職場の「ニオイ問題」とどう向き合う?

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

さまざまな人が同じ空間で長い時間を過ごすオフィスでは、体臭や口臭、タバコ、香水などのニオイが、知らないうちに周囲を不快にさせてしまうことがあります。ニオイの感じ方には大きな個人差があり、人によっては吐き気・めまい・頭痛といった体調不良や、作業効率の低下、社内コミュニケーションの悪化につながることも。決して小さな問題ではなく、企業にとっても職場環境改善のために向き合うべきテーマです。

今回は、一人ひとりができるセルフケアと、会社としての対応の両面から整理します。

1. 主なニオイの原因

ニオイの原因はさまざまです。汗や加齢による体臭、口臭、タバコ・お酒、香水・柔軟剤・整髪料、洗濯物の生乾き、ペットなど、身近なところに潜んでいます。

そして問題なのは、自分のニオイには自分で気づきにくいこと。「良かれ」と思っての習慣が、周囲には負担になっていることもあります。だからこそ、日頃のセルフケアと、お互いへの思いやりが大切になります。

2. 自分でできるセルフケア

  • 口臭:歯磨きに加え、においの強い食べ物を控える、ガムやタブレットの活用、虫歯治療、歯科での定期的なクリーニング
  • 体臭:制汗剤や汗拭きシートの活用、こまめに汗を拭く、必要に応じて下着などを着替える
  • 加齢臭:原因物質「ノネナール」を意識し、皮脂の多い部位を丁寧に洗う。薬用せっけんも有効
  • タバコ:勤務中は控える、衣類の消臭・洗濯・クリーニングを心がける
  • 衣類の生乾き:天日干しや乾燥機、アイロンでしっかり乾かす

3. 「良い香り」も、過ぎれば逆効果 ―― 香害という新しい視点

見落とされがちなのが、自分にとって心地よい香りが、他人には強すぎることがある点です。近年は柔軟剤や芳香剤、香水などの強い香りによる体調不良が「香害(こうがい)」と呼ばれ、社会的な関心が高まっています。人によっては頭痛や吐き気、呼吸のつらさなどの「化学物質過敏症」を引き起こすこともあります。

こうした状況を受け、消費者庁・厚生労働省・環境省など5省庁は「香り付き製品を使うときは周囲へ配慮を」という啓発ポスターを作成しています。香りものは用法用量とTPOを守り、職場では無香料や控えめなものを選ぶと安心です。「たっぷり使えば清潔感が増す」わけではない、と知っておきましょう。

4. 背景に病気が隠れていることも

ニオイの原因が、ワキガや多汗症のケースも少なくありません。さらに、糖尿病や極端な糖質制限による甘酸っぱい「ケトン臭」、肝臓・腎臓の機能低下による「アンモニア臭」、胃腸の不調など、体調のサインとして独特の体臭が出ることもあります。

以前と違う体臭を感じたり、周囲から指摘を受けたりしたら、一度医療機関を受診するか、まずは産業保健スタッフに相談してみることをおすすめします。

5. 会社としてできる環境対策

ここからは企業側の対応です。まずは環境面の工夫から。芳香剤・消臭剤や空気清浄機の設置、こまめな換気が基本です。嗅覚が敏感な方がいる場合は座席の配置を調整する、汗をかきやすい業務では可能な範囲で空調や作業時間帯を工夫するなど、個別の環境調整も有効です。

6. デリケートな「伝え方」に注意

ニオイの問題は、ほとんどのケースで本人に悪意がありません。だからこそ、指摘の仕方を誤ると自尊心を深く傷つけ、思わぬトラブルやハラスメントと受け取られる恐れもあります。伝える際は、次の点を意識しましょう。

  • 大勢の前ではなく、1対1で冷静に、客観的な事実として伝える
  • 「身だしなみ・ビジネスマナーの一環」という位置づけで話す
  • 人格や業績の否定ではないこと、珍しい話ではないことを添える
  • 改善に向けて会社がサポートする姿勢を示し、具体策を一緒に考える

上司や人事が直接伝えにくい場合は、相談窓口を設けておくと、不快に感じた人が申し出やすく、担当者を介することで人間関係に波風を立てずに解決しやすくなります。

7. 「香りへの配慮」も職場のルールに

香害への対応として、柔軟剤や香水の使用量への配慮を社内で呼びかける企業も増えています。人事研修や社内報で「香りは控えめに」と発信したり、身だしなみチェックリストに盛り込んだりすることは、化学物質過敏症のある従業員への配慮にもつながります。ポイントは、特定の個人を責めるのではなく、全員へのお願いとして周知すること。角を立てずに、職場全体の意識を底上げできます。

おわりに

ニオイは極めて個人的なものであると同時に、本人に自覚がないケースが多く、指摘しづらいという特徴があります。

最も大切なのは、社員一人ひとりが「もしかしたら周りに不快な思いをさせていないか」とお互いを思いやる気持ちを持つことです。全ての人が気持ちよく働ける職場を、一緒につくっていきましょう。

この記事を書いた産業医に、御社の状況を相談しませんか

うえまつ産業医事務所は、京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国へWeb面談で対応する産業医事務所です。
嘱託産業医 月額30,000円〜/従業員50名未満の顧問契約 月額20,000円(法令上の業務を含む)/1回だけのスポット相談 20,000円。
営業日は当日返信、Web面談は最短翌営業日。「今の産業医が来てくれない」「50名を超えた」「復職判断に迷っている」といったご相談を多くいただいています。