休職期間の満了が近い社員への対応――復職できないときの手順と、産業医の意見の位置づけ
「休職中の社員の休職期間が、あと2か月で満了します。まだ復職のめどは立っていないようです。このまま満了日に退職扱いにしてよいのでしょうか」――人事の方や、顧問先を持つ社労士の先生から、こうしたご相談をよくいただきます。
結論から申し上げます。満了日を迎える前に、①就業規則の定めを確認し、②本人の回復の状況を主治医と産業医の意見で確かめ、③会社として判断した過程を記録に残すことが大切です。準備は満了の2〜3か月前から始めるのがおすすめです。この記事では、その手順と、判断の中で産業医の意見がどんな位置づけになるのかをお伝えします。

休職制度は「会社のルール」で決まる
まず押さえておきたいのは、私傷病による休職は法律で一律に決まっている制度ではなく、それぞれの会社が就業規則などで定める制度だということです。労働基準法施行規則5条1項では、休職について定めをする場合、その内容を労働条件として明示する事項の一つに挙げています。
そのため、満了が近づいたら最初に就業規則を開き、次の点を確かめます。
- 休職期間の長さと、いつから数えるのか(延長や通算の定めはあるか)
- 満了時に復職できない場合、「自然退職(当然退職)」なのか「解雇」なのか
- 復職の判断に、主治医の診断書や産業医の面談を求める定めがあるか
- 試し出勤やリハビリ出勤の定めがあるか
同じ「満了」でも、規程の書き方によって必要な手続きが変わります。ここは顧問の社労士の先生と一緒に確認しておくと安心です。
満了時に会社が判断すること
満了時に問われるのは、「休職の理由となった病気が治り、働ける状態に戻ったかどうか」です。裁判例でも、この判断は会社が自由に決めてよいものではなく、満了時点の客観的な回復の状況をもとに判断されるという考え方がとられています。
ここで気をつけたいのが、「元の仕事にすぐ戻れない=復職できない」とは限らないことです。最高裁の片山組事件判決(平成10年4月9日)は、職種や業務を限定せずに雇われている人について、会社が配置できる他の業務で働ける可能性があり、本人がそれを申し出ている場合には、その点も考える必要があるという趣旨を示しています。配置の可能性は、会社の規模や業務の内容によって変わります。
主治医と産業医、それぞれの意見の位置づけ
主治医の診断書は大切な判断材料です。ただ、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が示しているように、主治医の判断は日常生活の回復の程度をもとにしていることが多く、職場で求められる業務まで遂行できるという判断とは限りません。
産業医は、職場の業務内容や通勤、勤務時間を踏まえて、「この職場で働ける状態か」「どんな配慮があれば働けるか」について意見を述べます。そして、最終的に復職か、満了による退職かを決めるのは会社です。医師の意見は、会社が判断するための根拠になるものと考えてください。

主治医と産業医の意見が分かれることもあります。その場合は、本人の同意を得たうえで、職場の業務内容を書面で主治医に伝え、意見をあらためて伺うのが一般的です。どの資料をもとに、どう判断したのかを残しておくことが、あとで説明を求められたときの支えになります。
現場から
満了の直前になって初めて連絡すると、本人は身構えてしまいがちです。休職中から定期的に連絡を取り、満了日と復職の手続きを早めにお伝えしておくと、落ち着いて話し合えることが多いように感じます。
実務のポイント:満了までの流れ
おおまかな流れを表にまとめました。期間は目安です。会社の規程に合わせて調整してください。
| 時期の目安 | 会社がすること |
|---|---|
| 満了の2〜3か月前 | 就業規則の確認。本人に満了日と、復職を希望する場合の手続き(診断書の提出、産業医面談など)を書面で伝える |
| 満了の1〜2か月前 | 本人の同意を得て、主治医に職場の業務内容を伝え、意見を伺う。産業医の面談を行う |
| 満了の1か月前ごろ | 産業医の意見を踏まえ、復職の可否と、復職する場合の配慮(勤務時間・業務内容)を検討する |
| 満了日まで | 会社としての判断を本人に伝える。判断の根拠と経過を記録に残す |
病気が仕事によるものかもしれないとき
休職の原因が、長時間労働やハラスメントなど仕事に関係している可能性がある場合は、特に慎重な対応が必要です。労働基準法19条は、業務上の病気で療養のために休業している期間とその後30日間の解雇を制限しています。満了による退職扱いとの関係は事案ごとに検討が必要になるため、社労士や弁護士の先生にご相談ください。
よくあるご質問
Q1. 本人と連絡が取れない場合はどうすればよいですか。
電話やメールだけでなく、書面を郵送するなど、連絡を試みた記録を残しておくことが大切です。ご家族への連絡の方法も、本人の同意の範囲で事前に決めておくと、いざというときに慌てずにすみます。
Q2. 満了直前に「復職可」の診断書が出ました。そのまま復職させるべきですか。
診断書は大切な材料ですが、それだけで決めず、産業医の面談で職場で働ける状態かを確かめることをおすすめします。生活リズムや通勤の様子などを確認するために、満了日に間に合うよう、診断書の提出期限を早めにお伝えしておくと進めやすくなります。
Q3. 休職期間を延長することはできますか。
就業規則に延長の定めがあれば、それに沿って判断します。定めがない場合でも延長を検討することはありえますが、ほかの社員との公平さにも関わります。延長した理由と期間を記録に残しておきましょう。
まとめ
- 休職制度は会社ごとのルールです。満了が近づいたら、まず就業規則を確認します。
- 満了時は、回復の状況を主治医と産業医の意見で確かめ、他の業務で働ける可能性も考えます。
- 最終的に判断するのは会社です。医師の意見はその根拠になります。
- 準備は満了の2〜3か月前から。判断の過程を記録に残しましょう。
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参考資料
[1] 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年策定、平成21年・平成24年改訂)
[2] 労働基準法施行規則5条1項(労働条件の明示:休職に関する事項)
[3] 労働基準法19条(解雇制限)
[4] 最高裁第一小法廷 平成10年4月9日判決(片山組事件)
[5] 札幌地裁 平成11年9月21日判決(北産機工事件)

