睡眠時無呼吸症候群の気づき
皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。
今回は、「しっかり寝たはずなのに、日中どうしても眠い」というお悩みの背景に隠れているかもしれない【睡眠時無呼吸症候群(SAS)】についてお話しします。
1. SASのメカニズムと「940万人」の現実
SAS(Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に気道(空気の通り道)が塞がり、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や低呼吸が何度も繰り返される病気です。
血液中の酸素が不足することで心臓に激しい負担がかかり、放置すれば動脈硬化を進行させ、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、さらには脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる疾患の引き金となります。
国際的な推計によると、日本で中等症以上のSASに該当する人は「約940万人」にのぼるとされています。しかし、実際にCPAP(シーパップ)などの治療を受けているのは約65万人に過ぎず、大多数の方が未診断のまま放置されているのが現状です。
2. 「ただのいびき」で済まされない職場の安全リスク
産業保健の視点で特に見過ごせないのが、日中の強烈な眠気による「労働災害・事故のリスク」です。 運転業務、機械操作、高所作業などを行う従業員にとって、一瞬の居眠りは重大な事故に直結します。
以下のサインに一つでも当てはまる場合は、要注意です。
- いびきが時折止まり、大きな呼吸とともに再びかき始める
- 寝ている時に息が止まる、息苦しくて目が覚める
- 日中に強い眠気や、だるさ(倦怠感)がある
- 起きた時に頭痛がある、熟睡感がない
本人は睡眠中の無呼吸に気づきにくいため、ご家族やパートナーからの「いびきが止まっていたよ」「息をしていない時があるよ」という指摘が最大の手がかりになります。
3. 疑った時のアクションと、4つの生活改善策
「もしかして」と思ったら、まずは医療機関(呼吸器内科や耳鼻咽喉科など)を受診してください。 自宅でできる簡易検査から始められ、診断がつけば「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」というマスクを使った標準治療(保険適用)を受けることができます。(※受診前に、そのクリニックがSASの精密検査や治療に対応しているかホームページや電話で確認しておくとスムーズです。)
同時に、以下の生活習慣の見直しも非常に重要です。
- 適正体重を目指す:肥満は気道が狭くなる最大の原因です。目標体重の目安は「22 × 身長(m) × 身長(m)」で計算できます。
- 就寝前の飲酒と喫煙を控える:アルコールは気道の筋肉を緩め、無呼吸をさらに悪化させます。
- 横向きで寝る:仰向けよりも気道が確保されやすく、症状が出にくくなります。抱き枕の活用も有効です。
- 鼻づまりを改善する:鼻炎などで鼻が詰まると口呼吸になり気道が狭まるため、耳鼻科で治療しましょう。
おわりに
SASは、適切な診断を受ければ「改善し、治療できる」病気です。
企業の人事・労務担当者の方も、健康診断の問診結果(いびきや日中の眠気に関する項目)に気を配り、必要な従業員に「一度、専門医に診てもらいませんか?」と受診を促す仕組みづくりが重要です。 その一声が、従業員の大切な健康と、職場の安全の両方を守ることに繋がります。ご自身の睡眠に少しでも不安がある方は、早めに医療機関や産業医にご相談ください。
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