産業医面談を拒否されたら?受ける義務がある面談・ない面談と、メンタル不調・休職復職での会社の対応

「産業医面談を勧めたのに、本人が受けたくないと言っている」。メンタル不調が疑われる社員や長時間労働の社員について、人事・総務の方からよくいただく相談です。面談を受けるかどうかは、面談の種類によって法律上の扱いが違います。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、受ける義務がある面談・ない面談の整理と、拒否されたときの対応を解説します。
結論:面談の種類で「受ける義務」が違う

| 面談・健診の種類 | 本人の受ける義務 | 根拠・ポイント |
|---|---|---|
| 定期健康診断 | あり(会社指定以外の医師で受けて結果を出すことも可) | 労働安全衛生法第66条第5項 |
| 長時間労働者の面接指導(申出後) | あり(他の医師で受けて結果を出すことも可) | 同法第66条の8第2項。一般の労働者は、月80時間超で疲労の蓄積がある人の申出により実施 |
| ストレスチェックの受検 | なし | 受けないことを理由とする不利益な取扱いは不可 |
| 高ストレス者の面接指導 | なし(本人の申出により実施) | 同法第66条の10第3項。申出を理由とする不利益な取扱いは禁止 |
| 休職・復職時の産業医面談 | 法律上の定めはない | 就業規則に定めがあれば、業務命令として受診・面談を命じられる場合がある |
| 体調不良が疑われる社員への面談 | 法律上の定めはない | 本人の同意を得て行うのが原則。安全配慮の観点から就業上の判断が必要 |

長時間労働者の面接指導を拒否されたら
一般の労働者の長時間労働の面接指導は、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人の申出により行います(労働安全衛生規則第52条の2・第52条の3)。会社は該当者に超えた時間の情報を通知しなければならず、産業医は申出をするよう勧奨できます。申出があれば会社は遅滞なく面接指導を行い、労働者は面接指導を受けなければなりません(労働安全衛生法第66条の8第2項)。
- 申出がない場合でも、産業医から面接指導を勧奨してもらう
- 「指定の医師はいやだ」という場合は、他の医師の面接指導を受けて結果を提出してもらう方法もある
- それでも面談しない場合は、労働時間の削減など会社として必要な措置を先に講じ、経緯を記録する
面接指導の結果と医師の意見の記録は5年間保存します。詳しくは過労死ラインとは?面接指導と安全配慮をご覧ください。
メンタル不調が疑われる社員が面談を拒否したら
いちばん多いのがこのケースです。法律上の受ける義務はありませんが、会社には社員の生命・健康を守る安全配慮義務があります。筆者は次の順で対応をおすすめしています。
- 拒否の理由を聞く:「評価に響くのでは」「病名を会社に知られるのでは」という不安が多い。産業医には守秘義務があり、会社に伝えるのは就業上の配慮に必要な範囲だけであることを説明する
- 呼び方を変える:「産業医面談」ではなく「最近の体調と働き方について、医師と10分話してみませんか」と、本人の負担を軽くする
- 主治医の受診を勧める:産業医面談がいやでも、医療機関の受診なら受ける人もいる
- 就業上の判断を先に行う:明らかに業務に支障が出ている、安全上の危険がある場合は、本人の同意がなくても、会社として業務量の調整や休養を検討する(産業医に状況を伝え、助言を受ける)
- 経緯を記録する:いつ、だれが、何を勧め、本人がどう答えたか
筆者の経験では、上司ではなく人事担当者や保健スタッフから、「あなたを守るための面談」と伝えてもらうと、受けてもらえることが多くなります。面談の場所や時間(業務時間内・オンラインなど)を本人に選んでもらうのも有効です。
休職・復職の場面で面談を拒否されたら
休職や復職の判断に産業医面談が必要な場合は、就業規則に「会社は産業医等の面談・受診を命じることができる」と定めておくことが大切です。判例上も、就業規則に合理的な定めがある場合の受診命令は有効と判断されたものがあります。復職を希望しながら産業医面談を拒む場合、会社は復職の可否を判断する材料がないため、復職を認めない判断にも合理性が出てきます。復職判定の考え方は主治医の「復職可」だけで復帰させていいのかで解説しています。
やってはいけない対応
- ストレスチェックの未受検や、高ストレス者の面接指導を申し出たこと・申し出なかったことを理由に、不利益な取扱いをする
- 本人の同意なく、病名や面談内容を職場に広める
- 「面談を受けないなら評価を下げる」と圧力をかける
- 拒否されたから何もしない(安全配慮義務の観点から、記録と必要な措置は必要)
うえまつ産業医事務所にご相談ください
面談を拒否する社員への対応や、就業規則の受診命令の規定についても、産業医の立場からご相談に応じます。面談はWebでも実施でき、本人が受けやすい形を一緒に考えます。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
- 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)
事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
産業医面談は拒否できますか?
面談の種類によります。定期健康診断と、申出後の長時間労働者の面接指導は、労働者に受ける義務があります(他の医師で受けて結果を提出することも可)。ストレスチェックの受検と高ストレス者の面接指導は本人の任意です。休職・復職時の面談は、就業規則に定めがあれば業務命令として命じられる場合があります。
ストレスチェックの面接指導を受けないと不利益がありますか?
ありません。高ストレス者の面接指導は本人の申出によって行うもので、申出をしたことを理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されています(労働安全衛生法第66条の10第3項)。
メンタル不調が疑われる社員が面談を拒否したら、会社はどうすればよいですか?
拒否の理由を聞き、産業医には守秘義務があることを説明し、主治医の受診も選択肢として勧めます。業務に明らかな支障や安全上の危険がある場合は、産業医の助言を受けて会社として業務量の調整や休養を検討し、経緯を記録します。
復職時の産業医面談を拒否されたら、復職させなくてもよいですか?
就業規則に産業医面談・受診を命じられる定めがあれば、面談を拒む場合は復職の可否を判断する材料がないため、復職を認めない判断にも合理性が出てきます。個別の判断は、就業規則の規定と経緯をふまえて行ってください。
まとめ
産業医面談を受ける義務があるかは、面談の種類で違います。健康診断と申出後の長時間労働の面接指導には受ける義務がありますが、ストレスチェック関連は任意で、不利益な取扱いは禁止です。メンタル不調が疑われる社員の拒否には、理由を聞いて不安を減らし、必要な就業上の措置を先に検討し、経緯を記録しましょう。休職・復職に備えて、就業規則の整備も大切です。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
産業医面談の基本:産業医面談とは|対象者と種類・流れ・話す内容・守秘義務
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
あわせて読みたい

