ほどでも、在籍しているパート・アルバイトが50人以上なら対象になります。繁忙期だけ一時的に人を増やす場合など、判断に迷うときは、所轄の労働基準監督署に確認しておくと安心です。
(5) 50人以上で必要になるのは産業医だけではない
常時50人以上の事業場では、産業医とあわせて、衛生管理者の選任、衛生委員会の設置(毎月1回以上の開催)、ストレスチェックの実施(年1回)、定期健康診断結果報告の提出も必要になります(衛生管理者と産業医の違い/衛生委員会とは)。
3. 「50人に数える人」と「健診・ストレスチェックの対象者」は別
パートの多い職場で特にわかりにくいのが、50人以上かどうかを数えるときの人数と、健康診断やストレスチェックを受けさせる義務がある対象者が一致しない点です。

| 50人以上かどうかの判断 | 一般健康診断・ストレスチェックの対象者 | |
|---|---|---|
| 基準 | 常態として使用しているか(契約期間や労働時間の長さは問わない) | 次の①②の両方を満たすパート・アルバイト |
| 契約期間 | 問わない | ①期間の定めがない、または1年以上使用される予定・実績がある(深夜業などの特定業務に従事する人の健康診断は6か月) |
| 労働時間 | 問わない(週1回勤務でも含む) | ②1週間の労働時間が、同じ業務の正社員の所定労働時間の4分の3以上 |
| 派遣労働者 | 派遣先・派遣元の両方で含める | 派遣元が実施(派遣先の報告人数には含めない) |
たとえば、在籍がパートを含めて54人で、そのうち週の労働時間が正社員の4分の3以上の人が12人という店舗では、産業医の選任やストレスチェックの実施義務はあり、健康診断とストレスチェックを受けさせる義務がある対象者は、原則としてその12人(と正社員)です。ストレスチェックの結果を労働基準監督署へ報告するときの「在籍労働者数」も、正社員と、対象者の条件を満たすパート・アルバイトの数を書きます。
なお、ストレスチェックは、2028年(令和10年)4月1日から50人未満の事業場でも実施が義務になります(ストレスチェック50人未満の義務化)。
4. パート・アルバイトが多い職場で産業医が役立つこと
パート・アルバイトが多い職場は、勤務時間や曜日が人によって違い、立ち仕事や重い荷物の取り扱い、お客さまへの対応など、職場ならではの健康リスクがあります。産業医には、たとえば次のようなことを相談できます。
- 健康診断の対象者の整理と、要再検査の人への受診のすすめ方
- 夜間・早朝のシフトがある人の健康診断(深夜業を含む業務に常時従事する人は6か月以内ごとに1回)(特定業務従事者の健康診断(深夜業は6か月ごと))
- 品出しや荷物の運搬、介助などによる腰痛の予防(職場における腰痛予防対策指針)
- 厨房・倉庫・屋外作業の熱中症対策(職場の熱中症対策の義務化)
- お客さまからの暴言・理不尽な要求(カスタマーハラスメント)への対策と、相談を受けた従業員のケア(カスタマーハラスメント対策の義務化)
- 高ストレス者や長時間労働者の面接指導(高ストレス者の面接指導)
勤務の曜日や時間帯がばらばらな職場では、面談の日程を合わせにくいことがあります。当事務所では、職場への訪問に加えてWeb面談にも対応しているため、シフトに合わせて面談の時間を調整できます。業種ごとの注意点は、介護施設・福祉施設の産業医、製造業・建設業の産業医でも解説しています。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
パート・アルバイトの多い店舗・倉庫・工場などで、はじめて産業医を選任する事業場を支援しています。人数の数え方や、健康診断・ストレスチェックの対象者の整理からご相談いただけます。紹介会社の中間手数料がかからない直接契約と、ストレスチェックや健康管理のWeb化(DX)によって、料金をできるだけ抑えています。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「社員が50人を超えたが、何から始めればよいか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
産業医の選任のコラム
よくある質問
正社員が数人で、ほとんどがパートの職場でも産業医は必要ですか?
必要です。産業医の選任義務は、正社員の人数ではなく、パート・アルバイトを含めて常態として使用している労働者が事業場ごとに常時50人以上かどうかで判断します。50人以上になった日から14日以内に選任し、遅滞なく労働基準監督署へ報告します。
週1〜2日しか働かないアルバイトも50人に数えますか?
継続して雇用し、常態として使用していれば数えます。厚生労働省のQ&Aでも、週1回しか出勤しないアルバイトやパートであっても、継続して雇用し常態として使用している場合は人数に含めるとされています。
派遣スタッフは人数に入りますか?
派遣元の事業場だけでなく、派遣先の事業場でも人数に含めて数えます。自社のパート・アルバイトと派遣スタッフを合わせて50人以上になるか確認してください。
パートも全員、健康診断とストレスチェックの対象ですか?
対象者は、期間の定めがない(1年以上使用される予定・実績がある場合を含む)うえで、1週間の労働時間が同じ業務の正社員の4分の3以上のパート・アルバイトです。50人以上かどうかを数えるときの人数とは基準が違うので注意してください。
店舗が複数ある場合は、全店舗の合計で数えますか?
会社全体ではなく、事業場(店舗・拠点)ごとに数えます。離れた場所にある店舗はそれぞれ別の事業場として数え、50人以上になった店舗で産業医の選任が必要になります。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- あかるい職場応援団(厚生労働省 ハラスメント対策の総合情報サイト)
- 労働施策総合推進法(パワハラ防止の根拠法、e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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