学校・教育機関の産業医|教職員50人以上で選任義務、学校医との違い、長時間勤務の面接指導とメンタルヘルス対策

「学校には学校医がいるから産業医は要らない」と思われていることがありますが、学校医と産業医は別の役割です。教職員が常時50人以上の学校では、学校医に加えて産業医の選任が必要です。公立・私立を問わず、小中高校、大学、専門学校、幼稚園なども対象になります。
この記事では、学校・教育機関で産業医が必要になる場面と、教職員の長時間勤務・メンタルヘルス対策で産業医に相談できることを整理します。
1. 学校にも労働安全衛生法が適用される
学校で働く教職員にも労働安全衛生法が適用されます。教職員の数に応じて、次の体制が必要です。
| 教職員の数(常時) | 主に必要なこと |
|---|---|
| 10人以上50人未満 | 衛生推進者の選任。医師などによる教職員の健康管理は努力義務 |
| 50人以上 | 産業医・衛生管理者の選任、衛生委員会の設置(毎月開催)、ストレスチェック(年1回) |
人数は、学校(事業場)ごとに数えます。大学のようにキャンパスが離れている場合は、キャンパスごとに判断するのが原則です。教育・研究の事業は「その他の業種」にあたるため、衛生管理者は第二種衛生管理者免許の教職員でも選任できます。

2. 学校医と産業医の違い

| 学校医 | 産業医 | |
|---|---|---|
| 根拠となる法律 | 学校保健安全法 | 労働安全衛生法 |
| 対象 | 児童・生徒・学生 | 教職員 |
| 主な役割 | 児童生徒の健康診断、学校保健計画への助言など | 教職員の健康診断後の就業判定、長時間勤務者・高ストレス者の面接指導、休職・復職の判断、職場巡視、衛生委員会への出席など |
文部科学省も、教職員が50人以上の学校では「学校医」に加えて産業医を選任する必要があると示しています。同じ医師が両方を務める場合も、それぞれの役割として整理しておくことが大切です。
3. 教職員の健康課題:長時間勤務とメンタルヘルス
文部科学省の調査によると、令和6年度に精神疾患で病気休職した公立学校の教育職員は7,087人(全教育職員の0.77%)で、前年度の7,119人に続いて高い水準にあります。授業準備や部活動、保護者対応などで勤務が長くなりやすく、心身の不調への早めの対応が欠かせません。
- 在校等時間を把握し、長時間勤務の教職員には医師による面接指導を行う(長時間労働者の面接指導の流れ)
- ストレスチェックの集団分析で、負担の大きい学年・分掌を把握し、業務の分担を見直す(高ストレス者の面接指導)
- 休職中の教職員の復職は、主治医の診断書だけでなく、産業医が業務内容と照らして判断する(主治医の「復職可」だけで復帰させていいのか)
- 保護者などからの理不尽な要求への対応ルールと相談窓口を決めておく
4. 学校ならではの職場巡視のポイント
- 理科室・美術室などの薬品の保管と換気
- 体育館・グラウンド・屋外行事での熱中症対策(職場の熱中症対策の義務化)
- 給食室・調理室の衛生管理と、調理員の健康管理(給食従業員の検便とは)
- 職員室・休憩室の環境(照明・温度・CO2濃度)
5. 学校・教育機関が産業医に相談できること
- 健診結果にもとづく就業判定と、受診勧奨の進め方
- 長時間勤務の教職員の面接指導
- メンタル不調の教職員の休職・復職判断と、復職後の勤務の調整
- 衛生委員会の議題づくりと、職場巡視での助言(衛生委員会の議題例・12か月の年間カレンダー)
- ストレスチェックの実施と、集団分析の結果の活かし方(ストレスチェックの実施者は誰がなれる?)
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業種別の産業医のコラム
よくある質問
学校医がいれば、産業医は選任しなくてよいですか?
よくありません。学校医は学校保健安全法にもとづいて児童生徒の健康を担当し、産業医は労働安全衛生法にもとづいて教職員の健康を担当します。教職員が常時50人以上の学校では、学校医に加えて産業医の選任が必要です。
公立学校にも産業医は必要ですか?
必要です。公立学校の教職員にも労働安全衛生法が適用されるため、教職員が常時50人以上の学校では産業医を選任します。
教職員が50人未満の学校では何が必要ですか?
10人以上なら衛生推進者の選任が必要です。医師などによる教職員の健康管理は努力義務です。ストレスチェックは2028年4月から50人未満の事業場でも義務になります。
学校の衛生管理者は第二種でもよいですか?
教育・研究の事業は「その他の業種」にあたるため、第二種衛生管理者免許の教職員でも選任できます。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- こころの耳(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 職場における熱中症予防情報(厚生労働省)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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