特定化学物質健康診断とは|対象業務、6か月ごとの頻度、配置転換後の健診、1年に緩和できる条件、5年・30年保存と報告を産業医が解説

「特化物を使っているので健診が必要と言われたが、何をすればいい?」「部署を移った人にも健診が必要?」「記録は何年残す?」。化学工場・製造業・研究所の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、特定化学物質健康診断の対象、頻度、項目の考え方、配置転換後の健診、1年以内ごとに緩和できる条件、記録の保存(5年・30年)と報告を、特定化学物質障害予防規則(特化則)にもとづいて解説します。
結論:特定化学物質の業務に常時従事する人に、原則6か月以内ごとに実施
- 対象は、特定化学物質を製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者です(労働安全衛生法施行令第22条第1項第3号、特化則第39条第1項)。
- 雇入れ・配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回行います(胸部エックス線検査は1年以内ごとの物質もあります)。項目は物質ごとに特化則の別表で決まっています。
- がんなどのおそれがある一定の物質では、以前その業務に従事していた人(配置転換後も在籍している人)にも健診が必要です(同条第2項)。
- 結果は個人票で5年間、特別管理物質は30年間保存し、3か月以内に医師の意見を聴き、定期の健診は規模にかかわらず報告します(同規則第40条〜第41条)。

特定化学物質とは
特定化学物質は、がんや皮膚炎、神経障害などを起こすおそれがある化学物質で、特化則で第1類・第2類・第3類に分けて管理されています。健診の対象となるのは主に第1類・第2類の物質です。
| 区分 | 主な物質の例 |
|---|---|
| 第1類物質(製造に許可が必要) | ジクロルベンジジン、ベリリウム、ベンゾトリクロリドなど |
| 第2類物質 | ベンゼン、塩化ビニル、クロム酸、カドミウム、マンガン、ニッケル化合物、ホルムアルデヒド、エチルベンゼン、ジクロロメタン、溶接ヒュームなど |
| 特別有機溶剤(第2類の一部) | エチルベンゼン、クロロホルム、スチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロメタンなど |
ホルムアルデヒドなど、健診の対象から外れている物質もあります。自社で扱う物質が健診の対象かどうかは、SDS(安全データシート)で成分を確認し、特化則の別表で調べます。化学物質全体の管理の考え方は化学物質の自律的管理をご覧ください。
健診の時期と項目

| 健診 | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 一次健診 | 雇入れ・配置替えの際と、その後6か月以内ごと | 業務の経歴の調査、作業条件の簡易な調査、物質による自覚症状・他覚症状の有無の検査に加え、物質ごとに定められた検査(尿検査、血液検査、胸部エックス線検査など) |
| 二次健診 | 一次健診で異常の疑いがあり、医師が必要と認めた人 | 物質ごとに定められた、より詳しい検査 |
| 配置転換後の健診 | 6か月以内ごと(在籍している間) | がんなどのおそれがある一定の物質の業務に、過去に常時従事させたことがある人が対象 |
項目は物質ごとに異なるため、健診機関に扱う物質の名前と作業内容を伝えて、項目を決めてもらいましょう。有機溶剤とあわせて扱う職場では、有機溶剤健康診断も必要になることがあります。
1年以内ごとに緩和できる条件
次のすべてを満たす労働者は、定期の健診を1年以内ごとに1回にできます(特化則第39条第4項)。ただし、特別管理物質と製造が禁止されている物質の業務は対象外です。
- 作業環境測定の評価が、直近を含めて連続3回、第1管理区分であること
- 直近の健診のあと、作業方法を変えていないこと(軽微な変更を除く)
- 直近の連続した3回の健診で、新たに特定化学物質による異常所見が認められなかったこと
作業環境測定については作業環境測定とはで解説しています。
結果の記録・意見聴取・報告
| やること | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 個人票の作成・保存 | 特定化学物質健康診断個人票を作成し、5年間保存する。特別管理物質(がんなどのおそれがある物質)の業務に従事した人は30年間 | 特化則第40条 |
| 医師の意見聴取 | 健診の日から3か月以内に医師の意見を聴き、個人票に記載する | 同規則第40条の2 |
| 労働基準監督署への報告 | 定期の健診を行ったら、遅滞なく結果報告書を提出する(規模にかかわらず) | 同規則第41条 |
| 緊急診断 | 特定化学物質が漏えいし、労働者が汚染されたり吸い込んだりしたときは、遅滞なく医師の診察や処置を受けさせる | 同規則第42条 |
特別管理物質の業務では、健診のほかに、作業の記録(従事した労働者の氏名、作業の概要と期間など)を30年間保存することも求められています。記録の保存期間の一覧は健康診断の記録の保存期間をご覧ください。
産業医が関わること
- 扱っている物質と作業の内容を確認し、健診の対象者と項目を整理する
- 健診の結果、作業環境測定の結果をあわせて確認し、3か月以内に就業上の措置の意見を述べる(健康診断後の医師の意見聴取(就業判定))
- 職場巡視で、局所排気装置の稼働、保護具の使用、漏えい時の対応手順を確認する(産業医の職場巡視)
- 妊娠中・産後の社員の配置について助言する(妊産婦の就業制限)
うえまつ産業医事務所にご相談ください
うえまつ産業医事務所では、化学工場・製造業・研究所などの事業場で、特定化学物質健康診断の対象者と項目の整理、結果の確認と3か月以内の意見聴取、作業環境測定の結果の確認と職場巡視を、毎月定額の範囲で行います。
- 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
- 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
- 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
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事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。
よくある質問
特定化学物質健康診断は何か月ごとですか?
雇入れ・配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回です(胸部エックス線検査は1年以内ごとの物質もあります)。条件を満たせば1年以内ごとにできますが、特別管理物質の業務は緩和の対象外です(特定化学物質障害予防規則第39条)。
部署を移った社員にも健診が必要ですか?
がんなどのおそれがある一定の物質の業務に常時従事させたことがある人は、現に使用している間、6か月以内ごとに健診を行います(特定化学物質障害予防規則第39条第2項)。
結果は何年保存しますか?
特定化学物質健康診断個人票を5年間保存します。特別管理物質の業務に従事した人の個人票は30年間保存します(特定化学物質障害予防規則第40条)。
従業員50人未満でも報告は必要ですか?
必要です。定期の特定化学物質健康診断を行ったら、事業場の規模にかかわらず、遅滞なく結果報告書を労働基準監督署に提出します(特定化学物質障害予防規則第41条)。
まとめ
特定化学物質健康診断は、特定化学物質の業務に常時従事する人に原則6か月以内ごとに行い、一定の物質では配置転換後も続けます。項目は物質ごとに決まっているため、扱う物質を正確に把握することが出発点です。個人票の保存(5年・30年)、3か月以内の意見聴取、規模を問わない報告を忘れずに行いましょう。
特定化学物質を小分けして保管するときの容器の表示は、小分け容器のラベル表示(無料のラベル作成ツール付き)で解説しています。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
- 有機溶剤中毒予防規則(e-Gov法令検索)
- 特定化学物質障害予防規則(e-Gov法令検索)
- 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
- 男女雇用機会均等法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
専門家紹介(経歴・資格) | researchmap(研究業績)
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