「不眠症」セルフチェックと受診の目安

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

今回は、「不眠症」についてお話しします。 日本人の成人の約2割が慢性的な不眠の症状を抱えていると言われており、特にストレスやプレッシャーの多い働く世代にとって、非常に身近で切実なテーマです。

1. 「眠れない」だけじゃない?不眠症の4つのタイプ

不眠症とは、睡眠が十分にとれない状態が続き、日中の強い眠気や集中力低下などの「不調」を伴う病気です。症状は大きく以下の4つに分けられます。

  • 入眠困難:布団に入っても、なかなか寝つけない
  • 中途覚醒:夜中に何度も目が覚めてしまう
  • 熟眠困難:睡眠時間は足りているはずなのに、休まった感じ(熟眠感)がしない
  • 早朝覚醒:予定よりずっと早く目覚めてしまい、その後眠れない

ここで特に注意していただきたいのが、「中途覚醒」や「早朝覚醒」です。 これらは、メンタルヘルス不調(うつ病など)の初期サインとして現れることが非常に多くあります。特に、早朝に目が覚めてしまい、かつ「朝が一番気分が重く、夕方にかけて少し楽になる(日内変動)」という波がある場合は、うつ病が隠れている可能性が高いため、早急な受診をおすすめします。

2. 客観的なセルフチェック「アテネ不眠尺度」

「最近よく眠れないけれど、病院に行くほどだろうか?」と迷ったときは、WHO(世界保健機関)が中心となって作成した世界共通のチェックツール「アテネ不眠尺度(AIS)」を試してみてください。

寝つき、夜中や早朝の目覚め、睡眠の質、日中の眠気や気分など、計8つの質問に対して「過去1ヶ月間に、週3回以上あった状態」を0〜3点で答える簡単なテストです。 合計スコアが「4点以上」で不眠症の疑いがあり、「6点以上」であれば専門医への相談が推奨される水準とされています(インターネット等で簡単に無料チェックが可能です)。

不眠の原因は、ストレスといった「こころ」の問題だけではありません。睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、その他の身体疾患、薬の副作用など、「治療できる原因」が隠れていることも多くあります。「ただの寝不足」と放置せず、原因を探ることが大切です。

3. 対処の基本は「眠ろうと頑張らない」こと

日常生活の中で不眠を改善するためには、「朝の光を浴びる」「日中の適度な運動」「夕方以降のカフェインや、寝る前の喫煙を控える」といった基本的な環境づくりに加えて、以下の【考え方(認知行動)のアプローチ】が非常に有効です。

  • 昼間の悩みを寝床に持ち込まない:夜中にふと心配事が浮かんだら、布団の中で考え続けず、一度起きて紙にメモし、「続きは明日の朝考えよう」と脳に切り替えのサインを送ります。
  • 夜中に時計を見ない・眠ろうと頑張らない:「早く眠らなきゃ」「もう深夜2時だ」と時計を見て焦るほど、脳は緊張して覚醒してしまいます。「眠れなければ、横になって目を閉じているだけでも身体は休まる」と開き直るくらいが、実は一番眠りに近づくコツです。

4. 医師と相談しながら、上手に

生活習慣を見直しても改善しない場合は、医師の処方による睡眠薬が役立ちます。最近の睡眠薬は安全性が大きく向上していますが、自己判断で量を増やしたり、急にやめたりするのは危険です。必ず医師と相談しながら、必要な期間だけ上手に活用してください。

また、最もやってはいけないのが「お酒の力を借りて眠る(寝酒)」です。アルコールは寝つきを良くする錯覚をもたらしますが、睡眠を極端に浅くし、中途覚醒や早朝覚醒を引き起こす最大の原因になります。

おわりに

「眠れない状態」が週3日以上、かつ1ヶ月近く続き、日中の仕事や生活につらさを感じているのであれば、「治療できる病気のサイン」です。「たかが睡眠」と一人で抱え込まず、早めに医療機関や職場の産業医にご相談ください。

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