【母健連絡カード】妊娠・出産期に無理なく働くために

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

今回は、妊娠中や出産後、「なんだか体調が悪いけれど、周りに迷惑をかけたくないから…」と無理をしてしまいがちな働く女性に、ぜひ知っていただきたい【母健連絡カード】についてお話しします。

1. 医師と会社をつなぐ架け橋「母健連絡カード」とは

正式名称を「母性健康管理指導事項連絡カード」といいます。 妊娠中や出産後の女性労働者が、主治医から受けた「仕事に関する指導内容(もう少し休ませた方がいい、など)」を、会社(事業主)へ正確に伝えるための公的なツールです。

男女雇用機会均等法に基づき、事業主は、このカードによって申し出があった場合、その記載内容に沿って適切な措置(勤務の軽減など)を講じる義務があります。 多くの母子健康手帳の後ろのページに掲載されているほか、厚生労働省のホームページからもダウンロードでき、近年では英語や中国語、ベトナム語など多言語版も用意されています。

2. 会社に求められる「3つの具体的な措置」

主治医が「措置が必要」と判断してカードに記載した場合、会社は具体的にどのような対応をしてくれるのでしょうか。大きく分けて以下の3種類があります。

① 通勤緩和に関する措置

満員電車の肉体的な疲労やつわりのストレスを減らすため、「時差通勤」や「勤務時間の短縮」、さらには「通勤経路や交通手段の変更」「在宅勤務(テレワーク)」といった配慮が求められます。

② 休憩に関する措置

妊娠中は疲れやすくなったり、お腹が張りやすくなったりします。「休憩時間の延長」や「休憩回数の増加」、「休憩時間帯の変更」など、こまめに休める環境を整えます。

③ 症状に応じた措置

つわり、貧血、めまい、お腹の張り、むくみ、さらには産後のメンタル不調(不安や不眠)など、対象となる症状は幅広く想定されています。 これらに応じて、「作業の制限」や「休業」のほか、「立ち作業がつらいので椅子を導入する」「座り作業と組み合わせる」「トイレや離席をこまめに認める」といった、現場での具体的な配慮が行われます。

3. カードがなくても使えるルール

「病院に行くほどではないけれど、今の業務は少し負担だ」という場合でも、ご本人の請求のみで使える制度があります。 例えば、「産前産後休業」や「軽易業務(負担の軽い仕事)への転換」、「時間外・休日・深夜業の制限」などは、労働基準法で守られた働く妊産婦の権利です。必ずしも母健連絡カードが必須というわけではありません。

そして、人事担当者にとっても、働く女性にとっても最も重要なルールが以下の2点です。

  • 正社員以外(パート・派遣労働者など)も対象である
  • 不利益取扱いは法律で固く禁止されている

男女雇用機会均等法では、妊娠・出産に関する措置を求めたことを理由とした不利益な取り扱い(解雇、減給、降格など)を厳しく禁止しており、企業にはマタニティハラスメント(マタハラ)防止対策も義務づけられています。「制度を使うと迷惑がかかるのでは」と遠慮する必要は全くありません。

おわりに

妊娠中や出産後の体調の変化は、本当に人それぞれです。同じ人でも、その日その時期によって波があります。

「母健連絡カード」は、一人ひとりのその時の状態に合った、安全な働き方を実現するための大切なお守りです。少しでも体調に不安を感じたら、絶対に無理をせず、まずはかかりつけの主治医にご相談くださいね。

次回は、この母健連絡カードの「具体的な使い方とよくある疑問」についてさらに詳しく取り上げます。

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