職場復帰支援プランの作り方|書く6項目と記入例、段階的な就業上の配慮・試し出勤の注意点を産業医が解説

休職していた社員の復職が決まりそうなとき、「職場復帰支援プランを作ってください」と言われても、何をどこまで書けばよいのか迷う方は多いと思います。この記事では、復職判定と復職後のフォローを担当している京都の嘱託産業医が、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」にもとづいて、職場復帰支援プランに書く6つの項目と記入例、段階的な就業上の配慮の進め方を解説します。
結論:復職を決める前に、6つの項目を書いたプランを作って共有する
- 職場復帰支援プランは、手引きの5つのステップのうち第3ステップ(職場復帰の可否の判断と職場復帰支援プランの作成)で作ります。
- 書く項目は①職場復帰日、②管理監督者による就業上の配慮、③人事労務管理上の対応、④産業医等の意見、⑤フォローアップ、⑥その他の6つです。
- 本人・上司・人事・産業医が話し合って作り、配慮をいつまで続け、いつ見直すかまで決めておきます。
- 復帰先は、原則としてまずは元の職場です(異動が不調のきっかけになった場合などは別に検討します)。

職場復帰支援の5つのステップとプランの位置づけ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 第1ステップ | 病気休業の開始と休業中のケア(休職中の連絡) |
| 第2ステップ | 主治医による職場復帰可能の判断(診断書) |
| 第3ステップ | 職場復帰の可否の判断と職場復帰支援プランの作成 |
| 第4ステップ | 最終的な職場復帰の決定 |
| 第5ステップ | 職場復帰後のフォローアップ |
リワーク(復職支援プログラム)は下の節、主治医の「復職可」の診断書だけで判断しない理由と会社の復職基準は主治医の「復職可」だけで復帰させていいのかで解説しています。
復職の申出からプランを作るまでの準備
主治医から「復職可能」と診断されたら、本人から会社に復職の意思を伝えてもらい、次のものをそろえます。主治医の「復職可」は日常生活ができる程度の回復を指すことも多いため、実際の業務に耐えられるかは、産業医が就業の観点から確認します。
- 復職願と主治医の診断書(復職が可能という判断と、就業上の配慮についての意見)
- 生活記録表(起床・就寝の時刻、日中の活動、外出を1〜2週間ほど記録し、生活リズムが整っているかを確認)
- 産業医面談(必要に応じて、本人の同意を得て主治医に情報提供を依頼)
産業医の意見と主治医からの情報をもとに、会社が復職の可否を判断し、あわせて職場復帰支援プランを作ります。
職場復帰支援プランに書く6つの項目と記入例
| 項目 | 書く内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| ① 職場復帰日 | 復帰する日 | 〇月1日(月)から |
| ② 管理監督者による就業上の配慮 | 業務のサポートの方法、業務の内容や量の変更、段階的な配慮(残業・深夜業・出張の制限、短時間勤務など)、通院のための配慮 | 復帰後1か月は定時勤務・残業なし・出張なし。顧客対応は上司が同席。通院日は休暇を優先して取得 |
| ③ 人事労務管理上の対応 | 配置転換や異動の必要性、短時間勤務・フレックスタイムなど勤務制度の利用 | 元の部署に復帰。短時間勤務は就業規則の定めに沿って2週間利用 |
| ④ 産業医等の意見 | 医学的な見地からの意見、安全配慮のための助言 | 睡眠のリズムが安定するまで夜間の対応は避ける。1か月後に面談して制限を見直す |
| ⑤ フォローアップ | 上司と産業医等によるフォローの方法、就業上の配慮を見直す時期、配慮が不要になる時期の見通し | 上司は毎週短い面談。産業医面談は復帰1か月後・3か月後。おおむね3か月で通常勤務を目指す |
| ⑥ その他 | 本人が自分で責任を持って行うこと、試し出勤制度の利用、外部の復職支援サービスの利用 | 通院と服薬を続け、体調の変化は早めに上司か人事に伝える |
段階的な就業上の配慮の進め方(例)
段階的な勤務は法律上の義務ではありません
休職からの復職は、原則として「定時勤務で、元の業務を通常どおり行えること」が基準です。そのうえで、再休職を防ぐために、残業や出張の制限など期間を区切った配慮を会社の判断で行います。短時間勤務や試し出勤は、就業規則などで制度を設けている会社が、その定めに沿って行うものです。

復職は、骨折のリハビリと同じように考えます。ギプスが外れた(主治医から復職可の診断が出た)からといって、翌日からフルマラソンを走らせる(残業ありの通常業務に戻す)ことはしません。負荷は一度に戻さず、期間を区切って少しずつ上げ、区切りごとに産業医や人事が面談して、次の段階に進めるかを確かめます。次は一例で、実際の期間や内容は本人の状態と主治医・産業医の意見をもとに決めます。
| 期間 | 勤務の例 | 見直しの目安 |
|---|---|---|
| 復帰〜2週間 | 定時勤務(短時間勤務がある会社は短時間から)、残業・出張なし、定型的な業務 | 遅刻・欠勤がない、疲れが翌日に残らない |
| 3週間〜1か月 | 定時勤務、担当業務の一部を少しずつ再開 | 業務の質と量が戻りつつある |
| 1〜3か月 | 担当業務を元に近づける。残業は少しずつ | 産業医面談で制限の解除を検討 |
| 3か月以降 | 通常勤務。必要に応じてフォロー面談を続ける | 再発のサインがないか上司が見守る |
業務をコピー取りなどの雑務だけにすると、かえって本人の自信や意欲を下げることがあります。本人ができる仕事を、量を調整しながら任せることが大切です。
試し出勤制度を使う場合の注意点
正式な復職の前に、模擬出勤(図書館などで勤務時間に合わせて過ごす)、通勤訓練(通勤経路で職場の近くまで行って戻る)、試し出勤(一定期間、職場に出てみる)を行う会社もあります。手引きでは、次の点をあらかじめ決めておくよう求めています。
- 試し出勤中の処遇(賃金の有無と額)と、人事労務管理上の位置づけ
- 災害が起きたときの扱い(会社が指示して作業をさせる場合は、労働基準法や労災保険の適用を受けることがある)
- 期間(いたずらに長期にわたらないようにする)
たとえば「最初の1週間は午前中だけ出社し、空き会議室などで読書や簡単な作業をして過ごす」「次の1週間は定時まで自席で簡単な事務作業をする」といった形で、通勤に耐えられるか、職場で安定して過ごせるかを確かめます。試し出勤の期間が休職中の扱いか復職後の扱いか、賃金・労災・通勤の扱いをどうするかを事前に文書で決め、本人に説明しておきます。
リワーク(復職支援プログラム)を使うとき
休職中の「自宅で休んでいる状態」から、いきなり「週5日職場で働く状態」に移るのは、心身にとって大きな負担です。その間をつなぐのがリワーク(復職支援プログラム)で、職場に近い環境の施設に一定期間通い、復帰に向けたリハビリテーションを行います。おもに次の3種類があります。
- 医療リワーク:医療機関が行います(健康保険や自立支援医療が使えます)。再休職の予防や、病気の自己管理がおもな目的です。
- 職リハリワーク:地域障害者職業センターが行います(原則無料)。職場復帰に向けた会社との調整に強みがあります。
- 就労移行支援事業所などのリワーク:民間の事業者や福祉サービスによる支援です。
プログラムでは、決まった時間に毎日通う練習(生活リズムを整える)から始まり、パソコンを使った模擬的な事務作業、グループワークでの対人関係の練習、不調に至った考え方のくせの振り返りなどを、数か月かけて行います。会社にとっても、本人の回復の程度を客観的に確かめやすくなります。
人事・保健師の実務メモ
- リワークを利用するかは、主治医の意見をふまえて本人の希望で決める。利用状況は、本人の同意を得て報告書を共有してもらう
- 復職判定の前に産業医面談を必ず行う手順を、就業規則や運用ルールに書いておく
- 保健師は復職後1・3・6か月を目安に面談し、勤怠と睡眠の状態を確認する
休職から復職までの社内ルール(休職期間、リワークの扱い、試し出勤の有無など)は、休職者が出てから考えるのではなく、あらかじめ就業規則などで決めておきましょう。治療と仕事の両立支援の考え方は治療と仕事の両立支援とはで解説しています。
現場の上司・同僚に伝えること
復職者を迎える職場からは「どう接していいかわからない」「また体調を崩されたら困るので、雑務だけ頼もう」という声がよく上がります。しかし、腫れ物に触るような扱いや過剰な配慮は、本人の孤立感や焦りを強め、再休職のきっかけになることがあります。
- 「気を遣いすぎず、これまでどおりフラットに接してほしい」と伝える
- 残業禁止などの就業上の配慮は必ず守り、その範囲で任せられる仕事はしっかり任せる
- 病名や休職の理由は、本人の同意なく職場に伝えない
- 上司には「本人への接し方」と「人事・産業医に連絡する目安(遅刻や欠勤が続く、表情が暗いなど)」を1枚にまとめて渡す
プランを作るときのよくあるつまずき
- 主治医の診断書だけで復職を決め、プランを作っていない(復職基準の作り方)
- 配慮の内容は決めたが、いつ見直すか、いつ終えるかを決めていない
- 上司に配慮の内容が伝わっておらず、復帰初日から通常の業務を任せてしまう
- 短時間勤務などを使いたいが、就業規則に定めがない(就業規則に入れておきたい健康管理の規定)
- 本人がプランの内容を知らない、納得していない
休職から復職までの流れ
- 休職させるか判断する(社員を休職させるべきか?)
- 休職中の連絡(休職中の社員への連絡のルール)
- 復職を判定する(主治医の「復職可」だけで復帰させていいのか)
- 復帰のプランを作る(職場復帰支援プランの作り方)(この記事)
- 休職期間が満了するとき(休職期間満了のときの対応)
うえまつ産業医事務所にご相談ください
当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「休職と復職をくり返している社員に、どう対応すればよいか」「主治医から『復職可』の診断書が出たが、このまま職場に戻してよいか」といったご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
うえまつ産業医事務所では、復職判定の面談から職場復帰支援プランへの意見、復帰後のフォローアップ面談まで、同じ産業医が一貫して担当します。臨時の面談や意見書の作成にも追加費用はかかりません。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
段階的な復職(短時間勤務など)は会社の義務ですか?
法律上の義務ではありません。厚生労働省の手引きでも、試し出勤は制度として設けることが勧められているにとどまり、短時間勤務は就業上の配慮の一例です。ただし裁判例では、当初は軽い業務に就けば、ほどなく元の業務を通常どおり行えるようになる場合も、復職できる状態に含めて判断されています(日本電気事件・東京地裁平成27年7月29日判決など)。休職期間の満了で退職扱いにする前には、この見込みも確認しておきましょう。
職場復帰支援プランは誰が作りますか?
会社(人事・上司)が、産業医の意見と本人の希望を踏まえて作ります。本人・上司・人事・産業医が話し合い、内容を共有することが大切です。
職場復帰支援プランには何を書きますか?
厚生労働省の手引きでは、職場復帰日、管理監督者による就業上の配慮、人事労務管理上の対応、産業医等の意見、フォローアップ、その他(本人が行うこと、試し出勤制度の利用など)の6項目が示されています。
復職後の配慮はどのくらいの期間続けますか?
本人の状態によりますが、配慮を行う場合は1〜3か月ほどの期間を区切ることが多いです。プランには、配慮を見直す時期と、配慮が不要になる時期の見通しを書いておきます。
復職するときは元の部署に戻すべきですか?
手引きでは、原則として、まずは元の慣れた職場への復帰が勧められています。ただし、異動や職場の人間関係が不調のきっかけになった場合などは、配置転換も検討します。
まとめ
職場復帰支援プランは、職場復帰日、就業上の配慮、人事労務管理上の対応、産業医等の意見、フォローアップ、その他の6項目を書き、本人・上司・人事・産業医で共有して作ります。配慮は期間を区切って段階的に戻し、見直す時期と終える時期まで決めておくことが、再休職を防ぐいちばんの近道です。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 治療と仕事の両立支援ナビ(厚生労働省)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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