歯科医師による健康診断(歯科特殊健診)とは|塩酸・硫酸・ふっ化水素などの対象業務、6か月ごとの頻度、規模を問わない報告と5年保存を産業医が解説

歯科医師による健康診断(歯科特殊健診)とは|塩酸・硫酸・ふっ化水素などの対象業務、6か月ごとの頻度、規模を問わない報告と5年保存を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
酸などのガス・蒸気・粉じんが出る場所で働く社員には、6か月以内ごとの歯科医師による健診が必要です。

「酸を使う工程があるので、歯の健康診断が必要と言われた」「歯科の健診も労働基準監督署に報告するの?」。めっき・金属表面処理・電子部品・化学工場などの会社の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、歯科医師による健康診断(いわゆる歯科特殊健診)の対象となる業務、頻度、結果の記録と報告、歯科医師の意見の聴き方を、条文にもとづいて解説します。

結論:酸などのガス・蒸気・粉じんが出る職場では、6か月以内ごとに歯科医師の健診が必要

  • 対象は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、ふっ化水素、黄りんその他歯またはその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所での業務に常時従事する労働者です(労働安全衛生法第66条第3項、同法施行令第22条第3項)。
  • 雇入れの際、配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回、歯科医師による健康診断を行います(労働安全衛生規則第48条)。
  • 結果は健康診断個人票に記録して5年間保存し、定期の健診を行ったら事業場の規模にかかわらず、電子申請で労働基準監督署に報告します(同規則第51条・第52条第2項)。
  • 対象の業務に常時50人以上を従事させる事業場では、歯や支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにします(同規則第14条第5項)。
4コマ漫画「硫酸を使う人の健診、普通のでいいよね?」:めっき工場の総務担当に、メーくんが、酸のミストで歯が溶けることがあるため、歯科医師の健診を6か月ごとに行い、小さい会社でも報告し、対象者の名簿を作るよう伝える

対象となる業務

歯科医師による健康診断が必要な職場の図解:塩酸・硝酸・硫酸・ふっ化水素、亜硫酸・黄りんなどのガスやミストで歯が傷む。6か月以内ごとに歯科医師が健診、個人票は5年保存、50人未満でも労基署に報告

酸やふっ化水素のガス・蒸気・ミストを吸い込むと、歯の表面が溶ける歯牙酸蝕症などが起こることがあります。法令は物質と場所で対象を決めていて、次のような職場が代表的です。

物質使われる主な作業の例
塩酸、硝酸、硫酸めっき・金属の酸洗い、表面処理、電子部品・半導体の洗浄やエッチング、蓄電池の製造
亜硫酸漂白、パルプ・食品の処理など
ふっ化水素ガラスのつや消し・エッチング、半導体の洗浄、金属の表面処理
黄りんりん化合物の製造など
歯科医師による健康診断の対象となる物質と作業の例(労働安全衛生法施行令第22条第3項)

対象かどうかは、取り扱う物質と、ガス・蒸気・粉じんが発散する場所で常時作業しているかで判断します。局所排気装置があっても、発散する場所で作業していれば対象になりえます。迷う場合は、化学物質の自律的管理のリスクアセスメントの結果や、作業環境測定の結果とあわせて確認しましょう。

時期と内容

項目内容
実施する人歯科医師(医師の健診とは別に行う)
時期雇入れの際、対象の業務への配置替えの際、その後6か月以内ごとに1回
主な内容歯や歯ぐきの状態の診察(歯の表面が溶けていないか、しみる・欠けるなどの症状)。法令で細かな検査項目は定められていないため、実施する歯科医師と内容を相談する
費用事業者が負担する
歯科医師による健康診断の時期と内容(労働安全衛生規則第48条)

一般の定期健康診断や、物質ごとの特殊健康診断(特殊健康診断とは(対象業務・頻度・報告))とは別に行うものです。同じ社員が複数の健診の対象になることもあります。

結果の記録・報告と事後措置

やること内容根拠
個人票の作成・保存健康診断個人票を作成し、5年間保存する労働安全衛生規則第51条
労働基準監督署への報告定期の健診を行ったら、遅滞なく電子申請で報告する。50人未満の事業場も対象同規則第52条第2項
歯科医師の意見聴取所見のある社員について、就業上の措置を歯科医師に聴く労働安全衛生法第66条の4
事後措置と通知意見をふまえて作業や配置を見直し、本人に結果を通知する同法第66条の5・第66条の6
歯科医師による健康診断の結果の取扱い

報告の方法は、医師による健診の報告と同じく電子申請です(定期健康診断結果報告の出し方)。記録の保存期間の一覧は健康診断の記録の保存期間をご覧ください。

対象者が50人以上の事業場:歯科医師の意見を聴く

対象の業務に常時50人以上を従事させる事業場では、健康管理や作業環境の管理などのうち歯や支持組織に関することについて、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければなりません。また、健診を行った歯科医師は、健康障害を防ぐために必要な事項を事業者に勧告できます(労働安全衛生規則第14条第5項・第6項)。いわゆる産業歯科医の役割です。

予防のために職場でやること

  • 発散源を囲い、局所排気装置やプッシュプル型換気装置を設け、点検する
  • 作業者に、物質に合った防毒マスクや保護めがねを使わせる
  • 作業場で飲食・喫煙をしない、作業後にうがいをするなどのルールを決める
  • 「歯がしみる」「歯が欠けやすい」などの訴えがあれば、次の健診を待たずに歯科医師に相談する
  • 職場巡視で、発散源と作業者の位置、保護具の使用状況を確認する(産業医の職場巡視)

うえまつ産業医事務所にご相談ください

うえまつ産業医事務所では、化学物質を取り扱う事業場の職場巡視、歯科医師による健康診断の対象者の整理の助言、特殊健康診断の結果の確認と就業上の措置の意見を、毎月定額の範囲で行います。歯科医師による健診そのものは歯科医師に依頼してください。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
  • 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)

事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

よくある質問

歯科医師による健康診断は何か月ごとですか?

雇入れの際、配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回です(労働安全衛生規則第48条)。

歯科医師による健康診断の対象となる物質は?

塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、ふっ化水素、黄りんその他歯またはその支持組織に有害な物です。これらのガス、蒸気または粉じんを発散する場所で常時従事する労働者が対象です(労働安全衛生法施行令第22条第3項)。

従業員50人未満でも報告は必要ですか?

必要です。歯科医師による健康診断(定期のもの)を行ったら、事業場の規模にかかわらず、遅滞なく電子申請で労働基準監督署に報告します(労働安全衛生規則第52条第2項)。

結果は何年保存しますか?

健康診断個人票を作成し、5年間保存します(労働安全衛生規則第51条)。

まとめ

酸やふっ化水素などのガス・蒸気・粉じんが出る場所で働く社員には、6か月以内ごとに歯科医師による健康診断が必要です。結果は5年間保存し、規模にかかわらず報告します。対象者の名簿を作り、局所排気装置や保護具とあわせて管理しましょう。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
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