企業を揺るがす「更年期離職」の深刻さ
Contents
皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。
今回は、組織のマネジメント課題として近年急速に注目を集めている【更年期離職(更年期ロス)】についてお話しします。
長年会社を支えてきた40代・50代の優秀な女性社員から、ある日突然「退職したい」と申し出があったら。その「親の介護で」「最近体力がもたなくて」という言葉の裏には、実は「更年期障害による心身の限界」が隠れているかもしれません。
1. 会社を静かに去る「見えない離職」の大きな代償
各種調査や経済産業省の推計によると、更年期の症状が原因で離職したり、昇進を辞退したりする女性は年間数十万人にのぼるとも言われ、その経済損失は数千億円規模になると試算されています。
40代〜50代の女性社員といえば、現場の第一線で実務を回し、後進の育成を担い、時には管理職として組織を牽引する中核世代です。 そんな代わりの効かない貴重な人材が、更年期による心身の不調を誰にも相談できず、「これ以上周りに迷惑をかけられない」「今のパフォーマンスでは会社に居づらい」と抱え込み、ひっそりと会社を去ってしまう。これが「更年期ロス」の残酷な現実です。
さらに深刻なのは、退職理由として「更年期の症状が辛いから」と正直に人事や上司に伝える人がほとんどいないという点です。そのため企業側は、「なぜあの優秀な人が突然?」と本当の理由も分からないまま、大切な人材を失い続けているのです。
2. 企業が「更年期ロス」を防ぐための3つのアクション
更年期の問題を「個人の体調不良」として放置するのではなく、「経営課題」として企業が救済策(防波堤)を用意しておくことが強く求められています。
① 「更年期はタブーではない」とトップから発信する
まずは、社内にある「更年期=口に出してはいけないもの」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を変えることが第一歩です。 経営層や人事からトップダウンで、「更年期は誰もが通る道であり、会社としてしっかりサポートする」というメッセージを発信しましょう。同時に、管理職向けの研修を実施し、正しい知識を啓発することが、当事者が声を上げやすい心理的安全性の土台となります。
② 「休む」「緩める」選択肢を制度化する
更年期の症状には波があり、日によって体調が大きく変動するのが特徴です。「フルタイムで完璧に働くか、退職するか」という極端な二択にならないよう、制度の拡充が必要です。 「時間単位の有給休暇」「フレックスタイム制」「テレワークの活用」など、その日の体調に合わせて「働き方を柔軟に調整できるカード」を会社が用意しておくことが、離職を防ぐ最も強力な武器になります。
③ 気軽に相談できる「社外の専門家」の窓口を置く
社内の上司や同僚には「更年期だと知られたくない」「評価が下がるのが怖い」と感じる人が大半です。社内の人間には話しづらい悩みを、安心して相談できる産業医や保健師、または外部のEAP(従業員支援プログラム)などの専門窓口を設置し、「困ったらここに駆け込んでいい」というルートを明確に社内周知しておきましょう。
おわりに
更年期の不調は、永遠に続くものではありません。 その辛い時期さえ乗り越えれば、また元のパフォーマンスで、あるいはそれ以上の深い知見を持って組織に貢献してくれる「底力」を持った世代です。
「その時期」を、ご本人だけに背負わせるのではなく、会社全体でどうやって一緒に乗り越えるか。この仕組みづくりこそが、これからの企業に求められる真の多様性(ダイバーシティ&インクルージョン)の形ではないでしょうか。ぜひ、自社の制度や相談窓口のあり方を見直してみてください。
この記事を書いた産業医に、御社の状況を相談しませんか
嘱託産業医 月額30,000円〜/従業員50名未満の顧問契約 月額20,000円(法令上の業務を含む)/1回だけのスポット相談 20,000円。
営業日は当日返信、Web面談は最短翌営業日。「今の産業医が来てくれない」「50名を超えた」「復職判断に迷っている」といったご相談を多くいただいています。
