職長教育とは|対象業種(建設業・製造業など)、12時間のカリキュラム、2023年4月の食料品製造業などへの拡大、作業主任者との違いを産業医が解説

「班長に昇格した社員がいるが、何か教育が必要?」「職長教育は何時間やればいい?」「うちは食品工場だが対象になる?」。製造業・建設業の人事・安全衛生担当の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、労働安全衛生法第60条の職長等教育について、対象となる業種と人、教育の内容と時間、2023年4月の対象業種の拡大、ほかの安全衛生教育との違いを解説します。
結論:対象業種で新たに職長になる人には、12時間以上の教育が必要
- 建設業・製造業などの政令で定める業種では、新たに職長その他の作業中の労働者を直接指導・監督する立場になる人に、安全衛生教育を行わなければなりません(労働安全衛生法第60条、同法施行令第19条)。
- 教育は、作業方法の決定と労働者の配置、指導・監督の方法、危険性・有害性の調査(リスクアセスメント)、異常時・災害発生時の措置などで、時間の合計は12時間以上です(労働安全衛生規則第40条)。
- 2023年4月から、食料品製造業の全体と、新聞業・出版業・製本業・印刷物加工業が対象に加わりました。
- 作業主任者は対象外です。十分な知識・技能がある人については、その事項の教育を省略できます(同規則第40条第3項)。

対象となる業種
職長等教育が必要な業種は、労働安全衛生法施行令第19条で次のとおり定められています。
- 建設業
- 製造業(ただし、たばこ製造業、繊維工業(紡績業・染色整理業を除く)、衣服その他の繊維製品製造業、紙加工品製造業(セロファン製造業を除く)は除きます)
- 電気業
- ガス業
- 自動車整備業
- 機械修理業
以前は、食料品製造業のうち対象はうま味調味料製造業と動植物油脂製造業だけでしたが、2022年の政令改正により、2023年4月1日から食料品製造業の全体と、新聞業・出版業・製本業・印刷物加工業も対象になりました。食品工場や印刷会社では、新たに職長やリーダーになる人がいないか確認し、教育の計画に組み込みましょう。
対象となる人
対象は「新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者」です(労働安全衛生法第60条)。社内での呼び方が「班長」「リーダー」「主任」などであっても、作業中の労働者を直接指導・監督する立場であれば対象になります。一方、作業主任者は、技能講習などで必要な知識を身につけているため、この教育の対象から除かれています(作業主任者とは)。
教育の内容と時間

| 教育の事項 | 時間 |
|---|---|
| 作業手順の定め方、労働者の適正な配置の方法 | 2時間 |
| 指導及び教育の方法、作業中における監督及び指示の方法 | 2.5時間 |
| 危険性又は有害性等の調査の方法、調査の結果に基づき講ずる措置、設備・作業等の具体的な改善の方法 | 4時間 |
| 異常時における措置、災害発生時における措置 | 1.5時間 |
| 設備・作業場所の保守管理の方法、労働災害防止についての関心の保持と労働者の創意工夫を引き出す方法 | 2時間 |
| 合計 | 12時間 |
リスクアセスメントの事項が4時間と最も長く、職長には、現場の危険や有害な要因を見つけて改善する役割が期待されています。教育は事業場の中で行うほか、外部の講習を受講させる方法もあります。
ほかの安全衛生教育との違い
| 教育 | 対象 | 根拠 |
|---|---|---|
| 雇入れ時教育 | すべての業種で、雇い入れた労働者(作業内容を変更したときも) | 労働安全衛生法第59条第1項・第2項 |
| 特別教育 | 危険・有害な業務(フォークリフトの運転、酸素欠乏危険作業、石綿の除去など)に就かせる労働者 | 同法第59条第3項 |
| 職長等教育 | 対象業種で、新たに職長など直接指導・監督する立場になる人 | 同法第60条 |
それぞれの詳しい内容は、雇入れ時教育とは(2024年4月から全業種で8項目)、特別教育とは(対象業務と記録の保存)で解説しています。
産業医が関わること
- 衛生委員会で、職長教育を含む衛生教育の実施計画を審議する(衛生教育の実施計画の作成は衛生委員会の付議事項です。労働安全衛生規則第22条)
- 職場巡視で、職長から作業の手順や化学物質・騒音・暑さなどの有害要因を聞き取り、改善を助言する(産業医の職場巡視)
- 職長が部下の体調不良やメンタル不調に気づいたときの相談先として、産業医との面談につなげる
うえまつ産業医事務所にご相談ください
うえまつ産業医事務所では、製造業・建設業の職場巡視での有害要因の確認と改善の助言、衛生委員会での教育計画の審議、職長から相談を受けた社員との面談を、毎月定額の範囲で行います。
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よくある質問
職長教育は何時間必要ですか?
労働安全衛生規則第40条で定める5つの事項について、合計12時間以上です。リスクアセスメントに関する事項が4時間と最も長くなっています。
職長教育が必要な業種は?
建設業、製造業(たばこ製造業、繊維工業などの一部を除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業です(労働安全衛生法施行令第19条)。2023年4月からは食料品製造業の全体と、新聞業・出版業・製本業・印刷物加工業も対象です。
班長やリーダーも対象ですか?
名称にかかわらず、作業中の労働者を直接指導・監督する立場に新たにつく人は対象です。作業主任者は対象から除かれています(労働安全衛生法第60条)。
すでに十分な経験がある人も受ける必要がありますか?
教育の事項の全部または一部について十分な知識・技能があると認められる人は、その事項の教育を省略できます(労働安全衛生規則第40条第3項)。
まとめ
職長等教育は、建設業・製造業などで新たに職長やリーダーになる人に必要な教育で、合計12時間以上の内容が定められています。2023年4月からは食料品製造業の全体と印刷関係の業種も対象になりました。昇格の時期にあわせて教育の計画を立て、衛生委員会でも確認しましょう。
参考:公的機関の資料
この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
この記事を書いた人
上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。
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