特定業務従事者の健康診断とは|深夜業・暑熱・重量物などの業務は6か月ごと。対象の14業務、省略できる項目、自発的健康診断を産業医が解説

特定業務従事者の健康診断とは|深夜業・暑熱・重量物などの業務は6か月ごと。対象の14業務、省略できる項目、自発的健康診断を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
深夜業などの業務に常時従事する社員は、6か月以内ごとに健康診断を行います。

「夜勤のある社員の健康診断は、年1回で足りますか?」。工場、物流、介護、ホテルなど、深夜の勤務がある会社の人事・総務の方からよくいただく質問です。深夜業や暑熱な場所での業務など、決められた業務に常時従事する社員には、6か月以内ごとに1回の健康診断が必要です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、対象業務、実施の時期と項目、省略できる検査、深夜業の社員が自分で受けた健診の扱いを解説します。

結論:決められた業務に常時従事する社員は、配置替えの際と6か月以内ごとに健診を行う

  • 深夜業、暑熱・寒冷な場所、重量物の取扱い、強烈な騒音など、労働安全衛生規則第13条第1項第3号の業務に常時従事する社員が対象です(同規則第45条)。
  • その業務への配置替えの際と、6か月以内ごとに1回、定期健康診断と同じ11項目の健診を行います。
  • 胸部エックス線検査と喀痰検査は1年以内ごとに1回で足ります。
  • 50人以上の事業場は、この健診の結果も定期健康診断結果報告で労働基準監督署に報告します。
4コマ漫画「夜勤の人の健診も年1回でいいよね?」:物流倉庫の総務担当者に、メーくんが、深夜業のある社員の健診は6か月ごとで配置替えの際にも必要なこと、血液検査は医師の判断で省略できること、パートも対象になるので名簿を作ることを伝える

対象となる業務(労働安全衛生規則第13条第1項第3号)

記号業務
イ多量の高熱物体を取り扱う業務、著しく暑熱な場所における業務
ロ多量の低温物体を取り扱う業務、著しく寒冷な場所における業務
ハラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ土石、獣毛などのじんあい・粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ異常気圧下における業務
ヘさく岩機、鋲打機などの使用によって身体に著しい振動を与える業務
ト重量物の取扱いなど重激な業務
チボイラー製造など強烈な騒音を発する場所における業務
リ坑内における業務
ヌ深夜業を含む業務
ル水銀、砒素、黄りん、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリなどの有害物を取り扱う業務
ヲ鉛、水銀、クロム、一酸化炭素、ベンゼンなどの有害物のガス・蒸気・粉じんを発散する場所における業務
ワ病原体によって汚染のおそれが著しい業務
カその他厚生労働大臣が定める業務
特定業務(労働安全衛生規則第13条第1項第3号)

もっとも多いのは深夜業を含む業務です。深夜業とは、午後10時から午前5時までの間の業務をいいます(労働安全衛生法第66条の2)。交替制勤務の工場、24時間営業の店舗、物流倉庫、介護施設、病院、ホテルの夜勤などが当てはまります。

深夜業に「常時従事」しているかについて、通達では、深夜業を1週に1回以上、または1か月に4回以上行う場合が目安とされています。パート・アルバイトでも、常時使用される労働者で深夜業に常時従事していれば対象です。

なお、これらの業務に常時500人以上が従事する事業場では、産業医を専属で選任する必要があります(労働安全衛生規則第13条第1項第3号)。

実施の時期と項目

特定業務従事者の健康診断の図解:深夜業・暑熱・重量物など14の業務に常時従事する社員は、配置替えの際と6か月ごとに11項目の健診を行う。6か月後の健診では血液検査・心電図を医師の判断で省略でき、胸部エックス線は年1回でよい
ポイント内容
時期特定業務への配置替えの際、そして6か月以内ごとに1回、定期に行う
項目定期健康診断と同じ11項目(既往歴・業務歴、自覚症状・他覚症状、身長・体重・腹囲・視力・聴力、胸部エックス線・喀痰、血圧、貧血、肝機能、血中脂質、血糖、尿、心電図)
胸部エックス線・喀痰1年以内ごとに1回行えば足りる
省略できる項目定期の健診では、前回の健診で貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図の検査を受けた人は、医師が必要でないと認めるとき、その全部または一部を省略できる
聴力定期の健診では、前回受けた人や45歳未満の人(35歳・40歳を除く)は、医師が適当と認める方法の検査で代えられる
特定業務従事者の健康診断の時期と項目(労働安全衛生規則第45条)

たとえば4月と10月に健診を行う場合、4月はすべての項目、10月は医師の判断で血液検査と心電図を省略し、胸部エックス線は年1回にする、という運用がよく行われます。省略するかどうかは、前回の結果をもとに医師が判断することが条件です。定期健康診断の省略基準は定期健康診断の項目と省略基準で解説しています。

深夜業の社員が自分で受けた健康診断(自発的健康診断)

深夜業に従事する社員は、会社の健診を待たずに自分で受けた健康診断の結果を会社に提出できます(労働安全衛生法第66条の2)。対象は、常時使用され、健診を受けた日の前6か月間を平均して1か月あたり4回以上深夜業に従事した人です(労働安全衛生規則第50条の2)。

  • 提出できるのは、健診を受けた日から3か月以内です(同規則第50条の3)。
  • 提出を受けたら、会社は健康診断個人票に記録し、異常の所見があれば医師の意見を聴き、必要な就業上の措置を検討します。
  • 睡眠や体調の不安を感じた社員が利用しやすいよう、制度を周知しておきましょう。

結果の報告・記録と健診後の対応

  • 結果報告:常時50人以上の事業場は、定期の特定業務従事者健診も、定期健康診断結果報告の対象です。報告書には特定業務に常時従事する労働者の数も記入します(労働安全衛生規則第52条)。6か月ごとに実施する場合は、そのつど報告します(定期健康診断結果報告の出し方)。
  • 記録の保存:健康診断個人票を作成し、5年間保存します(同規則第51条。健康診断の記録の保存期間)。
  • 医師の意見聴取:異常の所見がある人について医師の意見を聴き、夜勤の回数を減らす、日勤へ移すなどの就業上の措置を検討します(健診後の医師の意見聴取)。
  • 費用:法律で義務づけられた健診なので、費用は会社が負担します(健康診断の費用と受診時間の賃金)。

特殊健康診断との違い

特定業務従事者の健康診断は、一般健康診断のひとつで、項目は定期健康診断と同じです。有機溶剤、鉛、特定化学物質などを扱う業務では、これとは別に、物質ごとに決められた項目の特殊健康診断が必要です(特殊健康診断とは)。両方の対象になる社員もいるため、健診機関と相談して同じ日にまとめて行うと、社員の負担を減らせます。

よくあるつまずき

  • 夜勤のある社員も、年1回の定期健康診断だけで済ませている
  • 夜勤専従のパート・アルバイトを対象から外している
  • 日勤から夜勤のある部署へ異動したときの、配置替えの際の健診が抜けている
  • 6か月ごとの健診の結果報告を、年1回しか出していない
  • 血液検査を省略するとき、医師の判断を経ずに会社が決めている

うえまつ産業医事務所にご相談ください

うえまつ産業医事務所では、夜勤・交替制勤務のある事業場で、特定業務従事者の健診の対象者の整理、健診後の就業判定、夜勤の回数や配置についての助言を、毎月定額の範囲で行います。健康管理Webで、6か月ごとの健診の受診状況と就業判定を一覧で管理できます。

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よくある質問

夜勤のある社員の健康診断は年1回でよいですか?

深夜業(午後10時〜午前5時の業務)を含む業務に常時従事する社員は、配置替えの際と6か月以内ごとに1回の健康診断が必要です(労働安全衛生規則第45条)。胸部エックス線検査と喀痰検査は1年以内ごとに1回で足ります。

深夜業に「常時従事」とは、どのくらいの回数ですか?

通達では、深夜業を1週に1回以上、または1か月に4回以上行う場合が目安とされています。

6か月ごとの健診で、省略できる項目はありますか?

定期の健診では、前回の健診で貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図の検査を受けた人は、医師が必要でないと認めるときに省略できます。胸部エックス線検査と喀痰検査は1年以内ごとに1回で足ります。

特定業務従事者の健康診断も労働基準監督署に報告しますか?

常時50人以上の事業場では、定期の特定業務従事者の健康診断も定期健康診断結果報告の対象です。6か月ごとに実施する場合は、そのつど報告します(労働安全衛生規則第52条)。

まとめ

深夜業や暑熱・重量物などの業務に常時従事する社員には、配置替えの際と6か月以内ごとに健康診断を行います。対象者の名簿を作り、6か月ごとの実施、結果報告、医師の意見聴取までを年間の予定に組み込んでおきましょう。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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うえまつ産業医事務所 所長
上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
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