ストレスチェックの集団分析、10人未満の部署はどうする?――2027年4月から「個人が特定されない方法で」が明文化
「ストレスチェックの集団分析の結果が届きました。ただ、うちは部署ごとの人数が少なくて、数字を見ると誰の回答か想像がついてしまいそうです。どう扱えばよいでしょうか」――人事や総務の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げます。集団分析は、個人が特定されない単位で行い、結果は「誰が」ではなく「職場のどこに負担が集まっているか」を見るために使うものです。2026年6月に公布された改正省令で、この考え方が2027年4月1日から規則の条文にはっきり書かれることになりました。この記事では、改正の要点と、人数の少ない部署の扱い、結果を職場改善につなげる手順をお伝えします。

漫画のセリフ(テキスト)
1コマ目:総務担当者が、集団分析の結果の紙を見て汗をかいている。セリフ「経理課は3人…誰の回答か分かりそう」
2コマ目:メーくんが登場して、紙をのぞきこむ。セリフ「10人未満の単位は原則として分析しません」
3コマ目:メーくんが、小さな部署の箱を2つ合わせて1つの大きな箱にするしぐさで説明。セリフ「近い部署とまとめて10人以上に」「単位は結果を見る前に決めます」
4コマ目:総務担当者がほっとした顔で、メーくんと一緒に「職場改善」と書かれたホワイトボードの前に立つ。セリフ「犯人探しじゃなく職場の改善に使うんですね」
集団分析とは:個人の結果とは別のもの
ストレスチェックの結果には2種類あります。一つは、受検した本人に通知される「個人の結果」です。これは本人の同意がなければ会社に提供できません。もう一つが、部署などの集団ごとに結果を集計・分析した「集団分析」の結果で、職場環境の改善に使うためのものです。
集団分析と、その結果を踏まえた職場環境の改善は、労働安全衛生規則52条の14で事業者の努力義務とされています。2028年4月からストレスチェックが義務になる50人未満の事業場でも、集団分析は努力義務の扱いです(50人未満の義務化の記事はこちら)。
2027年4月から何が変わるのか
2026年6月30日に「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」(令和8年厚生労働省令第112号)が公布され、集団分析を「特定の個人を識別することができない方法で」行うことが、規則52条の14に明記されました。施行は2027年4月1日です。
厚生労働省のリーフレットでは、これは従来の解釈を明文化したもので、運用を変えるものではないと説明されています。そのうえで、個人を識別できる方法で集団分析を行っても努力義務を果たしたことにはならず、プライバシー保護の観点から許されない、とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正の内容 | 集団分析は「特定の個人を識別することができない方法で」行う(規則52条の14第1項) |
| 公布・施行 | 2026年6月30日公布、2027年4月1日施行 |
| 位置づけ | これまでの解釈の明文化(運用の変更ではない) |
| 10人未満の集団 | 個人が特定されるおそれがあるため、原則として集団分析を行わない |
人数の少ない部署はどうするか
リーフレットでは、集計・分析の単位が10人を下回る場合は、個人が特定されるおそれがあるため、原則として集団分析を行わないこととされています。小規模の事業場では、10人以上の集団になるよう単位を工夫するよう求められています。
実務では、次のような工夫が考えられます。
- 人数の少ない部署は、業務の近い部署とまとめて10人以上の単位にする
- 事業場全体を一つの集団として、まず全体の傾向を見る
- 集計の単位は、結果が出る前に衛生委員会などで決めておく(結果を見てから単位を変えない)
なお、リーフレットには、全57項目の合計点の平均を求める方法や、「仕事のストレス判定図」を使う方法など、個人が特定されにくい分析方法の例も示されています。人数の少ない単位で何をどこまで出すかは、実施者(医師・保健師など)と相談して決めるのが安全です。

漫画のセリフ(テキスト)
場面:会議室で、メーくんがホワイトボードに描いた2つのグラフ(「仕事の量とコントロール」「上司・同僚の支援」と見出しのある図)を指さして説明し、総務担当者と社長がうなずいている。
セリフ:最大2つ、各25字以内(一字一句そのまま書く)
・メーくん「全国平均は100。高い所の理由を探します」
・社長「仕事が多いのか、支援が足りないのか、か」
現場から
集団分析の報告会で、ある部署の数字が悪いと、その部署の管理職の方が責められているように感じてしまうことがあります。「犯人探しではなく、仕事の量や進め方のどこに無理があるかを一緒に探す場です」と最初にお伝えすると、現場から具体的な改善案が出やすくなるように感じます。
結果の読み方:「仕事のストレス判定図」
集団分析でよく使われるのが「仕事のストレス判定図」です。厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票(57項目)の回答から、主に次の2つの視点で職場の状態を見ます。
- 仕事の量とコントロール:仕事の量が多いか、自分のペースややり方で仕事を進められるか
- 職場の支援:上司や同僚から必要な支援を受けられているか
それぞれ、全国の平均を100とした「健康リスク」という数字で示されます。100より高いほど、その職場の働き方がストレス反応につながりやすい状態にあると読みます。大切なのは、数字の高低だけで判断せず、「仕事の量が多いのか」「支援が足りないのか」と、どこに原因がありそうかを見ることです。原因によって、打つ手がまったく変わるからです。
実務のポイント:結果を職場改善につなげる手順
- 集計の単位と結果の共有範囲を決める:10人以上の単位で集計し、結果を誰に、どこまで共有するかを先に決めます。
- 衛生委員会などで全体の傾向を確認する:前年と比べて変化した点、健康リスクが高い集団を確認します。
- 現場の声を聞く:数字の背景にある具体的な困りごと(人手、締め切り、情報共有など)を、その職場の人たちから聞きます。
- 小さな改善を1〜2個決める:会議の時間、業務の分担、相談しやすい仕組みなど、すぐ始められることから選びます。厚生労働省の「職場環境改善のためのヒント集」も参考になります。
- 翌年の結果で振り返る:改善の前後で数字や職場の声がどう変わったかを確かめます。
集団分析の結果は、管理職の評価のために使うものではありません。「責められる」と受け取られると、翌年から正直な回答が集まりにくくなります。職場全体で働きやすさを考える材料として扱うことが、制度を長く生かすコツです。
よくあるご質問
Q1. 集団分析の結果を会社が受け取るのに、社員の同意は必要ですか。
A. 個人が特定されない方法で集計された集団分析の結果は、個人の結果とは扱いが異なります。ただし、人数の少ない単位では個人が推測されやすいため、10人を下回る単位では原則として集団分析を行わないこととされています。集計の単位は、実施者と相談して決めてください。
Q2. 社員が20人ほどの会社です。集団分析に意味はありますか。
A. 事業場全体を一つの集団として見るだけでも、仕事の量の負担が大きいのか、支援が足りないのかといった傾向はつかめます。翌年と比べることで、取り組みの効果を確かめる材料にもなります。
Q3. 集団分析をしなかった場合、罰則はありますか。
A. 集団分析は努力義務で、行わないことへの罰則は設けられていません。ただ、ストレスチェックの目的の一つは職場環境の改善です。個人の結果を返すだけで終わらせず、できる範囲から取り組むことをおすすめします。
まとめ
- 集団分析は、2027年4月1日から「特定の個人を識別できない方法で」行うことが規則に明記されます(これまでの解釈の明文化)。
- 10人を下回る単位では、原則として集団分析を行いません。人数の少ない部署はまとめて集計します。
- 「仕事のストレス判定図」では、仕事の量・コントロールと職場の支援の2つの視点で、どこに負担があるかを見ます。
- 結果は犯人探しではなく、職場の声を聞いて小さな改善を始める材料として使いましょう。
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うえまつ産業医事務所のストレスチェックWebは、厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票」に準拠し、事業場ごとに57項目版と80項目版を選べます。集団分析込みで受検者1名あたり330円(税込)、最低3,300円です。産業医契約のない会社もお申し込みいただけます。受検画面はデモでお試しいただけます。
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参考資料
[1] 厚生労働省リーフレット「ストレスチェックの集団分析に関する労働安全衛生規則が改正されました」(2026年7月)
[2] 労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第112号、2026年6月30日公布、2027年4月1日施行)、施行通達(令和8年6月30日付け基発0630第2号)
[3] 労働安全衛生規則52条の14(e-Gov法令検索)
[4] 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
[5] 厚生労働省「職場環境改善のためのヒント集」(こころの耳)

