職場の腰痛予防対策指針とは|重量物は体重の40%が目安、介護での人力による抱え上げは原則行わない、配置前と6か月ごとの腰痛健診を産業医が解説

職場の腰痛予防対策指針とは|重量物は体重の40%が目安、介護での人力による抱え上げは原則行わない、配置前と6か月ごとの腰痛健診を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
重量物の目安、人力での抱え上げの見直し、配置前と6か月ごとの腰痛健診が対策の柱です。

「介護職員の腰痛による休みが続いている」「重い荷物は何キロまで持たせていい?」「腰痛の健康診断が必要と聞いた」。介護施設・物流・製造業の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」にもとづいて、重量物の目安、介護作業での抱え上げ、腰痛の健康診断、作業姿勢と休憩、教育のポイントを解説します。

結論:重量物の目安、人力での抱え上げの見直し、配置前と6か月ごとの腰痛健診

  • 腰痛は休業4日以上の業務上疾病の中で多いものの一つで、厚生労働省は2013年に「職場における腰痛予防対策指針」を改訂し、福祉・医療分野の介護・看護作業や車両運転などの対策を充実させました。
  • 人力だけで重量物を扱う場合、満18歳以上の男性は体重のおおむね40%、女性は男性が扱う重量の60%程度が目安です。
  • 介護・看護作業では、人を抱え上げる作業は原則として人力では行わせず、リフトなどの福祉用具を活用します。
  • 腰に著しい負担がかかる作業に常時従事させる場合は、配置の際と、その後6か月以内ごとに1回、医師による腰痛の健康診断を行います。
4コマ漫画「腰痛で休む人がまた増えた…」:介護施設の施設長に、メーくんが、人を抱え上げるのは人力でしないのが原則で、リフトなどの福祉用具を使い、配置前と6か月ごとの腰痛の健診を行い、ベッドの高さも調整するよう伝える

指針の対象となる5つの作業

作業主な対策
重量物取扱い作業自動化・省力化、重量の目安を守る、荷姿の工夫、持ち上げるときは身体に近づけて膝を曲げる
立ち作業作業台の高さを肘の高さに合わせる、足台や椅子を置く、1時間に1〜2回程度の小休止
座り作業椅子と机の高さの調整、同じ姿勢を長く続けない
福祉・医療分野等における介護・看護作業人力での抱え上げは原則行わない、福祉用具の活用、介護する人数の確保、ベッドの高さ調整
車両運転等の作業座席の調整、長時間の連続運転を避け休憩をとる、運転直後の重量物の取扱いを避ける
腰痛予防対策指針の対象となる作業と主な対策

重量物の目安

人力で持つ重さの目安の図解:18歳以上の男性は体重のおおむね40%(体重60kgなら約24kg)、18歳以上の女性は男性の60%程度(約14kg)。超えるときは2人で持つ、台車やリフトを使う
対象人力のみで取り扱う重量の目安
満18歳以上の男性体重のおおむね40%以下
満18歳以上の女性男性が取り扱う重量の60%程度
重量物取扱い作業の目安(職場における腰痛予防対策指針)

たとえば体重60kgの男性なら24kg程度、女性はその60%の14kg程度が目安です。これを超える重量物は、2人以上で扱うか、台車・リフトなどを使います。妊娠中・産後の女性や年少者には、法令で取り扱える重量の上限が別に定められています(妊産婦の就業制限)。

介護・看護作業のポイント

  • 移乗などで人を抱え上げる作業は、原則として人力では行わせない。リフト、スライディングボード、スライディングシートなどの福祉用具を使う
  • 利用者の状態と介助の方法ごとに、腰への負担を評価して作業手順を決める(リスクアセスメント)
  • ベッドの高さを調整し、前かがみやひねりの姿勢を減らす
  • 夜勤では仮眠をとれるようにし、少人数の時間帯に負担が集中しないよう人員を配置する

腰痛の健康診断

重量物取扱い作業、介護・看護作業など腰に著しい負担がかかる作業に常時従事させる場合は、配置の際と、その後6か月以内ごとに1回、医師による腰痛の健康診断を行います。法律ではなく指針にもとづくものですが、安全配慮の観点から実施が求められます。

時期主な項目
配置前既往歴(腰痛の病歴と経過)・業務歴の調査、自覚症状(腰痛、下肢痛、下肢の筋力低下、しびれなど)の有無、脊柱の検査(姿勢異常、変形、可動性と痛み、圧痛など)、神経学的検査、脊柱機能検査。医師が必要と認める人には画像診断や運動機能テストなど
定期(6か月以内ごと)既往歴・業務歴の調査、自覚症状の有無。医師が必要と認める人には脊柱の検査や神経学的検査など
腰痛の健康診断の項目(職場における腰痛予防対策指針)

結果をもとに、医師の意見を聴いて作業方法や作業時間の見直しなどを行います(健康診断後の医師の意見聴取)。

教育と職場の仕組み

  • 重量物取扱い、同じ姿勢を長く続ける作業、介護・看護、車両運転などに就く人に、腰痛の原因、リスクの見つけ方と減らし方、腰痛予防体操を教育する(雇入れ時教育)
  • 作業ごとにリスクアセスメントを行い、リスクの大きいものから対策する
  • 衛生委員会で腰痛の発生状況と対策を定期的に審議する(衛生委員会の議題例)
  • 職場巡視で、作業台の高さ、通路の段差、台車や福祉用具の使用状況を確認する(産業医の職場巡視)

腰痛が労災になる場合

腰痛の労災認定では、荷物を持ち上げたときなど、仕事中の突発的な出来事による「災害性の原因による腰痛」と、重量物を扱う仕事などを長く続けたことによる「災害性の原因によらない腰痛」に分けて判断されます。仕事中のぎっくり腰で4日以上休んだ場合は、労働者死傷病報告が必要です。休業中の補償は労災の休業補償給付をご覧ください。

腰痛は職業性疾病のなかで最も多い

休業4日以上の職業性疾病のうち、職場での腰痛は約6割を占めています(厚生労働省)。重い物を扱う製造業・運輸業・建設業だけでなく、介護・看護、小売業の品出しや、長時間座りっぱなしのデスクワークでも起こります。

腰痛予防対策指針では、腰に負担がかかる動作や姿勢だけでなく、職場の人間関係や仕事への満足度などの心理・社会的な要因も、腰痛の発生や長引くことに関わるとしています。そのため、対策は「作業」「環境」「健康管理」「教育」を組み合わせて進めることが大切です。

職場の例腰痛の原因になりやすいこと会社ができる対策の例
倉庫・工場重量物の持ち上げ、前かがみ台車・リフトの導入、荷物の重さの表示、作業台の高さ調整
介護・看護人力での抱え上げ福祉用具(リフトなど)の活用、2人以上での介助
小売・飲食長時間の立ち仕事、品出しでの中腰疲労軽減マット、休憩時の座る場所の確保
事務長時間の座りっぱなし、合わない椅子椅子・画面の調整、1時間ごとに立って体を動かす
職場ごとの腰痛の原因と対策の例

腰痛で休業する社員が出たときは、労働者死傷病報告の要否を確認するとともに、同じ作業をしている人にも同様のリスクがないかを点検し、職場の改善につなげます。

腰痛は一度起こすと再発しやすく、休業が長引くこともあります。重量物を扱う業務など腰に著しい負担のかかる作業に常時従事する人には、配置前と、その後6か月以内ごとに1回、腰痛の健康診断を行うことが指針で示されています。健診の結果をもとに、作業の見直しや配置の配慮を産業医と相談しましょう。

対策を進めるときは、腰痛を訴える社員の声や、ヒヤリハットの報告をもとに、負担の大きい作業から優先して見直します。衛生委員会で腰痛の発生状況を共有し、改善の効果を確かめていくと、継続した取組になります。

うえまつ産業医事務所にご相談ください

うえまつ産業医事務所では、介護施設・物流・製造業の事業場で、腰痛の健康診断の結果の確認と就業上の措置の意見、職場巡視での作業姿勢や福祉用具の確認、衛生委員会での腰痛対策の助言を、毎月定額の範囲で行います。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
  • 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)

事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

よくある質問

重量物は何キロまで持たせてよいですか?

腰痛予防対策指針では、人力のみで取り扱う場合、満18歳以上の男性は体重のおおむね40%以下、女性は男性が取り扱う重量の60%程度が目安です。これを超える場合は2人以上で扱うか、台車などを使います。

腰痛の健康診断は義務ですか?

法律ではなく、厚生労働省の腰痛予防対策指針にもとづくものです。腰に著しい負担がかかる作業に常時従事させる場合は、配置の際と、その後6か月以内ごとに1回行うことが求められます。

介護職員の抱え上げは禁止されていますか?

指針では、人を抱え上げる作業は原則として人力では行わせず、リフトなどの福祉用具を活用するとしています。

ぎっくり腰は労災になりますか?

仕事中の動作で急に発症した腰痛は、「災害性の原因による腰痛」として業務上と認められることがあります。4日以上休んだ場合は労働者死傷病報告も必要です。

事務職でも腰痛対策は必要ですか?

必要です。長時間同じ姿勢で座り続けることも腰への負担になります。椅子や画面の高さを調整できるようにし、こまめに立って体を動かせるよう、作業の合間に小休止を設けましょう。

まとめ

職場の腰痛は、重量物の目安を守る、人力での抱え上げをやめて福祉用具を使う、作業台や休憩を見直す、配置前と6か月ごとの腰痛健診を行う、の組み合わせで防ぎます。衛生委員会や職場巡視で発生状況を確認し、リスクの大きい作業から改善しましょう。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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うえまつ産業医事務所 所長
上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
総合内科専門医
博士(社会健康医学)
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