休職期間満了のときの対応|自然退職と解雇の違い、満了前に会社がやること、片山組事件と復職判断、労災の場合の注意点を産業医が解説

「休職期間がもうすぐ終わるが、まだ復職できそうにない。退職になるのか?」。休職中の社員を抱える人事・総務の方から、最も慎重さを求められる相談の一つです。休職期間の満了は、本人の生活に大きく関わり、トラブルにもなりやすい場面です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、休職期間満了の扱い、満了前に会社がやること、復職の可否の判断、業務上の病気の場合の注意点を解説します。
結論:満了の扱いは就業規則で決まる。満了前に復職の可否を丁寧に確認し、記録を残す
- 私傷病の休職制度と、期間満了時の扱い(自然退職か解雇か)は、就業規則で決まります。法律で一律に決まっているわけではありません。
- 準備は満了の2〜3か月前から始め、本人への連絡、主治医の診断書、産業医の面談で、復職できるかを確認します。
- 職種を限定せずに雇っている社員は、元の業務が難しくても、ほかに就ける業務がないかを検討する必要があります(片山組事件・最高裁平成10年4月9日判決)。
- 仕事が原因の病気やけがで休業している場合は、休業期間とその後30日間は解雇できません(労働基準法第19条)。

休職期間満了の扱いは就業規則しだい
| 就業規則の定め | 満了時の扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 「休職期間が満了しても復職できないときは、退職とする」 | 自然退職(期間満了で労働契約が終了) | 復職できるかの判断が適切でないと、退職の効力が争われることがある |
| 「休職期間が満了しても復職できないときは、解雇する」 | 解雇 | 30日前の予告または予告手当が必要(労働基準法第20条)。解雇権の濫用にあたらないかも問われる(労働契約法第16条) |
| 休職期間の延長の定め | 会社の判断で延長できる | 延長するかどうかの基準を決めておかないと、社員によって扱いがばらつく |
休職の規定は就業規則に入れておきたい健康管理の規定で解説しています。再休職のときに期間を通算する規定がないと、休職と復職を繰り返す場合に対応しにくくなります。なお、休職について定めをする場合は、その内容を労働条件として明示する必要があります(労働基準法施行規則第5条第1項)。
満了前に会社がやること

- 満了日を本人に通知する:満了日と、復職を希望する場合の手続き(診断書の提出、産業医面談など)、満了までに復職できない場合の扱いを、書面で伝えます。満了の2〜3か月前が目安です。休職中から定期的に連絡を取っておくと、本人も落ち着いて話し合えます(休職中の社員への連絡のルール)。
- 主治医の診断書をもらう:復職の可否、就業上の配慮、見通しを確認します。必要に応じて、本人の同意を得て主治医に情報提供を依頼します。
- 産業医が面談する:生活リズム、通勤、業務の遂行能力を確認し、復職の可否と条件について意見を述べます(主治医の「復職可」だけで復帰させていいのか)。
- ほかに就ける業務を検討する:元の業務が難しい場合、配置転換や業務の軽減で就ける業務がないかを検討し、その経過を記録します。
- 判断と理由を記録する:誰が、どの資料をもとに、どう判断したかを残します。
| 時期の目安 | 会社がすること |
|---|---|
| 満了の2〜3か月前 | 就業規則を確認する。本人に満了日と、復職を希望する場合の手続き(診断書の提出、産業医面談など)を書面で伝える |
| 満了の1〜2か月前 | 本人の同意を得て、主治医に職場の業務内容を伝え、意見を聴く。産業医が面談する |
| 満了の1か月前ごろ | 産業医の意見を踏まえ、復職の可否と、復職する場合の配慮(勤務時間・業務内容)を検討する |
| 満了日まで | 会社としての判断を本人に伝える。判断の根拠と経過を記録に残す |
復職できるかの判断のポイント
最高裁の片山組事件判決(平成10年4月9日)は、職種や業務内容を特定せずに雇用された労働者について、元の業務が十分にできなくても、能力・経験・地位、会社の規模・業種、配置・異動の実情からみて配置される現実的な可能性がある業務があり、本人がその業務を申し出ている場合は、労務の提供があるとみるべきだと示しました。
- 「元の業務に100%戻れるか」だけで判断しない
- 当初は軽い業務に就けば、ほどなく元の業務に戻れる見込みがあるかを検討する(段階的な勤務そのものは法律上の義務ではありません)(職場復帰支援プランの作り方)
- 障害がある場合は、障害者雇用促進法にもとづく合理的配慮も検討する
- 主治医と産業医の意見が違うときは、その理由を確認し、必要なら本人の同意を得て主治医と情報を共有する
主治医と産業医、それぞれの意見の位置づけ
主治医の診断書は大切な判断材料です。ただ、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が示しているように、主治医の判断は日常生活の回復の程度をもとにしていることが多く、職場で求められる業務まで遂行できるという判断とは限りません。
産業医は、職場の業務内容や通勤、勤務時間を踏まえて、「この職場で働ける状態か」「どんな配慮があれば働けるか」について意見を述べます。そして、最終的に復職か、満了による退職かを決めるのは会社です。医師の意見は、会社が判断するための根拠になるものと考えてください。

主治医と産業医の意見が分かれることもあります。その場合は、本人の同意を得たうえで、職場の業務内容を書面で主治医に伝え、意見をあらためて伺うのが一般的です。どの資料をもとに、どう判断したのかを残しておくことが、あとで説明を求められたときの支えになります。
仕事が原因の病気・けがの場合
業務上のけがや病気で療養のため休業している期間とその後30日間は、休職期間の満了を理由にした解雇はできません(労働基準法第19条)。メンタル不調でも、労災と認められる可能性がある場合は慎重な対応が必要です(精神障害の労災認定基準、労災の休業補償給付)。
退職となる場合に伝えること
- 退職日と、退職に必要な手続き
- 傷病手当金を退職後も受け取るための条件(退職日に出勤しないことなど。傷病手当金とは)
- 健康保険の任意継続や国民健康保険への切り替え
- 回復したときの再雇用の可能性(制度がある場合)
休職から復職までの流れ
- 休職させるか判断する(社員を休職させるべきか?)
- 休職中の連絡(休職中の社員への連絡のルール)
- 復職を判定する(主治医の「復職可」だけで復帰させていいのか)
- 復帰のプランを作る(職場復帰支援プランの作り方)
- 休職期間が満了するとき(休職期間満了のときの対応)(この記事)
うえまつ産業医事務所にご相談ください
当事務所によくあるご相談
うえまつ産業医事務所には、企業さまから「休職と復職をくり返している社員に、どう対応すればよいか」というご相談がよく寄せられます。同じようなことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
うえまつ産業医事務所では、休職中の面談、満了前の復職判定、主治医への情報提供依頼書の作成、ほかに就ける業務の検討への助言を、同じ産業医が継続して行います。臨時の面談や意見書の作成に追加費用はかかりません。法的な判断が必要な場合は、社会保険労務士・弁護士とあわせてご相談ください。顧問契約のない会社や、ほかに産業医がいる会社、社労士・保健師の方からの単発のスポット相談も受け付けています。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
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事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
休職期間が満了したら自動的に退職になりますか?
就業規則に「休職期間が満了しても復職できないときは退職とする」と定めていれば、自然退職となるのが一般的です。ただし、復職できるかの判断が適切でないと、退職の効力が争われることがあります。
休職期間満了の前に会社がやることは何ですか?
満了の2〜3か月前に満了日と扱いを本人に通知し、主治医の診断書と産業医の面談で復職の可否を確認します。元の業務が難しい場合は、ほかに就ける業務がないかも検討し、記録を残します。
元の仕事ができなければ復職不可としてよいですか?
職種を限定せずに雇用している社員の場合、元の業務が難しくても、配置される現実的な可能性がある業務があれば、すぐに復職不可とはいえません(片山組事件・最高裁平成10年4月9日判決)。
労災で休業している社員も休職期間満了で退職させられますか?
業務上のけがや病気の療養のため休業している期間とその後30日間は、解雇できません(労働基準法第19条)。私傷病の休職制度とは扱いを分けて考え、対応は社会保険労務士・弁護士に確認してください。
本人と連絡が取れない場合はどうすればよいですか?
電話やメールだけでなく、書面を郵送するなど、連絡を試みた記録を残しておくことが大切です。家族への連絡の方法も、本人の同意の範囲で事前に決めておくと、いざというときに慌てずにすみます。
満了直前に「復職可」の診断書が出ました。そのまま復職させるべきですか?
診断書は大切な材料ですが、それだけで決めず、産業医の面談で職場で働ける状態かを確かめることをおすすめします。満了日に間に合うよう、診断書の提出期限を早めに伝えておくと進めやすくなります。
休職期間を延長することはできますか?
就業規則に延長の定めがあれば、それに沿って判断します。定めがない場合でも延長を検討することはありえますが、ほかの社員との公平さにも関わります。延長した理由と期間を記録に残しておきましょう。
まとめ
休職期間満了の扱いは就業規則で決まりますが、満了前に復職の可否を丁寧に確認することが何より大切です。主治医の診断書、産業医の面談、ほかに就ける業務の検討、判断の記録をそろえ、本人に十分説明したうえで結論を出しましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 障害者雇用促進法(e-Gov法令検索)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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