就業規則に入れておきたい健康管理の規定|受診命令・就業制限・休職・復職・健康情報の規定例と見直しの注意点を産業医が解説

社員の健康問題で対応に困ったとき、会社の判断の根拠になるのが就業規則です。「再検査を命じられない」「休職させたいが規定がない」「復職の判断基準がない」といった相談の多くは、就業規則の健康管理に関する規定が不十分なことが原因です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、就業規則に入れておきたい健康管理の規定と、規定を見直すときの注意点を解説します。
結論:受診・就業制限・休職・復職・健康情報の5分野を規定しておく
- 健康診断と受診命令:健康診断の受診義務、再検査・精密検査や医師の診察を命じられる根拠。
- 就業制限・就業禁止:医師の意見にもとづき、業務や労働時間を制限できる根拠。
- 休職:休職の要件、期間、給与、休職中の連絡、期間満了時の扱い。
- 復職:復職の申出、主治医の診断書と産業医の面談による判定、試し出勤、再休職時の通算。
- 健康情報の取扱い:健康情報等の取扱規程との関係。

就業規則に入れておきたい健康管理の規定

| 分野 | 規定の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 健康診断 | 会社が行う健康診断を受けなければならない。他の医師の健康診断を受けた場合は結果を提出する | 健康診断の受診は労働者の義務でもある(労働安全衛生法第66条第5項) |
| 受診命令 | 業務上必要があるときは、会社が指定する医師の診察や再検査を受けるよう命じることができる | 再検査を義務づける法律の規定はないため、就業規則の根拠が重要 |
| 長時間労働者の面接指導 | 会社が行う医師の面接指導を受けなければならない | 面接指導の受診は労働者の義務(同法第66条の8第2項) |
| ストレスチェック | 会社が行うストレスチェックの受検を勧奨する | 受検は義務ではなく、受けないことを理由とした不利益な取扱いは不可 |
| 就業制限・就業禁止 | 医師の意見にもとづき、業務・時間・場所を制限し、または就業を禁止することがある | 病者の就業禁止は事前に産業医などの意見を聴く(労働安全衛生規則第61条) |
| 休職 | 業務外の傷病で一定期間欠勤したとき、または医師が療養を要すると認めたときは休職を命じることがある。期間、給与、連絡方法を定める | 勤続年数に応じた期間、断続的な欠勤の扱いを明確に |
| 復職 | 復職を申し出るときは主治医の診断書を提出し、会社が指定する医師(産業医)の面談を経て会社が判断する | 「元の業務を通常の程度に行える状態」など、判断の基準を示す |
| 再休職と通算 | 復職後一定期間内に同一または類似の傷病で欠勤したときは、休職期間を通算する | 短期間の復職と休職の繰り返しを防ぐ |
| 休職期間満了 | 休職期間が満了しても復職できないときは、満了日をもって退職とする | 満了前に本人へ通知し、復職の可否を丁寧に判断する |
| 健康情報 | 健康情報は健康情報等の取扱規程に従って取り扱う | 取扱規程は衛生委員会で審議して周知する |
休職の判断の進め方は社員を休職させるべきかの判断と手続き、復職の判断は主治医の「復職可」だけで復帰させていいのか、健康情報の取扱規程は健康診断の結果は社内の誰が見てよい?で解説しています。
規定がないと困る場面
- 再検査に行かない社員に、受診を命じる根拠がない(「要再検査」に社員が行かないときの対応)
- 体調が明らかに悪い社員が「働ける」と言うが、休ませる根拠がない
- 主治医の「復職可」の診断書だけで、復職を認めざるを得なくなる
- 短い復職と休職を何度も繰り返し、休職期間が実質的に延び続ける
- 産業医面談への協力を求める根拠がない(産業医面談を拒否されたら)
就業規則を見直すときの注意点
- 常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成・変更したら、労働者の過半数代表などの意見を聴いて労働基準監督署に届け出ます(労働基準法第89条・第90条)。
- 休職期間の短縮など労働者に不利益な変更は、変更の必要性や内容の相当性などが問われます(労働契約法第9条・第10条)。
- 健康管理の規定は、医学的な判断と労務管理の両方にかかわります。規定の文言は社会保険労務士などの専門家と、運用の実際は産業医と相談しながら決めるのが安全です。
- 衛生委員会で、健康診断・休職・復職の運用ルールを審議しておくと、社員への周知にも役立ちます。
うえまつ産業医事務所にご相談ください
休職・復職の判定基準や、受診命令・就業制限の運用について、産業医の立場から就業規則の見直しに助言します(規定の文言は社会保険労務士の先生と連携して整えることをおすすめしています)。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
就業規則に休職の規定がないと、社員を休職させられませんか?
休職は法律で定められた制度ではないため、就業規則などに規定がないと、休職を命じる根拠があいまいになります。休職の要件、期間、給与、期間満了時の扱いを規定しておくことをおすすめします。
会社は社員に再検査の受診を命じられますか?
再検査の受診を義務づける法律の規定はありませんが、就業規則に受診命令の規定があり、業務上の必要性がある場合は、業務命令として受診を命じられることがあります。
ストレスチェックの受検を就業規則で義務にできますか?
ストレスチェックの受検は労働者の義務ではなく、受検しないことを理由とした不利益な取扱いは認められません。就業規則では受検を勧奨する規定にとどめます。
復職の判断を産業医に任せる規定は必要ですか?
主治医の診断書に加えて、会社が指定する医師(産業医)の面談を経て会社が判断する、という手続きを規定しておくと、職場の実情に合った判断がしやすくなります。
まとめ
就業規則の健康管理の規定は、社員の健康を守り、会社が適切に判断するための土台です。受診命令、就業制限、休職、復職、健康情報の5分野を規定し、運用のルールを衛生委員会で共有しておきましょう。規定の文言は専門家と、運用の実際は産業医と相談しながら整えることをおすすめします。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 個人情報保護法(e-Gov法令検索)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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