傷病手当金とは|休職中の社員に会社が説明すること――支給の条件・金額・期間、事業主の証明、社会保険料、退職後の継続給付を産業医が解説

傷病手当金とは|休職中の社員に会社が説明すること――支給の条件・金額・期間、事業主の証明、社会保険料、退職後の継続給付を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
傷病手当金は、4日目から標準報酬日額の3分の2が通算1年6か月まで支給されます。

「休職する社員に、傷病手当金のことをどう説明すればいいですか?」。休職の手続きのたびに、人事・総務の方からいただく質問です。傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けず、給与が出ないときに健康保険から支給されるお金です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、支給の条件・金額・期間、会社が行う事業主の証明、休職中の社会保険料、退職後も受け取れる条件を、会社が社員に説明する順番で解説します。

結論:業務外の病気やけがで働けず給与が出ないとき、4日目から標準報酬日額の3分の2が通算1年6か月まで支給される

  • 健康保険の被保険者が、業務外の病気やけがの療養のため働けないとき、連続3日の待期のあと4日目から支給されます(健康保険法第99条)。
  • 1日あたりの額は、直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2です。
  • 支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です。
  • 会社は、申請書の事業主の証明(出勤の状況と給与の支払いの状況)を記入します。仕事が原因の病気やけがは、傷病手当金ではなく労災保険の対象です。
4コマ漫画「休職中の生活費、どう説明しよう」:休職する社員への説明に悩む人事担当者に、メーくんが、傷病手当金は4日目から給与の約3分の2が通算1年6か月まで支給されること、社会保険料のことも最初に伝えることを教える

支給の4つの条件

条件内容
業務外の病気やけがの療養仕事や通勤が原因のものは労災保険の対象。美容整形など病気とみなされないものは対象外
仕事に就けない(労務不能)主治医などの意見をもとに、それまでの仕事ができない状態かどうかで判断される
連続3日の待期連続して3日間休んだあとの4日目から支給。待期の3日間には、有給休暇や土日祝日などの公休日も含まれる
給与の支払いがない休んだ期間に給与が出ていれば支給されない。給与が傷病手当金より少なければ差額が支給される
傷病手当金の支給の条件

任意継続被保険者の期間中に発生した病気やけがは、対象になりません。国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度はありません。

支給される金額と期間

傷病手当金のしくみの図解:1〜3日目は待期(有給・休日も含む)、4日目から支給、通算1年6か月まで。1日あたりの額は標準報酬日額の3分の2。会社は申請書の事業主の証明を行い、休職中の社会保険料の集め方を決める

1日あたりの額は、支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2です(健康保険法第99条第2項)。たとえば、平均の標準報酬月額が30万円なら、1日あたり約6,667円です。被保険者の期間が12か月に満たない場合は、その期間の平均と、加入する保険者の全被保険者の平均のいずれか低い額をもとに計算します。

支給期間は、同じ病気やけがについて、支給を始めた日から通算して1年6か月です(同条第4項)。2022年1月から、途中で復職して支給されない期間があっても、その分を延長して通算できるようになりました。復職したあとに同じ病気で再び休職した場合も、残りの期間の範囲で受け取れます。

ほかの給付・給与との調整

受けているもの傷病手当金の扱い
給与・手当給与が支払われる期間は支給されない。給与が傷病手当金より少ないときは差額が支給される(健康保険法第108条)
障害厚生年金・障害手当金同じ病気で受けているときは調整される
退職後の老齢年金調整される
労災保険の休業補償給付調整される(業務上の病気やけがは、もともと労災保険の対象)
出産手当金出産手当金が優先され、傷病手当金の額が多ければ差額が支給される
傷病手当金とほかの給付との調整

調整される場合、それぞれの1日あたりの額が傷病手当金より低ければ、差額が支給されます。

会社が行う手続きと説明すること

  1. 休職の初めに制度を説明する:支給の条件、金額のおおよその目安、申請の流れ、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)の窓口を伝えます。
  2. 申請書の流れを決める:申請書は本人が記入する欄、医師(療養担当者)が記入する欄、事業主が記入する欄に分かれています。1か月ごとなど区切りを決めて、本人→主治医→会社→保険者の順に回すと、本人の負担を減らせます。
  3. 事業主の証明を記入する:対象期間の出勤の状況と、給与の支払いの状況を正確に記入します。
  4. 休職中の社会保険料の集め方を決める:休職中も健康保険料・厚生年金保険料は免除されません。給与が出ない期間の本人負担分を、毎月振り込んでもらうか、復職後にまとめて精算するかを決めて、最初に説明します。住民税(特別徴収)の扱いもあわせて決めておきます。
  5. 申請の期限を伝える:保険給付を受ける権利は、2年で時効によって消滅します(健康保険法第193条)。

休職中の連絡の頻度や窓口は休職中の社員への連絡のルール、休職させるかどうかの判断は社員を休職させるべきかで解説しています。

退職後も受け取れる条件(継続給付)

休職期間が満了して退職する場合でも、次の条件を満たせば、退職後も残りの期間の傷病手当金を受け取れます(健康保険法第104条)。

  • 退職日(資格を失った日の前日)まで、継続して1年以上健康保険の被保険者であったこと(任意継続の期間を除く)
  • 退職の際に傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしていること
  • 退職日に出勤していないこと(あいさつなどで出勤すると、継続給付の条件を満たさなくなります)

退職後に働けるようになって支給が止まると、その後に再び働けなくなっても支給されません。また、雇用保険の基本手当(失業給付)とは同時に受け取れません。退職を控えた社員には、これらを前もって伝えておきましょう。

産業医が関わる場面

「働けない」かどうかは、主治医が申請書に記入する意見をもとに保険者が判断します。産業医が傷病手当金の可否を決めるわけではありません。一方で、休職の判断、休職中の連絡、復職の判定と職場復帰支援プランの作成では、産業医が会社に助言します(職場復帰支援プランの作り方)。治療しながら働く場合は治療と仕事の両立支援も参考にしてください。

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うえまつ産業医事務所では、休職の判断、休職中の面談、復職の判定と職場復帰支援プランの作成まで、同じ産業医が継続して担当します。休職中の臨時の面談や主治医への情報提供依頼書の作成にも、追加費用はかかりません。

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事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

よくある質問

傷病手当金はいつから支給されますか?

業務外の病気やけがの療養のため仕事に就けず、連続して3日間休んだあとの4日目から支給されます。待期の3日間には、有給休暇や土日祝日などの公休日も含まれます(健康保険法第99条)。

傷病手当金はいくら支給されますか?

1日あたり、支給開始日の属する月以前の直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2です。平均の標準報酬月額が30万円なら、1日あたり約6,667円です。

傷病手当金はいつまで受け取れますか?

同じ病気やけがについて、支給を始めた日から通算して1年6か月です。2022年1月から、途中で支給されない期間があってもその分を通算できるようになりました。

休職中の社会保険料はどうなりますか?

休職中も健康保険料と厚生年金保険料は免除されません。給与が出ない期間の本人負担分の集め方を、休職の初めに決めて説明しておきます。

退職後も傷病手当金を受け取れますか?

退職日まで継続して1年以上被保険者であり、退職の際に傷病手当金を受けているか受ける条件を満たしていれば、退職後も残りの期間を受け取れます。退職日に出勤すると、この条件を満たさなくなります(健康保険法第104条)。

まとめ

傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けず給与が出ないとき、4日目から標準報酬日額の3分の2が通算1年6か月まで支給される制度です。休職の初めに、制度、申請書の流れ、社会保険料の集め方、退職後の条件を説明しておくと、社員は安心して療養に専念できます。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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