ストレスチェックの集団分析とは|結果の見方(仕事のストレス判定図)、10人未満の扱い、職場環境改善の進め方と2027年4月の改正を産業医が解説
ストレスチェックの集団分析とは、ストレスチェックの結果を部署などの集団ごとに集計・分析し、職場のストレスの要因を明らかにして職場環境の改善につなげる取組です。労働安全衛生規則第52条の14にもとづく事業者の努力義務で、2027年4月1日からは、特定の個人を識別できない方法で行うことが規則に明記されます。
この記事では、京都で嘱託産業医としてストレスチェックの実施者も務めている筆者が、人事・総務の方に向けて、集団分析の結果の見方、集計単位の注意点、職場環境改善の進め方を整理します。

1. 集団分析の位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 労働安全衛生規則第52条の14(集団ごとの集計・分析と、その結果を勘案した措置) |
| 義務の程度 | 努力義務(ストレスチェックの実施そのものは50人以上の事業場で義務。50人未満も2028年4月1日から義務) |
| 結果の提供 | 集団の結果は個人の結果ではないため、本人の同意がなくても事業者に提供できる |
| 2027年4月からの改正 | 特定の個人を識別できない方法で行うことを規定。集計単位が10人を下回る場合は原則として集団分析を行わない |
個人の結果を本人の同意なく会社に提供することはできません。実施者と実施事務従事者の役割はストレスチェックの実施者は誰がなれる?で解説しています。
2. 集計単位と10人未満の部署
集計の単位が小さいと、回答した人が推測できてしまいます。2027年4月からの改正の施行通達では、集計・分析の単位が10人を下回る場合は原則として集団分析を行わないこととされ、57項目の合計点の平均を求める方法や「仕事のストレス判定図」を使う方法など、個人が特定されない方法であれば実施できる例が示されています。
- 10人未満の部署は、近い業務の部署とまとめて集計する
- 結果を共有する範囲(部署長、衛生委員会、経営層)をあらかじめ決めておく
- 回答率が低い部署は、結果の解釈に注意する
この点は、2026年6月30日に公布された改正省令(令和8年厚生労働省令第112号、2027年4月1日施行)で、集団分析を「特定の個人を識別することができない方法で」行うことが規則第52条の14に明記されたものです。厚生労働省のリーフレットでは、これまでの解釈を明文化したもので運用を変えるものではないとしたうえで、個人を識別できる方法で集団分析を行っても努力義務を果たしたことにはならない、と説明されています。
集計の単位は、結果を見てから変えるのではなく、実施の前に衛生委員会などで決めておきます。社員が20人ほどの会社でも、事業場全体を一つの集団として見るだけで、仕事の量の負担が大きいのか、上司や同僚の支援が足りないのかといった傾向はつかめます。人数の少ない単位で何をどこまで出すかは、実施者(医師・保健師など)と相談して決めると安全です。
3. 結果の見方:仕事のストレス判定図
職業性ストレス簡易調査票(57項目)を使っている場合、「仕事のストレス判定図」で集団の状態をつかむのが一般的です。

| 見るところ | 意味 |
|---|---|
| 仕事の量的負担 | 仕事の量や時間のプレッシャー |
| 仕事のコントロール | 自分のペースや方法で仕事を進められる度合い |
| 上司の支援・同僚の支援 | 困ったときに助けてもらえる度合い |
| 総合健康リスク | 全国平均を100として、集団の健康リスクを示す。値が大きいほどリスクが高い |
数字だけで判断せず、前年との比較、部署の業務の繁閑、人員の変化などとあわせて読み取ります。
4. 職場環境改善の進め方
- 結果の共有:衛生委員会や部署長に、個人が特定されない形で結果を伝える
- 職場での話し合い:従業員が参加して、「よい点」と「改善したい点」を出し合う(参加型の職場環境改善)
- 改善計画:実行できる小さな改善を2〜3個に絞り、担当と期限を決める
- 実施と見直し:数か月後に進み具合を確認し、翌年のストレスチェックで変化を見る
話し合いには、こころの耳で公開されている「職場環境改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」などのツールが使えます。職場のストレスの原因の見つけ方は職場のストレス対策でも紹介しています。
5. 集団分析を「犯人探し」にしない
- 結果が悪かった部署の管理職を責めると、次回から正直に回答されなくなる
- 「どうすれば働きやすくなるか」を一緒に考える場として位置づける
- 人員不足や業務量など、部署の努力だけでは変えられない要因は、会社として対応する
6. 高ストレス者の面接指導とのつながり
集団分析は職場全体の対策、面接指導は個人への対策です。高ストレス者が多い部署では、面接指導の申出を待つだけでなく、相談窓口の周知や職場環境改善を急ぐ必要があります(高ストレス者の面接指導の流れ)。
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ストレスチェックのコラム
よくある質問
ストレスチェックの集団分析は義務ですか?
集団分析は、労働安全衛生規則第52条の14にもとづく努力義務です。ただし、職場環境の改善に役立つため、ストレスチェックとあわせて行うことが勧められています。
10人未満の部署は集団分析できますか?
2027年4月からの改正の施行通達では、集計単位が10人を下回る場合は原則として集団分析を行わないとされています。近い部署とまとめて10人以上にするか、合計点の平均を求める方法など個人が特定されない方法で行います。
集団分析の結果は本人の同意なく会社に提供できますか?
集団の結果は個人の結果ではないため、本人の同意がなくても事業者に提供できます。ただし、集計単位が小さいと個人が推測できるため、特定の個人を識別できない方法で行う必要があります。
集団分析の結果を職場環境改善にどう活かせばよいですか?
結果を個人が特定されない形で共有し、従業員が参加する話し合いで改善点を出し合い、実行できる改善を2〜3個に絞って取り組みます。数か月後に進み具合を確認し、翌年の結果で変化を見ます。
社員が20人ほどの会社でも、集団分析に意味はありますか?
あります。事業場全体を一つの集団として見るだけでも、仕事の量の負担が大きいのか、職場の支援が足りないのかといった傾向はつかめます。翌年の結果と比べることで、取り組みの効果を確かめる材料にもなります。なお、集計の単位が10人を下回る場合は、原則として集団分析を行いません。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 労働安全衛生規則(第52条の14)(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」(令和8年6月30日 基発0630第2号)
- 厚生労働省「ストレスチェック制度について」
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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