騒音障害防止のためのガイドラインとは|2023年改訂のポイント、85dB・90dBの管理区分、聴覚保護具、騒音健康診断を産業医が解説

騒音障害防止のためのガイドラインとは|2023年改訂のポイント、85dB・90dBの管理区分、聴覚保護具、騒音健康診断を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
85dB以上で改善と標識、90dB以上で聴覚保護具の使用を徹底します。

「工場の騒音、どこまで対策すればいいのか」「騒音の健康診断はいつ行うの?」。製造業の安全衛生担当の方からいただく質問です。騒音による難聴は、少しずつ進み、元に戻りにくい職業病です。厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン」は2023年4月に改訂されました。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、対象の作業場、騒音の測定と管理区分、聴覚保護具、騒音健康診断、改訂のポイントを解説します。

結論:85dB以上なら改善、90dB以上は聴覚保護具を必ず使用。騒音健診は6か月以内ごと

  • 対象の作業場では、6か月以内ごとに1回騒音レベルを測定し、結果で作業場を3つの管理区分に分けます。
  • 85dB以上の場所は標識で明示し、騒音を下げる改善を行い、必要に応じて聴覚保護具を使わせます。90dB以上の場所では、聴覚保護具を必ず使わせます。
  • 騒音作業に常時従事する社員には、雇入れ時・配置替え時と6か月以内ごとに1回、騒音健康診断を行います。
  • 2023年の改訂で、騒音障害防止対策の管理者の選任、個人ばく露測定などの新しい測定方法、聴力検査の見直しが加わりました。

対象となる作業場

区分内容
別表第1労働安全衛生規則にもとづき、6か月以内ごとに1回、等価騒音レベルの測定が義務づけられている屋内作業場(鋲打ち機、はつり機、鋳物の型込機などを使う作業場など)
別表第2法令上の測定義務はないが、等価騒音レベルが85dB以上になる可能性が大きい作業場(携帯用の動力工具を使う作業、金属の切断・研削、木材加工機械を使う作業など)
騒音障害防止のためのガイドラインの対象作業場

騒音の測定と管理区分

作業環境測定(定点測定)では、作業場の平均的な騒音(A測定)と、音源の近くで最も大きいと思われる騒音(B測定)を測り、作業場を3つの管理区分に分けます。2023年の改訂で、社員が騒音計を身につけて測る個人ばく露測定や、機械の騒音から推計する方法も使えるようになりました。

騒音のレベル主な措置
第Ⅰ管理区分(85dB未満)作業環境の維持に努める
第Ⅱ管理区分(85dB以上90dB未満)場所を標識で明示する。騒音源の対策などで85dB未満になるよう改善に努める。必要に応じて聴覚保護具を使わせる
第Ⅲ管理区分(90dB以上)場所を標識で明示し、聴覚保護具の使用を掲示する。改善措置を行う。聴覚保護具を使わせ、その使用状況を管理者に確認させる
騒音の管理区分と措置(騒音障害防止のためのガイドライン)

また、厚生労働省のパンフレットでは、85dB以上で手持ちの動力工具を使う作業も、聴覚保護具を必ず使用する対象とされています。測定の結果は、3年間記録・保存します。

聴覚保護具の選び方と使い方

  • 聴覚保護具は、騒音源の対策で十分に下げられない場合に、あとから重ねる対策です。まず機械の低騒音化、遮音、作業場所の分離を検討します。
  • 耳栓・耳覆い(イヤーマフ)は、JIS T8161-1にもとづく遮音値を目安に、必要かつ十分な遮音性能のものを選びます。
  • 耳栓は耳に合うものを選び、正しく装着し、ゆるんだらつけ直すよう教育します。
  • 会話や警報が聞こえにくくなるため、非常時の合図は赤色回転灯など目で見てわかる方法も用意します。

騒音健康診断

時期主な検査
雇入れ時・配置替え時既往歴・業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の検査、オージオメータによる250〜8,000Hzの各周波数の気導純音聴力検査(2023年の改訂で6,000Hzを追加)、医師が必要と認める検査
定期(6か月以内ごとに1回)既往歴・業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の検査、1,000Hz(30dB)と4,000Hz(25dB・30dB)の選別聴力検査
二次検査定期の検査で異常があった人に、騒音作業が終わって半日以上たってから、気導純音聴力検査などを行う
騒音健康診断の時期と検査(騒音障害防止のためのガイドライン)
  • 結果は5年間保存し、所轄の労働基準監督署に報告します(指導勧奨による特殊健康診断結果報告書)。
  • 聴力の低下が見られた人には、医師の意見をもとに、聴覚保護具の使用の徹底、騒音作業の時間の短縮、配置転換などの措置を検討します(健診後の医師の意見聴取)。
  • 騒音健康診断はガイドラインにもとづく健診(指導勧奨による特殊健康診断)です。法令で義務づけられた特殊健康診断との違いは特殊健康診断とはで解説しています。

2023年の改訂のポイント

  • 騒音障害防止対策の管理者を選任する(衛生管理者、安全衛生推進者、職長などから選べる)
  • 騒音レベルの測定に、個人ばく露測定と推計の方法を追加
  • 聴覚保護具は、JIS T8161-1の遮音値を目安に選ぶことを明示
  • 定期の騒音健康診断の4,000Hzの検査音を40dBから25dBと30dBに変更し、より早く聴力の低下を見つけられるようにした
  • 雇入れ時・配置替え時と二次検査の聴力検査に6,000Hzを追加
  • 管理者には選任時に3時間程度の教育、騒音作業の社員にも労働衛生教育を行う

産業医が関わること

職場巡視で騒音の大きい場所や聴覚保護具の使用状況を確認し、測定結果と健診結果をあわせて、改善の優先順位を助言します(産業医の職場巡視)。騒音作業と深夜業の両方がある職場では、特定業務従事者の健康診断との日程の調整も行います(特定業務従事者の健康診断(深夜業などは6か月ごと))。

うえまつ産業医事務所にご相談ください

うえまつ産業医事務所では、製造業の事業場で、職場巡視での騒音の確認、騒音健康診断の結果にもとづく就業判定、聴覚保護具の使い方の衛生教育、衛生委員会での対策の審議を、毎月定額の範囲で行います。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
  • 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)

事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

よくある質問

騒音の健康診断はいつ行いますか?

騒音作業に常時従事する社員に、雇入れ時・配置替え時と、6か月以内ごとに1回行います(騒音障害防止のためのガイドライン)。

何dBから聴覚保護具が必要ですか?

等価騒音レベルが90dB以上(第Ⅲ管理区分)の場所では聴覚保護具を必ず使わせます。85dB以上90dB未満(第Ⅱ管理区分)の場所では、必要に応じて使わせます。

2023年の改訂で何が変わりましたか?

騒音障害防止対策の管理者の選任、個人ばく露測定などの新しい測定方法、聴覚保護具の選び方の明示、定期健診の4,000Hzの検査音の見直し(40dBから25dB・30dB)などが加わりました。

騒音健康診断の結果は報告が必要ですか?

所轄の労働基準監督署に、指導勧奨による特殊健康診断結果報告書で報告します。結果は5年間保存します。

まとめ

騒音の大きい作業場では、6か月以内ごとの測定で管理区分を決め、85dB以上で改善と標識、90dB以上で聴覚保護具の使用を徹底します。騒音健康診断を6か月以内ごとに行い、聴力の低下を早く見つけて措置につなげましょう。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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上松 弘典
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