障害者雇用の合理的配慮とは|事業主の義務、手帳がない人も対象、配慮の例と進め方、過重な負担、法定雇用率2.7%を産業医が解説

障害者雇用の合理的配慮とは|事業主の義務、手帳がない人も対象、配慮の例と進め方、過重な負担、法定雇用率2.7%を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
障害のある社員から申出や相談があれば、本人と話し合って必要な配慮を決めます。

「障害のある社員から、勤務時間を短くしてほしいと申出があった。どこまで応じればいい?」「障害者手帳を持っていない社員にも合理的配慮は必要?」。人事・総務の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、障害者雇用促進法にもとづく合理的配慮の義務、対象となる人、配慮の進め方、過重な負担の考え方、産業医の関わり方を解説します。

結論:障害のある社員から申出や相談があれば、話し合って必要な配慮をする義務がある

  • 事業主は、障害のある労働者が能力を発揮できるよう、障害の特性に配慮した必要な措置(合理的配慮)を講じなければなりません。募集・採用の段階では、本人の申出があった場合に配慮します(障害者雇用促進法第36条の2・第36条の3)。
  • 対象となる「障害者」は、身体・知的・精神(発達障害を含む)などの障害で長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける人で、障害者手帳を持っているかどうかに限られません(同法第2条)。
  • 配慮の内容は本人の意向を十分に尊重して決め、相談に応じる体制も整えます(同法第36条の4)。ただし、過重な負担となる場合は義務を負いません。
  • 障害を理由とする不当な差別的取扱いは禁止されています(同法第34条・第35条)。
合理的配慮の申出を受けた人事課長の4コマ漫画:話し合って配慮を決めるのが義務、手帳の有無だけで判断しないとメーくんが説明

合理的配慮の具体例

障害の種類配慮の例
肢体不自由机の高さの調整、通路の段差の解消、通勤ラッシュを避ける勤務時間の変更
視覚障害拡大文字や音声読み上げソフトの利用、職場内の移動の補助
聴覚障害筆談・チャットでの指示、会議での要約筆記や音声文字変換の利用
精神障害通院時間の確保、業務量や勤務時間の段階的な調整、静かな作業場所、相談相手の明確化
発達障害指示を文書で具体的に出す、作業手順の見える化、予定変更の事前の連絡
難病・内部障害通院や体調に合わせた休憩、在宅勤務、作業内容の調整
合理的配慮の例(合理的配慮指針などをもとに作成)

病気の治療と仕事の両立の考え方は治療と仕事の両立支援(2026年4月から努力義務)で解説しています。

合理的配慮の進め方

合理的配慮の進め方の図解:申出・相談を受ける、困りごとを具体的にする、配慮の内容を話し合う、実施して見直す
  1. 申出・相談を受ける:本人からの申出や、上司が困りごとに気づいたことをきっかけに、相談窓口で話を聴きます。
  2. 困りごとを具体的にする:どの業務で、どんな支障があるかを本人と確認します。主治医の意見や産業医の意見も参考にします。
  3. 配慮の内容を話し合う:本人の意向を尊重しながら、会社として実施できる配慮を検討します。複数の選択肢があれば、本人と相談して決めます。
  4. 実施して見直す:配慮の内容を本人と職場に伝え、定期的に面談して見直します。

障害に関する情報は、本人の同意を得たうえで必要な範囲の人だけで共有します(健康情報の取扱規程)。

過重な負担とは

合理的配慮は、事業主に過重な負担を及ぼす場合には義務を負いません。過重な負担かどうかは、次の要素を総合的に考えて、個別に判断します。

  • 事業活動への影響の程度
  • 実現の困難さ(設備や人材の確保など)
  • 費用・負担の程度
  • 企業の規模、財務状況
  • 公的な支援(助成金など)を受けられるかどうか

過重な負担にあたると判断した場合も、その理由を本人に説明し、代わりにできる配慮を一緒に考えることが求められます。

法定雇用率

民間企業の障害者の法定雇用率は、2026年7月から2.7%に引き上げられ、障害者を雇用しなければならない事業主の範囲も従業員37.5人以上になりました。採用や職場への定着を進めるうえでも、合理的配慮の体制づくりは欠かせません。

産業医が関わること

  • 本人と面談し、健康状態と業務上の支障を整理して、必要な配慮について意見を述べる(産業医の意見書)
  • 主治医の意見と職場の実情をつなぎ、実施できる配慮を一緒に考える
  • 休職からの復職の際に、配慮の内容を職場復帰支援プランに反映する(職場復帰支援プランの作り方)
  • 配慮の実施後も定期的に面談し、体調と業務の状況を確認する

発達障害など「見えない特性」への合理的配慮

障害者雇用促進法の「障害者」には、身体障害・知的障害のほか、発達障害を含む精神障害も含まれます。発達障害などは外見からはわかりにくく、本人も「どう伝えればよいかわからない」ことが少なくありません。障害者手帳がなくても合理的配慮の対象になり得るため、まずは本人の困りごとを聴くことから始めます。

困りごとの例配慮の例
口頭の指示を覚えにくい指示を文書やチャットでも伝える。手順書やチェックリストを作る
複数の作業を同時に進めるのが難しい優先順位をはっきり示す。1つずつ指示する
音や光に敏感で集中しにくい席の配置を変える。イヤーマフの使用を認める。照明を調整する
急な予定変更に混乱しやすい予定の変更は早めに、理由とあわせて伝える
雑談や暗黙のルールがわかりにくい職場のルールを明文化する。相談相手(担当者)を決めておく
発達特性などへの配慮の例

進め方のポイント

  • 本人からの申出を受けて、配慮の内容を本人と話し合って決める(会社から一方的に決めない)
  • 診断名ではなく「仕事のどこで困っているか」に着目する
  • 配慮の内容を伝える範囲は、本人の同意を得たうえで、業務上必要な人にとどめる
  • 一度決めたら終わりではなく、定期的に面談して見直す

文書での指示、手順の見える化、ルールの明文化などは、特性のある人だけでなく、職場の全員にとって働きやすい工夫でもあります。対応に迷うときは、産業医や地域の障害者職業センターに相談できます。

合理的配慮は、事業主にとって過重な負担にならない範囲で提供するものとされています。過重な負担にあたるかどうかは、事業活動への影響、実現の難しさ、費用、企業の規模や財務状況などを総合的に考えて判断します。過重な負担にあたる場合でも、その理由を本人に説明し、ほかに実施できる配慮がないかを一緒に検討します。

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うえまつ産業医事務所では、障害や病気のある社員との面談、合理的配慮についての意見書の作成、職場復帰支援プランへの反映、定期的なフォローの面談を、毎月定額の範囲で行います。

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よくある質問

障害者手帳がない社員にも合理的配慮は必要ですか?

必要になることがあります。障害者雇用促進法の「障害者」は、障害のため長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける人で、障害者手帳の有無に限られません(同法第2条)。

合理的配慮の申出はどう進めればいいですか?

本人と困りごとを具体的に確認し、本人の意向を尊重しながら、会社として実施できる配慮を話し合って決めます。主治医や産業医の意見も参考にし、実施後も定期的に見直します。

どこまで配慮しなければなりませんか?

事業主に過重な負担を及ぼす場合は義務を負いません。事業活動への影響、実現の困難さ、費用、企業の規模や財務状況、公的支援の有無などを総合的に考えて判断し、その理由を本人に説明します。

法定雇用率は何%ですか?

民間企業の法定雇用率は2026年7月から2.7%で、従業員37.5人以上の事業主に障害者の雇用義務があります。

診断書や障害者手帳の提出を求めないと配慮できませんか?

合理的配慮は手帳を持っている人に限られません。障害の状況を確認する必要がある場合でも、本人のプライバシーに配慮し、必要な範囲にとどめることが求められます。まずは本人の困りごとと希望を聴くことから始めます。

まとめ

合理的配慮は、障害のある社員が能力を発揮できるよう、本人と話し合って必要な配慮を決める事業主の義務です。障害者手帳の有無にかかわらず、申出や困りごとがあれば相談に応じ、過重な負担にならない範囲で配慮を実施し、定期的に見直しましょう。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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うえまつ産業医事務所 所長
上松 弘典
産業医・労働衛生コンサルタント
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博士(社会健康医学)
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