【インフルエンザ】受診・治療・出勤再開の考え方

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

前回は、例年より早くスタートを切ったインフルエンザの「予防と事前の備え」についてお話ししました。 今回はその後編として、「もしインフルエンザが疑われるとき」そして「実際にかかってしまったとき」に、個人と職場でどう動けばよいのかを整理します。

1. 風邪・コロナとの見分け方と、検査の「タイミング」

インフルエンザは、急激な高熱(38℃以上)や関節痛・筋肉痛、強い倦怠感など、全身の症状が急に出やすいのが特徴です。 とはいえ、新型コロナウイルスや一般的な風邪と、症状だけで正確に見分けることは困難です。医療機関の発熱外来での迅速検査や、市販の「同時検査キット(新型コロナとインフルエンザを同時に調べられるもの)」が役立ちます。

ここで一つ注意していただきたいのが、検査のタイミングです。 迅速検査は15分程度で結果が分かりますが、発症(発熱など)から半日程度は体内のウイルス量が少なく、感染していても「陰性」と出てしまう(偽陰性)ことがよくあります。高熱が出てすぐに検査をして陰性だった場合でも、油断せず、翌日に再検査をするなどの慎重な対応が必要です。受診の際は、周囲へうつさないよう必ずマスクを着用しましょう。

2. 治療のポイントは「48時間」と「重症化のサイン」

インフルエンザウイルスの増殖を抑える「抗インフルエンザウイルス薬」は、発症から【48時間以内】に使用することで、発熱期間を通常1〜2日間短縮する効果が期待できます。そのため、早めの受診が肝心です。 薬には、1日2回・5日間服用するタイプのほか、1回で完了する内服薬や吸入薬、点滴薬などがあり、患者さんの状態や年齢に応じて医師が選択します。

一方で、健康な大人であれば、ご自身の免疫力で自然に回復することも多いため、薬を処方するかどうかは医師の判断によります。症状がある間は、脱水を防ぐためにこまめな水分補給を忘れないでください。

【要注意!重症化のサイン】 次のような症状があれば、肺炎などを併発している可能性があるため、速やかに再受診してください。

  • 呼吸困難、息切れがある、胸の痛みが続く
  • 嘔吐や下痢が止まらず、水分が摂れない
  • 症状が長引き、悪化してきた

特に、高齢者・妊婦・小さなお子さん、そしてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)・心疾患・糖尿病などの持病がある方は重症化しやすいため、かかりつけ医への早めの相談をおすすめします。

3. 「いつから出社してよいか」の目安

企業の人事担当者や管理職が最も迷うのが、復帰のタイミングです。 大人のインフルエンザには、法律上の明確な「出勤停止義務」はありません。しかし、発症から数日〜1週間はウイルスを排出し、周囲へうつす可能性があります。

そのため、職場のルールとしては「学校保健安全法」の基準を準用するのが一般的かつ最も安全です。

【復帰の目安(学校保健安全法の基準)】 「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」

この「かつ」が重要です。たとえ薬が効いて2日目で熱が下がったとしても、発症から5日間は出社できません。逆に、発症から5日経っていても、熱が下がってから丸2日(48時間)経っていなければ出社できません。 「熱が下がったから大丈夫」と自己判断で出社させないよう、この基準をあらかじめ社内規程などで明文化し、周知しておくことがクラスター(集団感染)を防ぐ最大の防波堤となります。

4. 「休みやすさ」も感染対策

体調不良のまま無理に出社する「プレゼンティーズム」は、本人の回復を遅らせるだけでなく、職場全体にウイルスをばらまき、結果的に会社の生産性を大きく下げることになります。

休んだ人が責められない雰囲気(心理的安全性)づくりや、回復期のテレワーク・時差出勤の柔軟な運用も、非常に有効な感染対策のひとつです。また、ご家庭内では患者さんをできるだけ個室で静養させ、ご家族もこまめな手洗いや換気を徹底して、重症化しやすい高齢のご家族へうつさないよう配慮しましょう。

おわりに

「熱があるけれど、休むと迷惑がかかるから出社しよう」。その責任感は素晴らしいですが、感染症においては、その行動が最も大きな迷惑(職場への蔓延)を引き起こしてしまいます。

「休むことも、大切な仕事(リスク管理)のうち」。 今年もこの言葉を職場の合言葉にして、みんなで健康に冬を乗り切っていきましょう!

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